【特別企画】Kindle Fire HD/HDXでVODサラウンド
【インタビュー】Amazonの動画配信サービスが採用したサラウンド技術「ドルビーデジタルプラス」に迫る
■ドルビーのエンジニアが音質チューニングしたKindle Fire HD/HDX
−− 続いてそのKindle Fire HD/HDXに搭載された音声技術についてお伺いしたいと思います。まずモバイル端末向けのポスプロ技術自体は、これまでに他のスマホ/タブレットなどにも搭載されていますね。
木村: はい。動画コンテンツの視聴シーンがモバイル環境にまで広がった状況を受け、スマホ/タブレットでも動画コンテンツをより良い音で楽しめるようにと、ポスプロ技術をモバイル向けにも展開してきました。国内では、富士通製スマホ/タブレット“ARROWS”シリーズなどにも搭載されている技術です。今回のKindle Fire HD/HDXにもこのポスプロ技術を搭載しており、各国でお客様の製品づくりをサポートしているドルビーのエンジニアが音質設定を行っています。
−− 具体的にはどういった音づくりを行ったのでしょうか。
木村: ポイントはいくつかあるのですが、まずスピーカーについては、端末の薄型/軽量性を確保するため、小型のものを背面に2基搭載しています。小型スピーカーでも満足のいく音量で鳴らしながら、同時に音の歪みを抑えることを目指した音づくりを行いました。
加えて大きなポイントとなるのが、バーチャライザー技術です。本機はスピーカーが背面に搭載されていますので、そのままでは音が後ろに向かってしまいます。そこで、あたかもフロント部分から音声が出ているかのように、音がユーザーの周りを取り囲むような豊かな音場作りを目指しました。
これにより、Amazonインスタント・ビデオのコンテンツを、豊かなサラウンドで楽しむことが可能となりました。なお、ドルビーデジタルプラスでエンコードされたコンテンツは、通常の2ch音声から作り出すバーチャルサラウンドよりも、よりリアリティがあり高品位な音場を作り出すことができます。さらに、映画コンテンツにとってやはり台詞は重要ですので、ダイアログの成分をより聴こえやすくするような調整も行っています。
−− ヘッドホン出力でもバーチャルサラウンドは適用されるんですか。
木村: はい。スピーカー出力でもヘッドホン出力でもバーチャルサラウンドは適用されます。なお、スピーカー出力用とヘッドホン出力用に、それぞれ異なるチューニングを行っています。ヘッドホンの場合は耳の中にスピーカーがダイレクトに入っている状態ですが、スピーカー出力の場合は耳と本体スピーカーの間に距離がある状態になります。そこで、動画を再生している際のユーザーと端末の間の想定される距離を設定し、音の広がり感を出せるようにしています。
−− Kindle Fire HD/HDXのドルビーデジタルプラスは、ユーザー側が音質設定を調整するといったことは可能なのでしょうか。
木村: いいえ。Kindle Fire HD/HDXはシンプルな機能性を確保することを優先しており、音質設定を固定しています。ユーザー様側で音質を調整できるイコライジング機能などは搭載していません。
−− ちなみに、国内ではiPhone/iPadもAmazonインスタント・ビデオに対応しています。iPhone/iPadで楽しむ場合はドルビーデジタルプラスの音声はどうなるのでしょうか。
木村: iPhone/iPadの場合、Amazonインスタント・ビデオのサービス自体には対応していますが、ドルビーデジタルプラスのデコーダーは搭載していませんので、通常のAACステレオ音声で配信される形になります。
−− 今のところ日本でAmazonインスタント・ビデオを楽しむ場合は、Kindle Fire HD/HDXの方がより良い音質で楽しめるわけですね。