<大橋伸太郎のTIAS2006>アヴァンギャルドの新ホーンSP「NANO」試聴レポート

公開日 2006/10/23 10:57
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ティアック エソテリックブースで再生されたアヴァンギャルドの「NANO」

左が「NANO」
ハイエンドオーディオスピーカーのこの数年のニューカマーにあって、最も話題を呼びまた商業的にも成功を果たしたのが、ドイツのアバンギャルドだろう。

チューバのようなアルミ製の巨大なホーンをダイキャストの骨格で積み上げた武闘派然としたアピアランスは、誰にも鮮烈な印象を焼き付け、音の直進性とスピード、エネルギー感は、過度な音場再生に淫していたハイエンドに食傷していたオーディオファイルのモヤモヤを吹き飛ばした。

そして、現実に売れている。ちなみに、沖縄地区の某ショップでは、アバンギャルドの「TRIO+BASSHORN」を始めとする上位機種、下位のUNOではなく最高18,000,000円/セットのスピーカーを10台以上販売し、ご店主はドイツ本社に招待されたという。沖縄にしてというべきか、沖縄だからというべきかわからないが、全国でかなりのユーザーが誕生しているに違いない。ただし、これもティアックエソテリックカンパニーの強力な営業推進力があってのことで、力のないディーラーだったら、「アバンギャルドって面白そうだね」という話題を撒いて終わっていたかもしれない。

さて、そのティアックエソテリックの2006東京インターナショナルオーディオショーのブース(G602)に登場したアバンギャルドの新製品がNANOである。

DUOより一回り小さいミッドレンジホーンを、パワーアンプ内蔵のサブウーファーとトゥイーターホーンをマウントしたトールタイプのエンクロージャーと組み合わせた、UNOに代わる比較的小型のシステムである。試聴エリアではエソテリクの別記コンポーネンツと組み合わされて立ち見の余地もないほど詰め掛けた来場者に音を披露した。

なお、ティアックエソテリックカンパニー試聴エリアにおけるシステムは、エソテリック「P-03」(トランスポート)+「D-03」(D/Aコンバーター)+「G-0s」(マスタークロック)+プリアンプ新製品「A-70」 (パワーアンプ)+「PS-1500」(アイソレーショントランス)という構成であった。


ブースで行われた試聴デモの模様
先にNANOのシステム構成を紹介すると、ミッドレンジホーン(最上部の大型ホーン)は、ドライバーが125mm(5インチ)+500mmのアルミ製ホーン。エンクロージャー上にマウントされたホーントゥイーターが、新開発のSilver/Goldコンデンサーを採用、歪を減らし解像度を高めている。サブウーファー部のエンクロージャーの形状をトールボーイにし、従来のUNO搭載型と同じ容積で奥行きを短縮、設置性を改善したという。ただし、アバンギャルドの面白さは家庭に入った時の異化効果の面白さだろう。これを忘れてゆめゆめ穏便なデザインに走らないようにしてほしい。

「その(聴き馴染んだ)音楽を初めて聴いたような清新な感動と驚き」という表現をオーディオではよく使うが、これはアバンギャルドのための形容といっていい。

アバンギャルドから噴出してくる音は、現代のコーン+ドーム中心のあるいは静電型の音と隔絶した、ラウドスピーカーの原器のようなエネルギー感と直進性がある。しかし、かつてのホーンシステムに比較して格段にハイスピード化されているから、パワーとDレンジのレスポンスと細やかさの表出も秀抜で、例えばサキソフォンのソロの再生では、音の強弱の変化があたかも電気的変換過程を一切経ていないがごとく、プレーヤーの胸郭から楽器へそしてアバンギャルドNANOのホーンを経てそのままリスナーに伝わっていくように聴こえる。

こういう特異なダイレクティビティのある鳴り方を好まないオーディオファイルもいるだろうし、ソースを選ぶであろうことも想像できる。しかし、八方美人でなく、ユーザーを選ぶ製品がもっとあってもいい。NANOでオペラや声楽のリサイタルライブを聴いたらどうだろう、と想像してしまった。そういう誘惑に駆り立てるあたりもまたハイエンドの条件である。

(大橋伸太郎)

TIAS2006report

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