Senka21 1月号<編集長インタビュー> Part.1
株式会社デノン 北山 一男氏(左)/Senka21編集長 新保欣二(右) |
ピュアオーディオで培われた確固たる技術力とお客様の信頼厚いブランドイメージを核にして、デノンらしさ溢れる商品の投入に全力を注ぐ同社。「市場の牽引役を」との声に応える、その意気込みを聞いた。
「2003年はお客様を育てる年」〜シアターを一過性のブームに終わらせてはならない〜
◆株式会社デノン 理事 国内営業本部本部長 北山 一男氏
◇インタビュー・Senka21編集長 新保欣二
―― 年末商戦はいかがでしたか。
北山 9月、10月、さらに11月の中盤まではやや低迷していましたが、11月23、24日の土日から急浮上してきましたね。かなり盛り上がったといえると思います。今回の年末商戦は特に、不況を反映してか、お客様は実際にボーナスを手にしてから動きはじめました。ボーナス支給が会社によっては遅れてきており、そのため、商戦期そのものが、12月末、あるいは1月までずれ込む形になっているようですね。
―― その年末商戦においても、デノンさんは元気いっぱいに見受けられます。
北山 目標としていた前年比120%はどうにか達成できたと思います。「選択」と「集中」を進め、まず、一番の柱としたのがホームシアターです。その次にセットオーディオ。そして、我が社の基本となるピュアオーディオ。この三本柱がそれぞれ狙った通りのレスポンスを得ることができました。やはりその中でも、売上げ的にもっとも貢献したのがホームシアターで、特に当社の場合、シアターセットが前年比大幅増となり、牽引役を果たしました。
―― ホームシアターのカテゴリーに限ると、前年比7倍と伺っています。
北山 AVアンプ、DVDプレーヤー、スピーカーシステムといったところはトータルで約2倍、シアターセットが10倍くらいの伸びになりましたね。
―― プラズマが勢いよく伸びています。台数ベースでの構成比はまだ小さいですが、金額ベースでは、すでにテレビ全体の20%になります。ユーザーは当然音もいいだろうと購入していますが、実際に買ってみるとかなり不満がある。そこに御社は上手くホームシアターシステムを提案され、実売に結び付けている。これから先のマーケットメイクという点でいい仕事をされてきたということですよね。
北山 ディスプレイとホームシアターシステムを一緒に購入されているお客様はまだごく僅かです。実際にはディスプレイを買われて、自宅に持っていったら、店頭で聴いた音とは大分違う。そこで、後からシアターシステムを購入するというのが、今の流れのようです。我々はホームシアターを普及させようと、その風土を整えています。それには、簡易なものでもいいから、まず経験してもらうことが大切です。
ハイエンドをかなりやってきましたので、ホームシアターにおいても、自然にそういう方向に捉えてしまっていたという反省点がありました。そこで昨春、一般のお客様をターゲットにシアターセットを投入しました。これで、ひとつの意義は達成されたと思いますが、もっと、画と音を同時にお買い求めいただくとか、音場まわりの不満を解消する提案など、オーディオメーカーのやるべきことは、まだまだたくさんあるという認識でいます。
ホームシアターを、引き続き大きな柱としていくためにも、各社それぞれが特徴をいかしてお客様に提案していく部分を、もっと太らせないといけないと思います。今まではそれこそ勢いで販売を伸ばしていくことができましたが、私は2003年以降に一旦踊り場が来ると考えています。その先の階段を上がる方法を真剣に考えていかないと、ホームシアターも一過性のブームで終わりかねないと思いますね。
―― 過去2回失敗していますからね。
北山 今回の年末商戦で感じたのは、シアターセットは売れてきている。しかし逆に秋口からAVアンプが若干苦戦しました。需要がシアターセットにシフトしていると言われればそれまでなのですが、中には、本来は単コンの組み合わせを望んでいたお客様に、安易にシアターセットを売られているケースも見られます。グレードアップの提案をきちんと意識しておかないと、シアターセットだけを販売していたのでは、今のミニコンのような状況にもなりかねないと思います。その意味からも、2003年は、もう一段ステップアップへ向けての始まりの年になるという印象を私自身は持っています。(senka21編集部)
続く