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Senka21 1月号<編集長インタビュー> Part.2

公開日 2003/01/02 12:33
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株式会社デノン 北山 一男氏(左)/Senka21編集長 新保欣二(右)
●「2003年はお客様を育てる年」〜シアターを一過性のブームに終わらせてはならない〜
◆株式会社デノン 理事 国内営業本部本部長 北山 一男氏
◇インタビュー・Senka21編集長 新保欣二

―― デノンさんとしては、具体的にどのような商品戦略をお考えですか。

北山 2003年をホームシアター普及の第2段階と捉え、デノンらしい商品提案に相当力を入れていかなければならないと思います。各社こぞって商品を揃えてくる中で、当社のオリジナリティを発揮できなければ、存在感を得られず、埋没してしまいます。ですから、際立つ特徴を打ち出していく。それが、2003年に当社に課せられた大きな使命だと捉えています。

―― DVDでもレコーダーがかなり構成比を上げてきていますが、テレビの延長線上で考えているお客様には、音の部分での不満も少ないかもしれません。ところが、DVDには映像のついた音楽のソースもある。そこで、音楽を聴けるグレードのシアターシステム、2チャンネルでも使えるシステムを求めるお客様が必ずいらっしゃる。そこが、ひとつのプレミアムゾーンの商品になっていくと思います。

北山 2002年は、「ホームシアターファンを増やしましょう」を主眼に、ディスプレイの大型化・薄型化の流れに乗って提案してきました。しかし、2003年以降というのは、増やしたお客様を確実に育てていく段階になります。この春のデノンの提案するシアターセット第2弾も、従来の流れからもう一段変わったものを提案していくつもりで、現在進めています。私どもが際立つ商品をこの春先に出して、お客様をもう一段高いレベルに引き上げる、それくらいの意気込みでやりたいと思います。
 私どものホームシアターの特徴は、やはりピュアオーディオから来る音質の良さ。次に商品の品位です。デザイン面でも、米国のIDEOという世界的なデザイン会社とアライアンスを組んで、さらに高い次元を目指しています。これをテイストとして受けとっていただければ、デノンの商品はこれからもどんどん売れていくと思います。

―― ユーザーはこうした点をきちんと見ています。見逃さないですね。

北山 先程申し上げたように、ディスプレイから音まわりまで全部一緒に買われるお客様はまだまだ少ない。そけだけに、ディスプレイを買われて半年、一年が経過したお客様から、音に対する不満が出始めるころです。その方たちが求めているのは、チープなシアターセットではありません。それこそ我々デノンの出番が来たと確信しています。非常にいいチャンスであり、その声を捉えていくことこそが、現在の一番の課題であると捉えています。

―― 販売店さんと一緒に、お客様のライフスタイルのデザインをある時間の中で組み立て、そこにお客様を誘導していく仕組みづくりが必要になってきます。お客様の感じる不満にも、わかりやすく、次の受け皿を用意しておいて、そこに自然に誘導していく。そういう形が一番いいですよね。

北山 実はこの春に、デノンではスタイリッシュなスピーカーを発売する予定です。各社がスリムなトールボーイタイプのスピーカーを出されていますが、当社は木製でウェーブをつけた、日本のスピーカーらしくない商品を企画しています。ディスプレイにぴったりと合う。これを一つの起爆剤として、新機軸の提案をしていこうと考えています。

―― 安価である必要はないですね。

北山 そうなんです。マーケットにおけるデノンの最適なポジショニングについてこの1年勉強してきました。そこではっきりとしたことは、中級クラス以上の、高品位な、信頼性のあるものを求めているということです。ですから、我々の商品づくりはそこに力を入れていくべきだと考えています。もちろん、裾野を広げていく努力もします。しかし、2003年はむしろ、育てていく方に力を入れていかなければならないと思います。

―― それは御社の業界の中での大きな役割であり、御社自身にとっても、将来のブランドポジション、ブランドイメージ、ビジネスの付加価値をつくりあげていく基盤になっていくと思います。

北山 ここ数年はデフレだから安い商品しか売れないと思われています。しかし、流通しているお金は少ないかもしれませんが、特に個人の懐には相当な資金が蓄えられているのではないかと思います。ホームシアターをやられる方は、時間もあり、それなりの所得や貯えのある方が多い。デフレは確かに、世の中の景気が悪いことが一番の原因であると思いますが、もう一つの大きな原因は、買いたくなるような良い品物がないことだと思いますね。

―― その通りですね。

北山 ホームシアターというのは、お客様の心の琴線に触れ、欲しいと思ったらお金をいくら出しても構わないという性格の商品だと思います。ですからまず、お金を出していただけるような価値のあるものを当社としては出していきたい。この春に打ち出す新機軸の提案も、ぱっと見て「これ欲しいなあ」というものを、システムで20〜30万円の予算で揃えられるものを提案していきたいと思います。

―― 20世紀と21世紀とでは全然違う。20世紀は充足を満たしていくための技術革新の時代です。それが行き着くところまで行った21世紀には、商品にも、新しい提案性が求められます。今までと同じものを何回やり変えていっても、買い替えのスパンが単に長くなるだけですね。

北山 お客様の商品を見る目はもっと厳しくなると思います。プラズマのような高価な商品が売れるのは、やはり自分の今までのライフスタイルを変えたいと思っている方がおられるということです。昔は映画館でしか見られなかった映画が、今は家にいながらにして、映画館並の音場で、好きな時間に楽しめる。生活の中にゆとりを感じることができます。そういうことに対してお客様はお金をぽんと出すわけですね。
 時代がデフレであろうと、欲しいと思ったものを買う資産能力は今後もあると思います。ですから、高いものを発売することに臆することはない。逆に、「安いものでないと売れないかな」という方向に引っ張られないように、我々メーカーが自社のポリシーやコンセプトをしっかり出していくことが大切だと思います。(senka21編集部)                  

続く

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