192/32、96/24、44.1/16の3スペック
オーディオファンなら必携? 日本オーディオ協会の“本命”レファレンスソフト、OTOTENで発売
日本オーディオ協会が監修する2つのオリジナルソフトが、「OTOTEN 2018」の開催を記念して、6月16日から会場および同協会ウェブサイトで発売開始される(事前来場者登録はこちら)。
ひとつは既報の特別アナログ企画盤『井筒香奈江Laidback2018』(関連記事)だが、実はもうひとつこそ “本命中の本命ソフト” かもしれない。それは、「ハイレゾオーディオ」を規定し、業界をけん引してきた日本オーディオ協会の『オーディオ協会監修 音のリファレンスシリーズ』である。
本ソフトの制作に関わったレコーディング・エンジニアの高田英男氏、そしてアーティストのキャスティングに尽力された株式会社ノモス(NOMOS)の渋谷ゆう子氏、ヴァイオリニストの福崎雄也氏(ざきはア)にお話を聞いた。
■アーティストがスタジオで演奏している生音の音質感を忠実に録音
『音のリファレンスシリーズ』は、協会が制定した「ハイレゾオーディオ」ロゴを冠したハイレゾ対応機器の試聴に好適なハイレゾ音源として企画された。USBメモリー仕様で、定価は2,315円(税抜)。録音&サウンドプロデューサーに高田英男氏を迎え、全17曲が新規に録音制作された。
本作は、USBメモリーに同じ音源で192kHz/32bit、96kHz/24bit、44.1kHz/16bitの3ファイル(WAV形式)が入っている。通常はそれぞれリマスターして制作されるところ、今回は192kHz/32bitの音源をProtoolsから直接各スペックへと出力しているという。
そもそもタイトルの “リファレンス(Reference)” とは何か。オーディオで使うところの “Reference”(参照・参考)は、基準となる音・音源のことである。
サウンドプロデューサーの高田氏は、「本ソフトは、レファレンス音源(基準となる音質)の定義を、各アーティストがスタジオで演奏している生音の音質感を忠実に録音すること」としている。
高田氏によると「録音制作で常に感じることは、『音の世界』はそれぞれの感性の世界であり、何を持ってレファレンスとするのかは、大変難しい。録音エンジニアとして心掛けているのは、アーティストの思いを、いかに音として表現し、更に録音技術(エンジニア感性)により、少しでもそれぞれの音楽の世界を広げられたら素晴らしいと思っています」とのこと。
「演奏から伝わる『音楽感動』を、音の魅力として表現する事をテーマとしています。アーティストとの音に対するコミュニケーションを大切に、マイキング・マイクプリアンプの音色だけで基本な音を創るシンプルな録音アプローチをとりました」(高田氏)。
録音は、東京・青山にあるビクタースタジオの「301」「401」で行われ、192kHz/32bitダイレクト2チャンネル録音された。DAWはPro Tools HD。メインは「301」スタジオで、なんと一発録りである。
本ソフトはアーティストが伝えたい音や表現を余すところなく再現するため、収録機材を厳選すると同時に、アーティストと共に音質、音楽表現の双方に満足いくマイクセッティングを慎重に行い、制作過程での信号処理を極力排することで、緻密で臨場感ある高品位な音源となるよう制作されている。
■「一発録り」で「編集しない」、ライブ感あるレコーディング
本ソフトのレコーディングのこだわりは、音楽性を損なわないように “一発録り” 、そしてアーティストには、 “編集をしない” 前提での演奏を要請している。 “編集しない” を良しとするアーティストを探すのは大変。そこで重要な役割を果たしたのが、キャスティングプロデューサーの渋谷 ゆう子氏(株式会社ノモス 代表取締役)である。
「とても贅沢な企画です。アーティストには企画の意図を理解していただいて、しかも良い演奏をしてくれる人にお願いしました。 “音楽” として完成度の高い演奏をしてくれるアーティストです。再生機にも理解のある方に参加していただくことで、レファレンスとしてだけでなく、音楽モノとしても十分楽しめます」(渋谷氏)。
そして渋谷氏は、企画のテーマについて「本企画のオファーをいただいた際に思い描いたのは、お聴きくださる方が高音質に意識を向けながらも、ふと気がつけばその音楽そのものに聴き入ってしまう姿でした。音質と音楽の両立。そのためにまず『対比』というテーマを設定しました。 ピアノはソロだけでなく、一台を二人で弾くデュオの演奏も入れ、ダイナミックレンジの違いなどにも耳を傾けていただけるよう考えました。また同じ弦楽器でもヴァイオリンと琵琶の弦の素材違いや、石の楽器であるサヌカイトと木のマリンバ、複数の打楽器を一曲で使用するなど、随所に “対比” できるものを配置しています」とコメント。
さらに「もうひとつのテーマは『調和』です。デュオのハーモニー、ヴァイオリンとピアノの音の重なり、尺八と琵琶の演者の呼吸など、音楽の中で生まれる調和された空気感をも、高音質な録音でお楽しみいただけます。レファレンスとして比べられる『対比と調和』をもったラインナップにするために、打楽器、鍵盤楽器、弦楽器などあらゆる音が聴けるものにしています。そしてもっとプラスするために “サヌカイト”(讃岐岩。叩くと “カンカン” というきれいな音色を出すため、カンカン石の俗称がある)が入ってきました」と教えてくれた。
では、収録曲はどのようにして決定されたのだろうか。
「選曲は基本的には演奏者に出してもらいました。各演奏者は選曲の段階から参加し、企画に沿った楽曲を提案くださいました。マルチパーカッションなどは知らない楽曲を提案してもらったことが助かりました」(渋谷氏)。
「色々な楽器があるので、楽曲の意図と、音の面白さ、表現したいことをアーティストに聞きながら、録音のコツをつかんでいます。 “琵琶” を録音するのは初めてでした。琵琶をたたく音は面白いけど、レコーディングは大変でした。いわゆる正攻法の録音ではなく、マイクやヘッドアンプをどんどん変えていきました。大きな方向性を決めて、セッティングを変えていくシンプルな方法ですが、一曲一曲試合しているようなものでした」(高田氏)。
ヴァイオリンで参加した福崎氏は、「ライブコンサートでは音は残りません。今回のレコーディングはライブ感です。極限を目指すため、演奏のライブ感と共に集中力が必要で大変でした。集中力がきれると音が悪くなるのがヴァイオリン。編集でミスをしないものを組み合わせるのでなく、ライブ感をじっくりときける空気感を得られる音源です。すべての音が聴こえてしまう情報量があって、音場を感じてもらえるようになっています」と語った。
本作をどのように聴いてほしいか、3人にうかがった。
福崎氏は「圧縮音源は平面的ですが、ハイレゾでは音が立体的になっています。演奏家の音色が感じられる技術がハイレゾだと思います。バイオリオンの胴が鳴っている音。弦をこする音を、聴き心地だけでなく、本物の音で聴いてほしい。もしかすると、普通のCDとは違うんじゃないかな。人によっては汚いと思うかもしれないけど、それがリアルです。そういう方にぜひ聴いてほしい」とコメント。
渋谷氏は「演奏者の伝えたい音楽の世界がそのまま捉えられた稀有な作品となりました。 この音楽データがお聴きくださる方のそばで空気を震わせる時、今まで体験したことのないような、新しい音の『基準』になれば幸いです。そして同時に、この音楽に浸る時間そのものが、 皆様にとって幸せなものになることを願っています」と語る。
サウンドプロデューサーの高田氏は、『音のリファレンスシリーズ』を、「メーカーやエンジニアの方には、ハードの音創りに使ってほしい。そしてリスナーの皆さんには音楽の魅力を聴いてほしい。オーディオファンには、ハイレゾサウンドの録音の探求に使っていただきたい」と述べた。
最後に朗報である。OTOTEN2018 の会場では、「オーディオ協会監修 音のリファレンスシリーズ」が学生の皆さまへの来場記念として毎日100名にUSBがプレゼントされる(学生証などの身分証を提示)。また、一般来場者にはOTOTEN2018初日から、2,315円(税抜)で販売される。会場では数に限りがあるので、ご注意いただきたい。
【『オーディオ協会監修 音のリファレンスシリーズ』】
型番:USB-1
ディスクの種類:USB
価格:2,315円(製造原価・税抜)/送料900円
参加アーティスト:「ピアノデュオ/ドゥオール 藤井隆史・白水芳枝」、「ヴァイオリン/福崎雄也」、「ピアノ/にとまいこ」、「パーカッション&マリンバ/平子ひさえ」、「サヌカイト/小松玲子」、「琵琶/熊田かほり」、「尺八/松本宏平」
プロデューサー:竹村 昌樹(エニーミュージック株式会社 代表取締役社長)
録音&サウンドプロデユーサー:高田 英男(株式会社ミキサーズラボ)
アシスタントエンジニア:川人 俊之/斎田 崇(ビクタースタジオ)
キャスティングプロデューサー・企画構成 渋谷 ゆう子(株式会社ノモス 代表取締役)
OTOTEN 2018 開催概要
会場:東京国際フォーラム
日時:2018年6月16日(土) 10:00〜19:00
2018年6月17日(日) 10:00〜16:00
入場料:無料(入場登録が必要)
OTOTEN 2018の事前来場者登録はこちら。
ひとつは既報の特別アナログ企画盤『井筒香奈江Laidback2018』(関連記事)だが、実はもうひとつこそ “本命中の本命ソフト” かもしれない。それは、「ハイレゾオーディオ」を規定し、業界をけん引してきた日本オーディオ協会の『オーディオ協会監修 音のリファレンスシリーズ』である。
本ソフトの制作に関わったレコーディング・エンジニアの高田英男氏、そしてアーティストのキャスティングに尽力された株式会社ノモス(NOMOS)の渋谷ゆう子氏、ヴァイオリニストの福崎雄也氏(ざきはア)にお話を聞いた。
■アーティストがスタジオで演奏している生音の音質感を忠実に録音
『音のリファレンスシリーズ』は、協会が制定した「ハイレゾオーディオ」ロゴを冠したハイレゾ対応機器の試聴に好適なハイレゾ音源として企画された。USBメモリー仕様で、定価は2,315円(税抜)。録音&サウンドプロデューサーに高田英男氏を迎え、全17曲が新規に録音制作された。
本作は、USBメモリーに同じ音源で192kHz/32bit、96kHz/24bit、44.1kHz/16bitの3ファイル(WAV形式)が入っている。通常はそれぞれリマスターして制作されるところ、今回は192kHz/32bitの音源をProtoolsから直接各スペックへと出力しているという。
そもそもタイトルの “リファレンス(Reference)” とは何か。オーディオで使うところの “Reference”(参照・参考)は、基準となる音・音源のことである。
サウンドプロデューサーの高田氏は、「本ソフトは、レファレンス音源(基準となる音質)の定義を、各アーティストがスタジオで演奏している生音の音質感を忠実に録音すること」としている。
高田氏によると「録音制作で常に感じることは、『音の世界』はそれぞれの感性の世界であり、何を持ってレファレンスとするのかは、大変難しい。録音エンジニアとして心掛けているのは、アーティストの思いを、いかに音として表現し、更に録音技術(エンジニア感性)により、少しでもそれぞれの音楽の世界を広げられたら素晴らしいと思っています」とのこと。
「演奏から伝わる『音楽感動』を、音の魅力として表現する事をテーマとしています。アーティストとの音に対するコミュニケーションを大切に、マイキング・マイクプリアンプの音色だけで基本な音を創るシンプルな録音アプローチをとりました」(高田氏)。
録音は、東京・青山にあるビクタースタジオの「301」「401」で行われ、192kHz/32bitダイレクト2チャンネル録音された。DAWはPro Tools HD。メインは「301」スタジオで、なんと一発録りである。
本ソフトはアーティストが伝えたい音や表現を余すところなく再現するため、収録機材を厳選すると同時に、アーティストと共に音質、音楽表現の双方に満足いくマイクセッティングを慎重に行い、制作過程での信号処理を極力排することで、緻密で臨場感ある高品位な音源となるよう制作されている。
■「一発録り」で「編集しない」、ライブ感あるレコーディング
本ソフトのレコーディングのこだわりは、音楽性を損なわないように “一発録り” 、そしてアーティストには、 “編集をしない” 前提での演奏を要請している。 “編集しない” を良しとするアーティストを探すのは大変。そこで重要な役割を果たしたのが、キャスティングプロデューサーの渋谷 ゆう子氏(株式会社ノモス 代表取締役)である。
「とても贅沢な企画です。アーティストには企画の意図を理解していただいて、しかも良い演奏をしてくれる人にお願いしました。 “音楽” として完成度の高い演奏をしてくれるアーティストです。再生機にも理解のある方に参加していただくことで、レファレンスとしてだけでなく、音楽モノとしても十分楽しめます」(渋谷氏)。
そして渋谷氏は、企画のテーマについて「本企画のオファーをいただいた際に思い描いたのは、お聴きくださる方が高音質に意識を向けながらも、ふと気がつけばその音楽そのものに聴き入ってしまう姿でした。音質と音楽の両立。そのためにまず『対比』というテーマを設定しました。 ピアノはソロだけでなく、一台を二人で弾くデュオの演奏も入れ、ダイナミックレンジの違いなどにも耳を傾けていただけるよう考えました。また同じ弦楽器でもヴァイオリンと琵琶の弦の素材違いや、石の楽器であるサヌカイトと木のマリンバ、複数の打楽器を一曲で使用するなど、随所に “対比” できるものを配置しています」とコメント。
さらに「もうひとつのテーマは『調和』です。デュオのハーモニー、ヴァイオリンとピアノの音の重なり、尺八と琵琶の演者の呼吸など、音楽の中で生まれる調和された空気感をも、高音質な録音でお楽しみいただけます。レファレンスとして比べられる『対比と調和』をもったラインナップにするために、打楽器、鍵盤楽器、弦楽器などあらゆる音が聴けるものにしています。そしてもっとプラスするために “サヌカイト”(讃岐岩。叩くと “カンカン” というきれいな音色を出すため、カンカン石の俗称がある)が入ってきました」と教えてくれた。
では、収録曲はどのようにして決定されたのだろうか。
「選曲は基本的には演奏者に出してもらいました。各演奏者は選曲の段階から参加し、企画に沿った楽曲を提案くださいました。マルチパーカッションなどは知らない楽曲を提案してもらったことが助かりました」(渋谷氏)。
「色々な楽器があるので、楽曲の意図と、音の面白さ、表現したいことをアーティストに聞きながら、録音のコツをつかんでいます。 “琵琶” を録音するのは初めてでした。琵琶をたたく音は面白いけど、レコーディングは大変でした。いわゆる正攻法の録音ではなく、マイクやヘッドアンプをどんどん変えていきました。大きな方向性を決めて、セッティングを変えていくシンプルな方法ですが、一曲一曲試合しているようなものでした」(高田氏)。
ヴァイオリンで参加した福崎氏は、「ライブコンサートでは音は残りません。今回のレコーディングはライブ感です。極限を目指すため、演奏のライブ感と共に集中力が必要で大変でした。集中力がきれると音が悪くなるのがヴァイオリン。編集でミスをしないものを組み合わせるのでなく、ライブ感をじっくりときける空気感を得られる音源です。すべての音が聴こえてしまう情報量があって、音場を感じてもらえるようになっています」と語った。
本作をどのように聴いてほしいか、3人にうかがった。
福崎氏は「圧縮音源は平面的ですが、ハイレゾでは音が立体的になっています。演奏家の音色が感じられる技術がハイレゾだと思います。バイオリオンの胴が鳴っている音。弦をこする音を、聴き心地だけでなく、本物の音で聴いてほしい。もしかすると、普通のCDとは違うんじゃないかな。人によっては汚いと思うかもしれないけど、それがリアルです。そういう方にぜひ聴いてほしい」とコメント。
渋谷氏は「演奏者の伝えたい音楽の世界がそのまま捉えられた稀有な作品となりました。 この音楽データがお聴きくださる方のそばで空気を震わせる時、今まで体験したことのないような、新しい音の『基準』になれば幸いです。そして同時に、この音楽に浸る時間そのものが、 皆様にとって幸せなものになることを願っています」と語る。
サウンドプロデューサーの高田氏は、『音のリファレンスシリーズ』を、「メーカーやエンジニアの方には、ハードの音創りに使ってほしい。そしてリスナーの皆さんには音楽の魅力を聴いてほしい。オーディオファンには、ハイレゾサウンドの録音の探求に使っていただきたい」と述べた。
最後に朗報である。OTOTEN2018 の会場では、「オーディオ協会監修 音のリファレンスシリーズ」が学生の皆さまへの来場記念として毎日100名にUSBがプレゼントされる(学生証などの身分証を提示)。また、一般来場者にはOTOTEN2018初日から、2,315円(税抜)で販売される。会場では数に限りがあるので、ご注意いただきたい。
【『オーディオ協会監修 音のリファレンスシリーズ』】
型番:USB-1
ディスクの種類:USB
価格:2,315円(製造原価・税抜)/送料900円
参加アーティスト:「ピアノデュオ/ドゥオール 藤井隆史・白水芳枝」、「ヴァイオリン/福崎雄也」、「ピアノ/にとまいこ」、「パーカッション&マリンバ/平子ひさえ」、「サヌカイト/小松玲子」、「琵琶/熊田かほり」、「尺八/松本宏平」
プロデューサー:竹村 昌樹(エニーミュージック株式会社 代表取締役社長)
録音&サウンドプロデユーサー:高田 英男(株式会社ミキサーズラボ)
アシスタントエンジニア:川人 俊之/斎田 崇(ビクタースタジオ)
キャスティングプロデューサー・企画構成 渋谷 ゆう子(株式会社ノモス 代表取締役)
OTOTEN 2018 開催概要
会場:東京国際フォーラム
日時:2018年6月16日(土) 10:00〜19:00
2018年6月17日(日) 10:00〜16:00
入場料:無料(入場登録が必要)
OTOTEN 2018の事前来場者登録はこちら。
トピック