<山本敦のAV進化論 第108回>
KDDIが始める国内キャリア初のハイレゾ配信 ー キーマンが語る新しい「うたパス」の魅力
(社)コンサートプロモーターズ協会が調べたライブ市場の調査データによれば、国内では2015年のライブ・コンサートの市場規模が、3年前の2012年と比べて約187%に成長。2000年には約1,600万人だったライブ・コンサートの入場者数が、2015年には約3倍となる4,800万人に増えたという。
これはつまり、イベントに足を運んで音楽を生で体験して感動を味わいたいというファンの数は年々増え続けているということ。これまでにも様々な音楽イベントをサポートしてきたKDDIが果たしてきた役割も大きいと言えそうだが、同社では今後さらに、音楽ライフ全体のサポートに尽力していくという方針を示している。
宮地氏も「うたパスでは、スマホで音楽を聴くだけでなく、ライブなど生の音楽体験に結びつけた音楽体験全体のクオリティアップをアピールしていきたいと考えています」と語っている。
「CDや音楽配信などの電子メディアだけでなく、リアルの音楽体験も重ねてもらえるよう、うたパスはアプリ全体の機能を強化します」と語る宮地氏は、「例えばアーティストの音楽ライブのチケットをアプリから先行予約ができたり、イベントへの招待チケットなどのキャンペーンも充実させます。音楽ライブの出演アーティスト情報や、演奏する楽曲を事前チェックできるような“予習”用のコンテンツも製作しています」と具体例を説明。
「またライブに出かけたあとから、その感動を何度も振り返りながら味わえるよう、演奏曲のセットリスト公開や、関連する楽曲の配信試聴、音源ダウンロードへのスムーズな誘導路も設けて、ライブの余韻が楽しめるアプリとして役に立ちたいと考えています」と続けた。
一方、谷氏は「その中で、ライブの音楽体験に近い、より“いい音”の音楽コンテンツが手元のスマホなどハイレゾ対応機器で繰り返し楽しめるというストーリーがしっくりと馴染むのではないでしょうか」とコメント。
「これまでKDDIでは全27機種のハイレゾ対応のスマホ・タブレットを販売してきました。それぞれを、新しいうたパスのサービスと連携させることで、より豊かな音楽ライフが体験できることの魅力を、今後の積極的なプロモーション活動などを通じてアピールしていきたいと思います」と述べた。
ハイレゾの“いい音”を楽しむことも、引いてはちまたに溢れるエンターテインメントコンテンツの中で「音楽を聴くこと」の魅力を再発見して、ファンにのめり込んでもらいたいがための戦略的な取り組みの一つであるということが、両氏の言葉から伝わってくる。このKDDIならではの戦略は、競合する通信事業他社との差別化を図るために、とても有効な武器となり得るように思う。
■auの強力なエコシステムを活かしながらハイレゾを盛り上げていく
生まれ変わる「うたパス」は、従来から続くLISMOとのエコシステムによる輪に止まることなく、auユーザーのためのより大きく魅力的な音楽プラットフォームの構築を視野に入れている。さらに多くのauユーザーに音楽サービスの魅力に触れてもらうため、無料で登録できる会員ユーザー向けのロイヤリティプログラム「au STAR」を積極的に活用していきたいと宮地氏は構想を語る。