『ゴジラ』4Kブルーレイのこだわりが本気過ぎる。高画質化や特典映像の裏側を関係者に訊く

■東現小池氏のあくなき挑戦。まだまだ増える特典映像

───今回発掘された映像の中で「よくこれが見つかったな」と個人的に思われたものはありますか？

小池　『三大怪獣 地球最大の決戦』など特報を初めて収録することになりました！ その特報は作品単体の宣材映像ではなく、東宝の年末年始の正月興行で上映される作品を何本か集めて「新春特報」として劇場で流していたもので、その原版が残っておりました。

それらのフィルムが納められている缶を見ると「1965年新春特報」と書かれているだけで、何の作品の特報が収録されているのか全然わかりません。先程お話した東宝のアーカイブ事業で「ついでだからデジタイズしちゃおう！」ということでフィルムをスキャンして中身を確認してみたら、これまで見たことない『地球最大の決戦』の映像が入っているじゃないかと（笑）。

映画封切りまでの宣伝の流れとして、予告篇の公開よりも先に特報が劇場に掛かるので、その特報でのみ使用しているカットが幾つも存在しました。

『三大怪獣 地球最大の決戦』でいうと、宇宙超怪獣キングギドラが観客にお披露目されたのは、この「1965年新春特報」が最初の機会だったと思われます。

清水　1作目の『ゴジラ』についても、『怪獣王ゴジラ』として海外に世に出る前に、当時の東宝国際部が『ゴジラ』の輸出を目指して英語字幕をつけた予告篇も残っていたのでソフトに収録しています。捜索の段階では、一見作品には関係無さそうですが、フィルム缶に記載された年代から当たりをつけて作品には関係なさそうなフィルムもチェックしたりしました（笑）。

───特典映像のリストを見ると「スポニチクリエイツ映像」と見慣れない単語が並んでいますが、こちらはどういったものになるのでしょうか？

小池　映画の撮影現場へ16mmフィルムカメラを持ち込んで芸能人をはじめメイキング等を記録した芸能ニュース映像になります。

他社の話題になりますが、以前、KADOKAWAさんが都内で開催した特撮映画の上映イベントのプログラムで“シークレット上映”としてスポニチさんのニュース映像を劇場で流したところ大きな話題となり、その後に発売された『大魔神』と『妖怪三部作』の4K Blu-rayBOXの映像特典としても収録されていたのを1ファンとして目の当たりにしまして……「KADOKAWAさんがやられているのなら、東宝もやらないとなあ」と、使命感が芽生えました（笑）。

パッケージ化に際して、私がスポニチさんのリストを検索したら予想通りゴジラシリーズのニュースフィルムも多く保管されていることが分かり「これはちょっと、入れなきゃいかんだろ！」ということで、東宝本社の映像部門の方にプレゼンを行った結果、担当の方も乗ってくれまして収録される運びとなりました！

───もう一つ気になる特典タイトルですと『ゴジラVSビオランテ』収録の『立川志の輔/ゴジラ対怪獣軍団〜君もゴジラ博士になれる』。こちらはどういった物になるのでしょうか？

小池　作品の公開に合わせて宣伝を兼ねて制作されたVHS作品になります。これまでVHSが出たっきりでLDや、DVDにも入らず、以前SHIBUYA TSUTAYAのVHSコーナー（10月末をもってレンタルの取り扱い終了がアナウンスされている）に並んでいるのを見つけたときに「家にデッキ無いから見られないじゃん……」と落胆して自宅に帰ったことがあったのです。

その際に「次回『VSビオランテ』のBlu-rayを出し直す時に映像部門の担当者にプレゼンして特典映像として収録してやるぞッ！」 と密かに野望が湧きまして。それが無事に通った形になります。

『ゴジラ対怪獣軍団』は『VSビオランテ』の現場メイキングも大量に収録されている上に、このビデオの監督は後に「VSスペースゴジラ」を手掛けることになる山下賢章さんなので、映像資料としても大変貴重です。あの時SHIBUYA TSUTAYAに行ってVHSコーナーを見て回らなかったらリストに入れてなかったと思います（笑）。ビデオパッケージにしかなっていないものも、こういう機会にソフトに入れられるように動いていました。

───話を伺っている中で、「作業を続けている」「やり取りの最中」というワードが出てきていますが、ひょっとして、特典映像については今現在も収録内容を詰めている……ということでしょうか？

小池　はい、その通りです。Amazonや東宝のディスクストアに掲載されている内容よりもかなり増えると思います。こちらとしてはAmazonに製品情報が掲載された時に「おおお…全部載ってないぞ……？」となりました（笑）。

清水　現在公開されている特典映像はあくまで “暫定的” な仕様で、発売のリリースを解禁する時点で収録が確定されている物を紹介している形ですね。

そこからさらに、東宝の倉庫から過去のビデオマスターを集めたり、弊社で納品するマスターデータなど、先程触れたマスコミさんなどの外部の機関が持っている映像、そして当時の現場関係者の方が撮影されたメイキングの8mmフィルムなども提供頂くなど、現在でも様々な場所から映像素材を集めている最中です。

小池　サラッと「予告篇集」とは書かれていますけど、予告篇だけでも相当ありますからね（笑）。製品が店頭に並んでパッケージの裏を見たらみなさんビックリされると思います。もちろん、既に収録が決定している特典映像も非常に価値があるものです。例えば、東宝チャンピオンまつり版の予告篇は2021年に日映で4K放送した際に初公開時のオリジナルに復元したものの、そこから再びリバイバル版の状態に戻してブラッシュアップした上で収録しています。

清水　「チャンピオンまつり」以外にも秘蔵映像を見つけてはスキャンして東宝さんに納品しているので、NGが出なければ多くの方が「これまで見たことのない映像」が特典として収録されると思います！