【スペシャルインタビュー】中国大陸部市場にいち早く進出 − DVD-Rトップシェア三菱化学メディア
【スペシャルインタビュー】
中国大陸部市場にいち早く進出、中国のDVD-R市場でトップシェアを快走する三菱化学メディア
三菱とVerbatim(バーベイタム)の2ブランドを擁する三菱化学メディアが中国市場で大健闘している。2002年に海外メディアメーカーとしては初めて中国の大陸部に、100%出資の販売子会社「威宝国際貿易(シンセン)有限公司」を設立。以来、強力な商品の投入と、地域に密着したマーケティング活動を行い、販売店や消費者からの評価が高まるとともに、市場シェアの面でも中国市場のメインプレーヤーとしてのポジションを得るに至っている。威宝国際貿易(シンセン)有限公司創立以来のメンバーで、マーケティング・ゼネラル・マネージャーを務める田(Tian)氏に、中国大陸部のメディア市場と同社の現況を伺った。
威宝国際貿易(シンセン)有限公司
Verbatim(Schenzen)International Trading Co., Ltd.
マーケティング・ゼネラル・マネージャー
Jie Tian氏
インタビュー:Senka 21編集部
―― 三菱化学メディアが中国大陸に進出した時期はいつですか。
田氏(以下敬称略) 2002年の5月、中国の大陸部で三菱ブランドとバーベイタムブランドの商品を販売するために、シンセンの保税区の中に設立しました。メディア業界において、中国の大陸部で外国の会社が全額出資の販売子会社を設立したのは、当社が初めてでした。
それ以前は香港から商品を出荷していましたが、シンセンに販売子会社を設立したことによって、人民元での国内出荷が可能になりました。会社の設立後、ブランドの知名度を高めるための様々な努力を行ってきました。その結果、今では、ユーザーや販売チャネルの皆様から高い評価をいただけるようになりました。
―― 中国大陸部におけるDVDメディア市場の規模と動向を聞かせてください。
田 政府からの発表がないので正確な数字はわかりませんが、月間1,000万枚程度と推測しています。SCCG(米国・サンタクララの調査会社)のデータによると、中国大陸部の市場規模はアジア・太平洋地域全体のDVD-Rの販売量の37.1%を占め、台湾、香港、韓国などを大きく引き離す最大の市場です。
DVD-Rの用途には合法的なものと映画の違法コピーのような非合法の2種類があります。合法的な部分では、業務用と個人用とがあります。業務用は、図書館や映画、印刷用などの大きな記録要領を要求される分野で使われています。個人用ではインターネットからの資料のダウンロードなどで利用されています。
―― PC用とAV用に用いられる比率はどの程度でしょうか。
田 中国ではほとんどがPC用で、欧米や日本のようにテレビ番組の録画に使われることはあまりありません。テレビ番組を録画するという発想がないことや、安価な映画の違法コピーが街で大量に売られていることがその理由です。ソニーのPS2が政府から禁止されていることもあって、ゲーム機用でもほとんど使われていません。
―― 中国市場での三菱化学メディアのポジションは。
田 三菱とバーベイタムは、中国大陸部のITメディア分野でのNo.1専門誌「マイクロコンピューター」誌から高い評価を受けています。この雑誌では、毎年、「読者が最も選びたいブランド」と「読者が最も使用しているブランド」の調査を行っています。この調査では、それぞれ3つのブランドしか選ばれません。2005年の調査では、三菱とバーベイタムの2つのブランドが、それぞれ両方の賞に選ばれました。
その他にも三菱とバーベイタムの2つのブランドの商品は、いろいろなメディアからの賞をいただきました。IT関係で一番大きな新聞「コンピューター情報新聞」では、バーベイタムが「市場満足度No.1賞」に選ばれました。
さらにインターネットメディアでも、北部で最大の「INTOZGC.com(北京)」南部で最大の、「QC.com(広州)」「MY DRIVERS.com」からも、三菱とバーベイタムの両ブランドが、「編集者推薦賞」に選ばれました。
―― 中国の大陸部での市場占有率は、どの程度でしょうか。
田 中国の記録メディア市場は急速に発展しています。三菱化学メディアでは、4年前にこれを見越して中国大陸に投資しました。そして、中国市場の急速な成長に合わせて、三菱化学メディアとバーベイタムのブランドも成長してきました。
前述のSCCGの調査結果では、2005年度は中国の国内ブランドが市場全体の60%近くを占め、残りの40%近くが海外ブランドとなっています。三菱とバーベイタム両ブランド合計での市場占有率は10.8%で、海外ブランドの中でトップです。ちなみに、世界市場では4年連続して、世界シェアNo.1になっています。
―― 海外ブランドの中でトップシェアのポジションを獲得できている理由は何でしょうか。
田 三菱化学メディアの先進的な技術と品質の高さを基盤に、適切で強力なマーケティング活動を展開してきたことです。マーケティング面での主な成功要因は、直接投資による販売子会社の設立、日本からの強力な支援、オペレーションのローカル化の徹底です。
―― 具体的にはどういうことでしょうか。
田 三菱化学メディアは中国大陸で初の、メーカーの直接投資による外国ブランドの販売会社でした。これによって、他の海外ブランドに先駆けて、ブランド認知度の向上やお客様へのサービスなどの活動を、自分たちで直接行えたことが、大きなアドバンテージになっています。
日本サイドの三菱化学メディアのスタッフが当地の市場を良く理解してくれて、製品や情報など様々な面で協力してくれたことも重要なポイントです。製品の構造やコスト構造、販売方式、使われ方などの点で、中国と欧米や日本とでは大きな違いがあります。それを良く理解できずに外国の方法で国内販売を要求しても、なかなかうまくいきません。
ローカル・オペレーション化では、現在、当社のスタッフは、全員中国本土の人です。全員が当地の市場に詳しく、消費者がどういう製品を欲しいか、どんなやり方であればもっと販売できるかをよく知っています。
―― 中国市場での記録メディアビジネスの問題点は何でしょうか。
田 最大の問題は偽物です。三菱ブランドでは、8倍速や4倍速の偽物は、以前から出回っていましたが、最近では16倍速の偽物がもう出てきました。バーベイタムブランドでは、今のところ、主に8倍速の偽物が出回っています。
偽物には3種類あります。一つは、ロゴやパッケージなどの外観デザインの盗用です。二つ目は、メーカーID(MID)の盗用です。これにはMIDだけを盗むケースと、MIDと設計の両方を盗むケースがあります。三つ目は類似商標の使用です。
―― この問題への対策はとられているのでしょうか。
田 偽物による被害から守るために、当社ではいくつかの方策をとっています。その一つが積極的に当地の関係機関と情報をやりとりして、一緒に偽物を摘発しています。消費者に対する告知活動では、インターネットや宣伝などを利用して、どんな偽物が出たか、見分け方は何かなどを教えています。三つ目は、日本サイドと連携して、製品の生産や設計段階から偽物を作りにくくするような工夫をしています。当社は偽物からお客様を守り、本物の品質の良さを知っていただくため、今後も偽物と戦っていきます。
―― 成長が続く中国市場の中での、今後の戦略を聞かせてください。
田 市場シェアの向上、秩序ある市場作り、優れた製品の提供とサービスの向上の3点が今後の当社の大きなテーマです。中国は経済の発展と生活水準の向上とともに、今後ますます記録メディア市場は大きく成長していきます。
2005年の三菱とバーベイタムの合計市場シェアは、市場全体の10.8%ですが、これを15〜20%に成長させたいと考えています。この4年間で、ごく一部の地域を除く中国全土に販売代理店を整備しました。今、当社の市場は経済や情報が発展している沿海部に集中していますが、これから内陸部を積極的に攻めていきます。
市場シェアの拡大と並んで、市場の秩序作りも重要な課題です。この問題について理解の深い海外ブランドとも力を合わせて取り組んでいきたいと思っています。
ユーザーに対して素晴らしい製品とサービスを提供していくことは、私たちにとって、市場シェア以外の最大の目的と願いです。
―― この仕事を通じて田さんが実現したい夢は何でしょうか。
田 この会社が設立された2002年には、まだ光メディアは消費者にほとんど知られていませんでした。それが今では、光メディアやハードウエアは手に入らない存在ではなくなってきました。
私がメディア業界に入った時、中国でのこの業界の発展に貢献できれば光栄だと思いました。業界が中国でますます繁栄した業界になって、中国の一般の消費者が、欧米や日本のように、先進的な技術で自由に毎日を記録することができるようになって欲しいと思います。
中国は古代から文字が発達し、記録文化が発展していた国です。半導体メモリーやHDDの普及が進み、価格も安くなってきていますが、長期保存ができるDVDは、まさに最適な記録メディアです。DVDに記録することによって、この国の「残す文化」を継承していって欲しいと思います。
<Senka 21 2006年 10月号より転載>
中国大陸部市場にいち早く進出、中国のDVD-R市場でトップシェアを快走する三菱化学メディア
三菱とVerbatim(バーベイタム)の2ブランドを擁する三菱化学メディアが中国市場で大健闘している。2002年に海外メディアメーカーとしては初めて中国の大陸部に、100%出資の販売子会社「威宝国際貿易(シンセン)有限公司」を設立。以来、強力な商品の投入と、地域に密着したマーケティング活動を行い、販売店や消費者からの評価が高まるとともに、市場シェアの面でも中国市場のメインプレーヤーとしてのポジションを得るに至っている。威宝国際貿易(シンセン)有限公司創立以来のメンバーで、マーケティング・ゼネラル・マネージャーを務める田(Tian)氏に、中国大陸部のメディア市場と同社の現況を伺った。
Verbatim(Schenzen)International Trading Co., Ltd.
マーケティング・ゼネラル・マネージャー
Jie Tian氏
インタビュー:Senka 21編集部
―― 三菱化学メディアが中国大陸に進出した時期はいつですか。
田氏(以下敬称略) 2002年の5月、中国の大陸部で三菱ブランドとバーベイタムブランドの商品を販売するために、シンセンの保税区の中に設立しました。メディア業界において、中国の大陸部で外国の会社が全額出資の販売子会社を設立したのは、当社が初めてでした。
それ以前は香港から商品を出荷していましたが、シンセンに販売子会社を設立したことによって、人民元での国内出荷が可能になりました。会社の設立後、ブランドの知名度を高めるための様々な努力を行ってきました。その結果、今では、ユーザーや販売チャネルの皆様から高い評価をいただけるようになりました。
―― 中国大陸部におけるDVDメディア市場の規模と動向を聞かせてください。
田 政府からの発表がないので正確な数字はわかりませんが、月間1,000万枚程度と推測しています。SCCG(米国・サンタクララの調査会社)のデータによると、中国大陸部の市場規模はアジア・太平洋地域全体のDVD-Rの販売量の37.1%を占め、台湾、香港、韓国などを大きく引き離す最大の市場です。
DVD-Rの用途には合法的なものと映画の違法コピーのような非合法の2種類があります。合法的な部分では、業務用と個人用とがあります。業務用は、図書館や映画、印刷用などの大きな記録要領を要求される分野で使われています。個人用ではインターネットからの資料のダウンロードなどで利用されています。
―― PC用とAV用に用いられる比率はどの程度でしょうか。
田 中国ではほとんどがPC用で、欧米や日本のようにテレビ番組の録画に使われることはあまりありません。テレビ番組を録画するという発想がないことや、安価な映画の違法コピーが街で大量に売られていることがその理由です。ソニーのPS2が政府から禁止されていることもあって、ゲーム機用でもほとんど使われていません。
―― 中国市場での三菱化学メディアのポジションは。
田 三菱とバーベイタムは、中国大陸部のITメディア分野でのNo.1専門誌「マイクロコンピューター」誌から高い評価を受けています。この雑誌では、毎年、「読者が最も選びたいブランド」と「読者が最も使用しているブランド」の調査を行っています。この調査では、それぞれ3つのブランドしか選ばれません。2005年の調査では、三菱とバーベイタムの2つのブランドが、それぞれ両方の賞に選ばれました。
その他にも三菱とバーベイタムの2つのブランドの商品は、いろいろなメディアからの賞をいただきました。IT関係で一番大きな新聞「コンピューター情報新聞」では、バーベイタムが「市場満足度No.1賞」に選ばれました。
さらにインターネットメディアでも、北部で最大の「INTOZGC.com(北京)」南部で最大の、「QC.com(広州)」「MY DRIVERS.com」からも、三菱とバーベイタムの両ブランドが、「編集者推薦賞」に選ばれました。
―― 中国の大陸部での市場占有率は、どの程度でしょうか。
田 中国の記録メディア市場は急速に発展しています。三菱化学メディアでは、4年前にこれを見越して中国大陸に投資しました。そして、中国市場の急速な成長に合わせて、三菱化学メディアとバーベイタムのブランドも成長してきました。
前述のSCCGの調査結果では、2005年度は中国の国内ブランドが市場全体の60%近くを占め、残りの40%近くが海外ブランドとなっています。三菱とバーベイタム両ブランド合計での市場占有率は10.8%で、海外ブランドの中でトップです。ちなみに、世界市場では4年連続して、世界シェアNo.1になっています。
―― 海外ブランドの中でトップシェアのポジションを獲得できている理由は何でしょうか。
田 三菱化学メディアの先進的な技術と品質の高さを基盤に、適切で強力なマーケティング活動を展開してきたことです。マーケティング面での主な成功要因は、直接投資による販売子会社の設立、日本からの強力な支援、オペレーションのローカル化の徹底です。
―― 具体的にはどういうことでしょうか。
田 三菱化学メディアは中国大陸で初の、メーカーの直接投資による外国ブランドの販売会社でした。これによって、他の海外ブランドに先駆けて、ブランド認知度の向上やお客様へのサービスなどの活動を、自分たちで直接行えたことが、大きなアドバンテージになっています。
日本サイドの三菱化学メディアのスタッフが当地の市場を良く理解してくれて、製品や情報など様々な面で協力してくれたことも重要なポイントです。製品の構造やコスト構造、販売方式、使われ方などの点で、中国と欧米や日本とでは大きな違いがあります。それを良く理解できずに外国の方法で国内販売を要求しても、なかなかうまくいきません。
ローカル・オペレーション化では、現在、当社のスタッフは、全員中国本土の人です。全員が当地の市場に詳しく、消費者がどういう製品を欲しいか、どんなやり方であればもっと販売できるかをよく知っています。
―― 中国市場での記録メディアビジネスの問題点は何でしょうか。
田 最大の問題は偽物です。三菱ブランドでは、8倍速や4倍速の偽物は、以前から出回っていましたが、最近では16倍速の偽物がもう出てきました。バーベイタムブランドでは、今のところ、主に8倍速の偽物が出回っています。
偽物には3種類あります。一つは、ロゴやパッケージなどの外観デザインの盗用です。二つ目は、メーカーID(MID)の盗用です。これにはMIDだけを盗むケースと、MIDと設計の両方を盗むケースがあります。三つ目は類似商標の使用です。
―― この問題への対策はとられているのでしょうか。
田 偽物による被害から守るために、当社ではいくつかの方策をとっています。その一つが積極的に当地の関係機関と情報をやりとりして、一緒に偽物を摘発しています。消費者に対する告知活動では、インターネットや宣伝などを利用して、どんな偽物が出たか、見分け方は何かなどを教えています。三つ目は、日本サイドと連携して、製品の生産や設計段階から偽物を作りにくくするような工夫をしています。当社は偽物からお客様を守り、本物の品質の良さを知っていただくため、今後も偽物と戦っていきます。
―― 成長が続く中国市場の中での、今後の戦略を聞かせてください。
田 市場シェアの向上、秩序ある市場作り、優れた製品の提供とサービスの向上の3点が今後の当社の大きなテーマです。中国は経済の発展と生活水準の向上とともに、今後ますます記録メディア市場は大きく成長していきます。
2005年の三菱とバーベイタムの合計市場シェアは、市場全体の10.8%ですが、これを15〜20%に成長させたいと考えています。この4年間で、ごく一部の地域を除く中国全土に販売代理店を整備しました。今、当社の市場は経済や情報が発展している沿海部に集中していますが、これから内陸部を積極的に攻めていきます。
市場シェアの拡大と並んで、市場の秩序作りも重要な課題です。この問題について理解の深い海外ブランドとも力を合わせて取り組んでいきたいと思っています。
ユーザーに対して素晴らしい製品とサービスを提供していくことは、私たちにとって、市場シェア以外の最大の目的と願いです。
―― この仕事を通じて田さんが実現したい夢は何でしょうか。
田 この会社が設立された2002年には、まだ光メディアは消費者にほとんど知られていませんでした。それが今では、光メディアやハードウエアは手に入らない存在ではなくなってきました。
私がメディア業界に入った時、中国でのこの業界の発展に貢献できれば光栄だと思いました。業界が中国でますます繁栄した業界になって、中国の一般の消費者が、欧米や日本のように、先進的な技術で自由に毎日を記録することができるようになって欲しいと思います。
中国は古代から文字が発達し、記録文化が発展していた国です。半導体メモリーやHDDの普及が進み、価格も安くなってきていますが、長期保存ができるDVDは、まさに最適な記録メディアです。DVDに記録することによって、この国の「残す文化」を継承していって欲しいと思います。
<Senka 21 2006年 10月号より転載>