ソフトウェア的な音質改善とハードウェアとの連携を模索
「Audirvanaをお求めやすい価格で提供し続けたい」。CEO ダミアン・プレッソン氏特別インタビュー
今年5月にドイツで開催されたミュンヘン・ハイエンド2022。現地に来訪していたAudirvanaのCEO&開発担当のダミアン・プレッソン氏と、マーケティングを担当するマニュエル・デ・ラ・フエンテ氏にショートインタビューが叶った。その模様をお届けしよう。
Damien Plisson(以下ダミアン) AudirvanaのCEOのダミアンです。Audirvanaの立ち上げ、それからソフトウェアの開発を担当しております。
Manuel de la Fuente(以下マニュエル) Audirvanaのマネージングディレクターのマニュエルです。グローバル・マーケティングなど、ビジネスのさまざまな側面をサポートしています。
ーー最新のAudirvanaの状況について教えて下さい。
マニュエル 今年3月に、日本市場限定で「Audirvana 本」という買い切り型のサービスをリリースしました。日本市場ではまだTIDALなどのストリーミングサービスはスタートしていませんから、ローカルライブラリの再生に特化したものです。以前日本に旅行したことがありますが、日本のオーディオファンはCDを所有していることをとても大切にしている方が多いと感じました。ですから、こういったローカル再生のみに特化したサービスというのは価値があるだろうと考えたのです。これは大きな成功だったと捉えています。
ダミアン リリース直後は、ほかの国の人から「羨ましい」という声がよく聞かれましたよ。
ーーほかの国でもこのサービスはスタートしているのですか?
マニュエル 日本以外の国では、「Audirvana Origin」という名称でやっています。ところで、あなたの考えを伺いたいのですが、「Audirvana 本」という名前は適切だったでしょうか?
ーーそうですね、確かに本というのは日本では通常「book」と解釈されることが多いですね。あくまで個人的な考えですが、Originのままでも良かったかもしれません。ダミアンさんはいまでもAudirvanaのプログラミングをやっているのですか?
ダミアン はい、Audirvanaのコードの全貌を把握しているのは私なので、ほとんど私がやっています。ですが、たとえばHD Analyerなど一部の技術については、ほかの会社から購入しているものもあります。
マニュエル HD Analyzerは、フランスの音響研究所Ircam Amplifyと協力して作り上げたものです。ここは、指揮者のピエール・ブーレーズが1960年代に設立した研究所なんです。ドイツのフラウンホーファー研究機構のようなものですね。最近では3Dオーディオなど、最先端の音響技術研究を行っています。先日もミーティングを開きまして、HD Analyerはさらにアップデートされる予定です。
ーーAudirvanaのアップサンプリングのクオリティは非常に高いですね。
マニュエル アップサンプリングには巨大なコンピューターの力を必要とします。DACチップで行うより、コンピューターソフトウェアの中で行うことで別のアルゴリズムを使用できるので、よりクオリティの高いサンプリングを行うことができます。Originにはその最新世代のアルゴリズムが搭載されています。
ダミアン 実はOrigin、Studio共に、次世代に向けての準備も行っています。まもなく公表できると思います。たとえばChromecast Deviceと連携することができるようになります。ですが、Chromecastはギャップレス再生ができないので、その解決策を探しています。
マニュエル 私達はあくまでオーディオのスタンダードであることにこだわっています。それが、私達がここミュンヘン・ハイエンドに来た大きな理由でもあります。私達の目的は、多くのハードウェア機器ブランドとミーティングをし、AudirvanaがUPnPでもUSB接続でも、ハードウェアとスムーズに連携できることを知ってもらいたいと考えています。残念ながら、UPnP再生がハードウェアとうまく連携できていない事例も多くあります。Audirvanaではそこが問題なく動くことを知ってほしいのです。
ーーちなみにAudirvanaとしてなにかハードウェア機器を開発する予定はあるのですか?
ダミアン いいえありません。あくまでソフトウェアにおいて、音質向上を探ること、そしてハードウェアブランドとの連携の方法を探っています。
マニュエル 私達の会社の強みはあくまでコンピュータースキルにあり、ユーザーがより利便性高く、また高音質にオーディオを楽しむことができるサポートをすることにあります。ダミアンが作ってきたことは、Mac/Windowsを問わず、既存のOSシステムの中にオーディオを組み込みうる最高のソリューションだと考えています。UPnPでも、USB-DACに接続するにおいてもそれは変わりません。それがダミアンが常に考えていることです。たとえばWindowsならば、カーネルストリーミングをどのように使用するかということにも関わっています。
ダミアン AudirvanaのWindows版では、カーネルストリーミングを独占的に使用します。またApple Siliconでも同様に、ソフトウェアをOSの中にベストな状態で組み込むことができるのです。
ーーなるほど、Audirvanaの考えていることがよくわかりました。今後の野望や夢などはありますか?
ダミアン 私の一番の夢は、録音芸術を本来の音質で聴くことの素晴らしさを多くの人が理解してくれるようになることです。多くの人が、スマートフォンなどの小さなデバイスで聴くことに満足してしまっています。ここはミュンヘン・ハイエンドショウなので、非常に高価な機材もたくさん展示されています。ですが、ソフトウェアを活用することで、そこまでの投資をしなくても、もっと音質を向上させることができると考えているのです。ですから、Audirvanaは皆様にとってお求めやすい価格で提供し続けたいと考えています。
ーーぜひ一度、日本にもいらしてください。
マニュエル 東京インターナショナルオーディオショウには非常に関心があって、ぜひ一度日本にも行ってみたいと考えていますが、まずはコロナの状況次第ですね。
ーーコロナの状況がもう少し落ち着いて、海外への訪問がもっと気楽に行えるようになることを祈るばかりです。本日はお時間をいただきましてありがとうございます。
Damien Plisson(以下ダミアン) AudirvanaのCEOのダミアンです。Audirvanaの立ち上げ、それからソフトウェアの開発を担当しております。
Manuel de la Fuente(以下マニュエル) Audirvanaのマネージングディレクターのマニュエルです。グローバル・マーケティングなど、ビジネスのさまざまな側面をサポートしています。
ーー最新のAudirvanaの状況について教えて下さい。
マニュエル 今年3月に、日本市場限定で「Audirvana 本」という買い切り型のサービスをリリースしました。日本市場ではまだTIDALなどのストリーミングサービスはスタートしていませんから、ローカルライブラリの再生に特化したものです。以前日本に旅行したことがありますが、日本のオーディオファンはCDを所有していることをとても大切にしている方が多いと感じました。ですから、こういったローカル再生のみに特化したサービスというのは価値があるだろうと考えたのです。これは大きな成功だったと捉えています。
ダミアン リリース直後は、ほかの国の人から「羨ましい」という声がよく聞かれましたよ。
ーーほかの国でもこのサービスはスタートしているのですか?
マニュエル 日本以外の国では、「Audirvana Origin」という名称でやっています。ところで、あなたの考えを伺いたいのですが、「Audirvana 本」という名前は適切だったでしょうか?
ーーそうですね、確かに本というのは日本では通常「book」と解釈されることが多いですね。あくまで個人的な考えですが、Originのままでも良かったかもしれません。ダミアンさんはいまでもAudirvanaのプログラミングをやっているのですか?
ダミアン はい、Audirvanaのコードの全貌を把握しているのは私なので、ほとんど私がやっています。ですが、たとえばHD Analyerなど一部の技術については、ほかの会社から購入しているものもあります。
マニュエル HD Analyzerは、フランスの音響研究所Ircam Amplifyと協力して作り上げたものです。ここは、指揮者のピエール・ブーレーズが1960年代に設立した研究所なんです。ドイツのフラウンホーファー研究機構のようなものですね。最近では3Dオーディオなど、最先端の音響技術研究を行っています。先日もミーティングを開きまして、HD Analyerはさらにアップデートされる予定です。
ーーAudirvanaのアップサンプリングのクオリティは非常に高いですね。
マニュエル アップサンプリングには巨大なコンピューターの力を必要とします。DACチップで行うより、コンピューターソフトウェアの中で行うことで別のアルゴリズムを使用できるので、よりクオリティの高いサンプリングを行うことができます。Originにはその最新世代のアルゴリズムが搭載されています。
ダミアン 実はOrigin、Studio共に、次世代に向けての準備も行っています。まもなく公表できると思います。たとえばChromecast Deviceと連携することができるようになります。ですが、Chromecastはギャップレス再生ができないので、その解決策を探しています。
マニュエル 私達はあくまでオーディオのスタンダードであることにこだわっています。それが、私達がここミュンヘン・ハイエンドに来た大きな理由でもあります。私達の目的は、多くのハードウェア機器ブランドとミーティングをし、AudirvanaがUPnPでもUSB接続でも、ハードウェアとスムーズに連携できることを知ってもらいたいと考えています。残念ながら、UPnP再生がハードウェアとうまく連携できていない事例も多くあります。Audirvanaではそこが問題なく動くことを知ってほしいのです。
ーーちなみにAudirvanaとしてなにかハードウェア機器を開発する予定はあるのですか?
ダミアン いいえありません。あくまでソフトウェアにおいて、音質向上を探ること、そしてハードウェアブランドとの連携の方法を探っています。
マニュエル 私達の会社の強みはあくまでコンピュータースキルにあり、ユーザーがより利便性高く、また高音質にオーディオを楽しむことができるサポートをすることにあります。ダミアンが作ってきたことは、Mac/Windowsを問わず、既存のOSシステムの中にオーディオを組み込みうる最高のソリューションだと考えています。UPnPでも、USB-DACに接続するにおいてもそれは変わりません。それがダミアンが常に考えていることです。たとえばWindowsならば、カーネルストリーミングをどのように使用するかということにも関わっています。
ダミアン AudirvanaのWindows版では、カーネルストリーミングを独占的に使用します。またApple Siliconでも同様に、ソフトウェアをOSの中にベストな状態で組み込むことができるのです。
ーーなるほど、Audirvanaの考えていることがよくわかりました。今後の野望や夢などはありますか?
ダミアン 私の一番の夢は、録音芸術を本来の音質で聴くことの素晴らしさを多くの人が理解してくれるようになることです。多くの人が、スマートフォンなどの小さなデバイスで聴くことに満足してしまっています。ここはミュンヘン・ハイエンドショウなので、非常に高価な機材もたくさん展示されています。ですが、ソフトウェアを活用することで、そこまでの投資をしなくても、もっと音質を向上させることができると考えているのです。ですから、Audirvanaは皆様にとってお求めやすい価格で提供し続けたいと考えています。
ーーぜひ一度、日本にもいらしてください。
マニュエル 東京インターナショナルオーディオショウには非常に関心があって、ぜひ一度日本にも行ってみたいと考えていますが、まずはコロナの状況次第ですね。
ーーコロナの状況がもう少し落ち着いて、海外への訪問がもっと気楽に行えるようになることを祈るばかりです。本日はお時間をいただきましてありがとうございます。