成長のカギは顧客中心の視点 − TIがアナログIC事業戦略説明会を開催
米テキサス・インスツルメンツ・インコーポレイテッド、および日本テキサス・インスツルメンツ(株)は本日、アナログIC事業戦略に関する説明会を開催した。会場には米TI社より同事業担当 シニア・バイス・プレジデントのグレッグ・ロウ氏が駆け付けた。
TIは同事業における2005年の売り上げについて、4年前よりも8億ドル以上の増加を記録した。ワールドワイドでのシェア獲得率については、8%から12%へ伸長した。
同社の成長を支えた幾つかの要素についてロウ氏は指摘した。はじめにこの数年の期間に、幾つかの重要な企業買収を成功させたことにもより、信号の入口から出口まで全てをサポートできるシグナルチェーンとパワーマネージメントの提供を可能としてきた点が挙げられた。「良質な製品を顧客のニーズに合わせ、素早く実現できるサービス体制が実現されている」とロウ氏は語る。
ふたつめの成功のカギは、高性能な製品ラインアップを強化し、製品スペックに顧客のニーズを素早く組み込んでいく体制を確立した点であるという。短期間の開発周期で、高性能な製品を次々に市場へと送り出しながら、同時に個別の顧客ニーズにも対応可能なサービスを実現してきたことにより、05年は年間で約700のチップ製品を市場に投入するという実績を打ち立てている。
最後にロウ氏が指摘したのは、広範囲に渡る顧客のサポートを実現した点だ。TIは2005年に17億ドル以上の売り上げを高性能アナログIC事業で記録した。最終製品のセグメントは「産業機器」「コンピューター」「通信」「コンシューマー」それぞれをバランス良くカバーしてきたとロウ氏は語る。その結果、売り上げ的に横ばいを続ける市場環境の中で、同社は前年比で12%以上の好成長を記録したという。顧客数は5万社以上に登り、製品数は15,000品種以上を数えるまでに至っている。
またミックスド・シグナル・アナログIC事業では、汎用アプリケーションを中心に20億ドル以上の売り上げを同社は記録した。100社以上のハイボリュームな顧客を対象に、各社製品の差別化要素を組み込んだカスタム製品をTI独自に開発し提案することによって、車載からコンシューマー製品、携帯電話まで幅広い分野の顧客獲得が実現された。その背景についてロウ氏は「デジタルとアナログの両分野で高い技術力を保有し、投資を支える事業基盤の確立、自社でウェハ・プロセスが可能な製造能力や長期的な視野に立った技術ロードマップを定めることによって、TI独自に成長のための必要要素をつくりあげてきたからである」と説明する。
さらに同社の成長において最も大事な要素は「顧客中心の視点」であるとロウ氏は強調する。日本での取り組みについても、日本TIのエンジニアによる開発サポートや広範囲に渡るセールスチャンネルによる充実したサービスなどを確立することにより、顧客のニーズを素早く捉え、対応できる体制を確立していく考えをロウ氏は示した。
本日の説明会で開催された質疑応答の内容を紹介する。
Q:現在のシェアを、将来目標とする16%へどれくらいのスピードで成長させたいと考えている。また日本市場でのシェア目標はどれくらいか
A:アナログICはゆっくりとした周期性を持つ市場だ。1年1%くらいのペースで今後は着実に伸ばしていきたいと考えている。日本のCE製品の技術は絶大だ。日本の戦略は当社のワールドワイドでの戦略と一緒で、顧客と一体になったビジネスを展開すること。これを実現すれば日本でもシェア拡大が狙えるだろう
Q:現在事業内でまだ弱いと考える分野はあるのか。あればどんなかたちで補強したい
A:どんな企業でも改善すべき部分を持っているものだ。TIは多くの強みを持つ企業であるが、短距離RF(無線周波数)送受信装置の所が弱かったので、チップコン社の買収により補強を図った。その成果が現れた今、迅速な開発力を得てギャップが埋められたと考えている
Q:アナログ製品の利益率はいまどの程度あるのか
A:利益率は高くなっている。ビジネスの特徴として、デジタルに比べてアナログは人間による作業とその蓄積が重要になる。製品はコピーが困難であり、顧客が興味を持ってくれる製品がつくれれば自然と利益性が高まっていくだろうと考えている
Q:アナログ事業は技術者の確保が難しくなっていると聞くが、どのような対策をたてているのか
A:確かに技術者の確保は今大きな問題だ。大学では今、デジタルの技術にいっそうの将来性を感じる学生が増え、アナログ専攻希望者が減っていると聞く。でも実際は世の中がデジタル化すると、アナログの需要が増えてくるものだ。そこで当社としては、大学とも連携してアナログを学生に教えるためのカリキュラムを共同で設置し、本分野の学問を育てようとしている。長期的な取り組みではあるが、着実に成功へと向かっていると実感している
Q:アナログICの収益性は将来的にも明るいと考えているか
A:顧客に興味を持ってもらえる商品を開発できる企業にとっては、大変明るいと考える。今、アナログを商材とする顧客企業においても人材の獲得やノウハウの蓄積が難しいと聞く。そこへ当社が魅力的な製品やテクニカルサポートを提供できれば、顧客にとって魅力的な製品の開発と、収益獲得に効果的なバックアップができると
考えている
(Phile-web編集部)
TIは同事業における2005年の売り上げについて、4年前よりも8億ドル以上の増加を記録した。ワールドワイドでのシェア獲得率については、8%から12%へ伸長した。
同社の成長を支えた幾つかの要素についてロウ氏は指摘した。はじめにこの数年の期間に、幾つかの重要な企業買収を成功させたことにもより、信号の入口から出口まで全てをサポートできるシグナルチェーンとパワーマネージメントの提供を可能としてきた点が挙げられた。「良質な製品を顧客のニーズに合わせ、素早く実現できるサービス体制が実現されている」とロウ氏は語る。
ふたつめの成功のカギは、高性能な製品ラインアップを強化し、製品スペックに顧客のニーズを素早く組み込んでいく体制を確立した点であるという。短期間の開発周期で、高性能な製品を次々に市場へと送り出しながら、同時に個別の顧客ニーズにも対応可能なサービスを実現してきたことにより、05年は年間で約700のチップ製品を市場に投入するという実績を打ち立てている。
最後にロウ氏が指摘したのは、広範囲に渡る顧客のサポートを実現した点だ。TIは2005年に17億ドル以上の売り上げを高性能アナログIC事業で記録した。最終製品のセグメントは「産業機器」「コンピューター」「通信」「コンシューマー」それぞれをバランス良くカバーしてきたとロウ氏は語る。その結果、売り上げ的に横ばいを続ける市場環境の中で、同社は前年比で12%以上の好成長を記録したという。顧客数は5万社以上に登り、製品数は15,000品種以上を数えるまでに至っている。
またミックスド・シグナル・アナログIC事業では、汎用アプリケーションを中心に20億ドル以上の売り上げを同社は記録した。100社以上のハイボリュームな顧客を対象に、各社製品の差別化要素を組み込んだカスタム製品をTI独自に開発し提案することによって、車載からコンシューマー製品、携帯電話まで幅広い分野の顧客獲得が実現された。その背景についてロウ氏は「デジタルとアナログの両分野で高い技術力を保有し、投資を支える事業基盤の確立、自社でウェハ・プロセスが可能な製造能力や長期的な視野に立った技術ロードマップを定めることによって、TI独自に成長のための必要要素をつくりあげてきたからである」と説明する。
さらに同社の成長において最も大事な要素は「顧客中心の視点」であるとロウ氏は強調する。日本での取り組みについても、日本TIのエンジニアによる開発サポートや広範囲に渡るセールスチャンネルによる充実したサービスなどを確立することにより、顧客のニーズを素早く捉え、対応できる体制を確立していく考えをロウ氏は示した。
本日の説明会で開催された質疑応答の内容を紹介する。
Q:現在のシェアを、将来目標とする16%へどれくらいのスピードで成長させたいと考えている。また日本市場でのシェア目標はどれくらいか
A:アナログICはゆっくりとした周期性を持つ市場だ。1年1%くらいのペースで今後は着実に伸ばしていきたいと考えている。日本のCE製品の技術は絶大だ。日本の戦略は当社のワールドワイドでの戦略と一緒で、顧客と一体になったビジネスを展開すること。これを実現すれば日本でもシェア拡大が狙えるだろう
Q:現在事業内でまだ弱いと考える分野はあるのか。あればどんなかたちで補強したい
A:どんな企業でも改善すべき部分を持っているものだ。TIは多くの強みを持つ企業であるが、短距離RF(無線周波数)送受信装置の所が弱かったので、チップコン社の買収により補強を図った。その成果が現れた今、迅速な開発力を得てギャップが埋められたと考えている
Q:アナログ製品の利益率はいまどの程度あるのか
A:利益率は高くなっている。ビジネスの特徴として、デジタルに比べてアナログは人間による作業とその蓄積が重要になる。製品はコピーが困難であり、顧客が興味を持ってくれる製品がつくれれば自然と利益性が高まっていくだろうと考えている
Q:アナログ事業は技術者の確保が難しくなっていると聞くが、どのような対策をたてているのか
A:確かに技術者の確保は今大きな問題だ。大学では今、デジタルの技術にいっそうの将来性を感じる学生が増え、アナログ専攻希望者が減っていると聞く。でも実際は世の中がデジタル化すると、アナログの需要が増えてくるものだ。そこで当社としては、大学とも連携してアナログを学生に教えるためのカリキュラムを共同で設置し、本分野の学問を育てようとしている。長期的な取り組みではあるが、着実に成功へと向かっていると実感している
Q:アナログICの収益性は将来的にも明るいと考えているか
A:顧客に興味を持ってもらえる商品を開発できる企業にとっては、大変明るいと考える。今、アナログを商材とする顧客企業においても人材の獲得やノウハウの蓄積が難しいと聞く。そこへ当社が魅力的な製品やテクニカルサポートを提供できれば、顧客にとって魅力的な製品の開発と、収益獲得に効果的なバックアップができると
考えている
(Phile-web編集部)