ソニーBDレコーダー開発陣を緊急取材<前編> − 業界を震撼させた機能と価格の秘密とは
9月12日に発表された、ソニーのBDレコーダー2007年冬モデル。MPEG4 AVC/H.264を使ったエンコード、4倍速BD-Rへの対応、コピーナインへの対応予定、HDオーディオビットストリーム出力対応など注目すべき機能が多く、話題も尽きそうもない。
今回はこれら最新の技術が盛り込まれた新BDレコーダー開発陣へのインタビュー取材を実施した。今までの取材では明らかにされてこなかった設計秘話と開発者の”想い”をお届けしよう。
【取材にご協力いただいた方々】
【Phile-web関連記事】
・折原一也がソニー新BDレコーダーを緊急取材! H.264エンコーダーの実力に迫る
・ソニー、H.264エンコーダー搭載のBDレコーダー「X/L/T」3シリーズ4機種 − コピーナインにも対応予定
・ソニー、レコーダー国内全機種をBDに − BDレコーダー発表会詳報
・ソニー、画質・音質を高めたBDレコーダー最上位機「BDZ-X90」
・ソニー、ビデオカメラ連携を強化したBDレコーダー「BDZ-L70」
・ソニー、実売10万円台前半のBDレコーダー「BDZ-T50/T70」
■「10万円」を念頭にコストダウンを進めた
−−ソニーのBDレコーダー秋の新モデル4機種の発表から2週間ほど経ちましたが、発表後の反響はいかがですか?
永井氏:今回、他社に先駆けてAVCエンコードに対応したモデルを発表できたということで、お客様の感触は良かったと考えています。今はCEATECへの展示に向けて準備を進めている最中ですが、今度はお客様にも実際の画を見てもらいたいところですね。
−−エントリーモデルの「BDZ-T50」は、予想実売価格が14万円程度と、戦略的な価格設定が話題になっています。
永井氏:昨年BDZ-V7/V9を出したわけですが、今回、少しでも早くBDにシフトしてハイビジョンの世界観を完成させたいというところで、価格的には頑張って設定しました。V9からシステムを変えて、ラインナップの幅を持てるように設計しなおしたというのは大きいかなと思っています。赤字を出しても出せればいいというわけではないので、しっかりコスト体力を持った形で出すのは大変…というか、今も大変ですね(笑)。
−−BDZ-T50については、ポイント還元などを考慮すると、実売価格が10万円に近づくことを狙って価格設定をされたのでしょうか。
永井氏:キーになる価格帯としては10万円がポイントと思っています。ハイビジョンレコーダーは5万円台になってしまっていることを考えると、あまり高い値付けでは、積極的にBDをアピールできないというのもあります。今後はDVDレコーダーの新機種を出さないと言うこともあって、手の届きやすい価格帯にBDを持ってくることは、やらなくてはならないと考えていました。
−−今回の4モデルのラインナップは、価格差も狭いレンジに収まりました。
永井氏:価格でラインナップを設定したのではなく、3つのスタイルごとに違った機能を付けていくことで、結果として2万円ごとという形でキレイに収まりました。TA-DA5300ESが20万円前半くらいなので、これとの価格的なマッチングを図りたいという意図もあり、現在の価格レンジが決定しました。
−−価格については、V9から大幅に下がっていますが、コストダウンへの取り組みはどのように行われたのですか?
永井氏:自社で開発したBDドライブの存在が大きいですね。ハイビジョンレコーダーは、ドライブ以外はDVDレコーダーと共通する部分も多いので、しっかりドライブの価格を合わせられるように作り込むことができたのが大きかったですね。もちろんカートリッジのBD-RE1.0にも対応で、初代BDレコーダーのBDZ-S77を買っていただいた大切なお客様もサポートしています。
太田氏:内部的には、今回はシステム系を大きく変えて、LSIの数をかなり集約しました。このことによるコストダウン効果はかなり大きいですね。もちろんその分の機能や性能を削減するのでなく、映像に関してはV9相当の映像を実現して、かつ新しい機能を搭載してと、トータル的にバランス良くできたと思っています。
−−LSIが変わるとGUIの速度も変わってくるかと思うのですが、ソフトウェアのチューニングはいかがでしょうか。
永井氏:ソフトはまだ最終ではないので、これからチューニングを詰めていくところです。全体に極力速く動作するようにしたいと努力していまして、少なくとも速度はBDZ-V7/V9と同等以上は維持するつもりです。番組表は今回は表示領域が広がったり、フォントサイズを変えることができたりと、扱う情報量が大きく増えており、BDZ-V9と比べて処理の負荷が上がっているので、同等の速度を維持するのもなかなか大変です。
■AVCの解像度を1,440にしたのは低レートでの画質確保が理由
−−MPEG4 AVCのエンコードについては、録画の際に解像度を1,440×1,080にするようですが、1,920×1,080としなかったことには理由があるのでしょうか。
濱田氏:やはり低レートでの画質を良くしたい、ということがあります。1,920×1,080ですと1,440×1,080と比べて情報量は1.3倍になってしまうので、転送レート的に苦しくなってしまいます。今回はHDDに100時間録画という目標を立てたので、最低ビットレートは6Mbpsとなります。そこを1,920で録ってしまうと、画質面でも厳しいでしょうね。また、特に地デジは元々が1,440なので、1,440の状態でリサイズをせずにエンコードできるという利点もあります。
−−高ビットレートモードでも解像度を1,440×1,080に設定したのはなぜですか?
永井氏:MPEG4 AVCのモードでも、上位のモードでは、DRモードの転送レートに近づきます。例えば、AVCの最上位モードでは、ビットレートが15Mbpsに達します。それに対して、地デジは一般的に17Mbpsで計算しますが、実際には17Mbpsを下回っているものも多くあります。ならば、DRを使って録画していただきたい、と考えております。
−−今回、AVCエンコーダーを初めて搭載したわけですが、独自のチューニング方法などはありますか?
濱田氏:他社製品にAVCエンコーダーを搭載したものがないので、何が独自なのかは分からないのですが(笑)。低レートに力を入れているのが一つの特徴ですね。AVCはレートを落としていくとどんどん甘くなる特性があるので、多少ノイズが増えてもディテールを出す方向でチューニングしています。ディテールが落ちてしまっては、HDで録る意味がなくなってしまうので、その方向に調整していることは特徴ですね。
−−AVC記録の際、データ放送についてはどうなるのでしょうか?
永井氏:番組情報などは残りますが、番組連動のデータ放送は保存しません。字幕については、DRモードであれば当然データが残りますが、AVCエンコードする場合は、字幕を画面に焼き込む方法で対応しています。
−−録画モードの使い分けについて、おすすめの方法などはあるのでしょうか?
永井氏:ハイビジョンで録画できるMPEG4 AVCの録画モードは、15M(XR)、12M(XSR)、8M(SR)、6M(LSR)と4つのモードがあるのですが、XRは、DVを高画質に取り込むために作りました。XSRはBSデジタル放送の約1/2のビットレートで、BSデジタルを2倍録りたい、という用途に向けて設定しました。同じように、SRは地デジを2倍の時間録ることができます。最も低いビットレートのLSRは、とにかく長時間ハイビジョンで残したいという方向きです。
SRであればHDの画質を保ちつつ、ドラマ1クール分を1枚に残せます。また、AVCエンコードにより、1層のディスクには2時間10分を超える映画を入れられたり、2層ディスクにスターウォーズシリーズ3本を入れてしまうという用途も出てくるでしょう。
−−AVC録画は「録画1」のみで使えるようですが、オススメしたい使い分けの方法はありますか?
永井氏:片方はおまかせチャプターも使えずAVCも使えないということもあって、基本的には「録画1」を使ってもらえればと思っています。同時動作の制約も、特に「録画1」を使ったときの快適さを重視して作っていまして。今回はAVCエンコードをしながらHDDのAVC録画タイトルを再生することもできるようになっています。BDZ-V9より同時動作の制限は緩和されています。
−−AVC録画の実現には、デバイス面でAVCHDカムなどとの共通化もなされているのでしょうか。
濱田氏:基本的に、ノウハウはあるので、その技術はこちらで取り入れて作っています。ただ、向こうはカメラなので自然画が中心になりますが、こちらはテレビ素材と全然違うものなので、チューニングは新たに行っています。
永井氏:ハンディカムだと突然のシーンチェンジはほとんどないですけど、テレビ番組では頻繁にあるので、シーンチェンジの瞬間でビットレートを上げるなどといった工夫も行っています。
−−AVC録画に対応したことで、編集機能の制限が付いたりはしていないのですか?
永井氏:分割結合、A-B消去、チャプター編集は基本的にすべて同じようにできます。あとはフレーム編集の維持ということで、同じですね。AVCHDカムコーダーで取り込んだ映像の編集も入ってきて、自分でエンコードしたもの以外のものが入ってくるのは大変なところだったのですが、編集は同じように行えるようにしました。
■V9/V7のダビング10対応は「検討中」
−−メディアに関して、4倍速BD-RやBD-R LTHタイプといった最新規格への対応はいかでしょうか。
永井氏:4倍速BD-Rについては問題なく対応しています。BD-R LTHタイプについても、対応する方向で進めています。フォーマット自体は決まっていますし、あとはそれに対応したドライブを作るという段階です。実際のメディアを見て検証していくということで、ディスクメーカーさんと協力して対応する方向で進めています。
−−そうしますと、BD-R LTHタイプへは出荷時から対応すると考えていいのでしょうか。
永井氏:出荷時だとメディアが存在していないかもしれませんし、メディアがないと、「保証します」とは言いにくいところがありますね。ただ、対応できる形でメーカーさんとやりとりをしていくつもりです。
−−「ダビング10」(コピーナイン)についてはいかがですか?
永井氏:「対応予定」というのが公式コメントです。まだ規格と運用方法がまだ決まっていないところもあって、対応時期についてはご説明できる状況にありませんが、対応する方向でいきたいな、と思っています。放送局によっては、コピワンのままという場合もありそうなので、あとはどう実際の運用が決まるかですね。それが決まってから、対応時期をご連絡したいと思っています。
−−昨年発売の「BDZ-V9/V7」の、ダビング10対応に関してはいかがですか?
永井氏:既存の2機種に関しても、規格や運用方法が決まるのを待ってから、どういう対応をするか検討したいと思います。今回のBDレコーダーはダビング10の話が出てきてから開発しているので、仕込みを十分に行えますが、過去の機種はそういった部分を考慮していないこともあって、録画回数のカウントをどこで持つかといった問題や、データベースを変更する必要、またメモリー容量など様々な問題があります。そういう状況を見ながらオフィシャルにしていきたいと思っています。
−−今回AVC録画、BD-R 4倍速、LTH、ダビング10対応予定と充実した仕様になったと思うのですが、i.Link(TS)ダビングについては実現されませんでした。これはどういった理由からですか?
永井氏:i.Linkについては、発表直後から多くのご意見をいただきました。今までの弊社製レコーダーでも言われてきたことで、状況を見ながら考えたいと思っていますが、相手機器との動作保証をどこまで取れるかという問題もありますよね。やるからには保証したいですし、ムーブするときに消えてしまうと大きな問題となります。またダビング10の話もありますし、そういった事情もあって、今回のモデルでは対応しませんでした。
<後編では画質・音質のポイントについてお届けします>
(インタビュー・構成:折原一也)
折原一也 プロフィール
埼玉県出身。コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。
今回はこれら最新の技術が盛り込まれた新BDレコーダー開発陣へのインタビュー取材を実施した。今までの取材では明らかにされてこなかった設計秘話と開発者の”想い”をお届けしよう。
【取材にご協力いただいた方々】
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・折原一也がソニー新BDレコーダーを緊急取材! H.264エンコーダーの実力に迫る
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・ソニー、画質・音質を高めたBDレコーダー最上位機「BDZ-X90」
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・ソニー、実売10万円台前半のBDレコーダー「BDZ-T50/T70」
■「10万円」を念頭にコストダウンを進めた
−−ソニーのBDレコーダー秋の新モデル4機種の発表から2週間ほど経ちましたが、発表後の反響はいかがですか?
永井氏:今回、他社に先駆けてAVCエンコードに対応したモデルを発表できたということで、お客様の感触は良かったと考えています。今はCEATECへの展示に向けて準備を進めている最中ですが、今度はお客様にも実際の画を見てもらいたいところですね。
−−エントリーモデルの「BDZ-T50」は、予想実売価格が14万円程度と、戦略的な価格設定が話題になっています。
永井氏:昨年BDZ-V7/V9を出したわけですが、今回、少しでも早くBDにシフトしてハイビジョンの世界観を完成させたいというところで、価格的には頑張って設定しました。V9からシステムを変えて、ラインナップの幅を持てるように設計しなおしたというのは大きいかなと思っています。赤字を出しても出せればいいというわけではないので、しっかりコスト体力を持った形で出すのは大変…というか、今も大変ですね(笑)。
−−BDZ-T50については、ポイント還元などを考慮すると、実売価格が10万円に近づくことを狙って価格設定をされたのでしょうか。
永井氏:キーになる価格帯としては10万円がポイントと思っています。ハイビジョンレコーダーは5万円台になってしまっていることを考えると、あまり高い値付けでは、積極的にBDをアピールできないというのもあります。今後はDVDレコーダーの新機種を出さないと言うこともあって、手の届きやすい価格帯にBDを持ってくることは、やらなくてはならないと考えていました。
−−今回の4モデルのラインナップは、価格差も狭いレンジに収まりました。
永井氏:価格でラインナップを設定したのではなく、3つのスタイルごとに違った機能を付けていくことで、結果として2万円ごとという形でキレイに収まりました。TA-DA5300ESが20万円前半くらいなので、これとの価格的なマッチングを図りたいという意図もあり、現在の価格レンジが決定しました。
−−価格については、V9から大幅に下がっていますが、コストダウンへの取り組みはどのように行われたのですか?
永井氏:自社で開発したBDドライブの存在が大きいですね。ハイビジョンレコーダーは、ドライブ以外はDVDレコーダーと共通する部分も多いので、しっかりドライブの価格を合わせられるように作り込むことができたのが大きかったですね。もちろんカートリッジのBD-RE1.0にも対応で、初代BDレコーダーのBDZ-S77を買っていただいた大切なお客様もサポートしています。
太田氏:内部的には、今回はシステム系を大きく変えて、LSIの数をかなり集約しました。このことによるコストダウン効果はかなり大きいですね。もちろんその分の機能や性能を削減するのでなく、映像に関してはV9相当の映像を実現して、かつ新しい機能を搭載してと、トータル的にバランス良くできたと思っています。
−−LSIが変わるとGUIの速度も変わってくるかと思うのですが、ソフトウェアのチューニングはいかがでしょうか。
永井氏:ソフトはまだ最終ではないので、これからチューニングを詰めていくところです。全体に極力速く動作するようにしたいと努力していまして、少なくとも速度はBDZ-V7/V9と同等以上は維持するつもりです。番組表は今回は表示領域が広がったり、フォントサイズを変えることができたりと、扱う情報量が大きく増えており、BDZ-V9と比べて処理の負荷が上がっているので、同等の速度を維持するのもなかなか大変です。
■AVCの解像度を1,440にしたのは低レートでの画質確保が理由
−−MPEG4 AVCのエンコードについては、録画の際に解像度を1,440×1,080にするようですが、1,920×1,080としなかったことには理由があるのでしょうか。
濱田氏:やはり低レートでの画質を良くしたい、ということがあります。1,920×1,080ですと1,440×1,080と比べて情報量は1.3倍になってしまうので、転送レート的に苦しくなってしまいます。今回はHDDに100時間録画という目標を立てたので、最低ビットレートは6Mbpsとなります。そこを1,920で録ってしまうと、画質面でも厳しいでしょうね。また、特に地デジは元々が1,440なので、1,440の状態でリサイズをせずにエンコードできるという利点もあります。
−−高ビットレートモードでも解像度を1,440×1,080に設定したのはなぜですか?
永井氏:MPEG4 AVCのモードでも、上位のモードでは、DRモードの転送レートに近づきます。例えば、AVCの最上位モードでは、ビットレートが15Mbpsに達します。それに対して、地デジは一般的に17Mbpsで計算しますが、実際には17Mbpsを下回っているものも多くあります。ならば、DRを使って録画していただきたい、と考えております。
−−今回、AVCエンコーダーを初めて搭載したわけですが、独自のチューニング方法などはありますか?
濱田氏:他社製品にAVCエンコーダーを搭載したものがないので、何が独自なのかは分からないのですが(笑)。低レートに力を入れているのが一つの特徴ですね。AVCはレートを落としていくとどんどん甘くなる特性があるので、多少ノイズが増えてもディテールを出す方向でチューニングしています。ディテールが落ちてしまっては、HDで録る意味がなくなってしまうので、その方向に調整していることは特徴ですね。
−−AVC記録の際、データ放送についてはどうなるのでしょうか?
永井氏:番組情報などは残りますが、番組連動のデータ放送は保存しません。字幕については、DRモードであれば当然データが残りますが、AVCエンコードする場合は、字幕を画面に焼き込む方法で対応しています。
−−録画モードの使い分けについて、おすすめの方法などはあるのでしょうか?
永井氏:ハイビジョンで録画できるMPEG4 AVCの録画モードは、15M(XR)、12M(XSR)、8M(SR)、6M(LSR)と4つのモードがあるのですが、XRは、DVを高画質に取り込むために作りました。XSRはBSデジタル放送の約1/2のビットレートで、BSデジタルを2倍録りたい、という用途に向けて設定しました。同じように、SRは地デジを2倍の時間録ることができます。最も低いビットレートのLSRは、とにかく長時間ハイビジョンで残したいという方向きです。
SRであればHDの画質を保ちつつ、ドラマ1クール分を1枚に残せます。また、AVCエンコードにより、1層のディスクには2時間10分を超える映画を入れられたり、2層ディスクにスターウォーズシリーズ3本を入れてしまうという用途も出てくるでしょう。
−−AVC録画は「録画1」のみで使えるようですが、オススメしたい使い分けの方法はありますか?
永井氏:片方はおまかせチャプターも使えずAVCも使えないということもあって、基本的には「録画1」を使ってもらえればと思っています。同時動作の制約も、特に「録画1」を使ったときの快適さを重視して作っていまして。今回はAVCエンコードをしながらHDDのAVC録画タイトルを再生することもできるようになっています。BDZ-V9より同時動作の制限は緩和されています。
−−AVC録画の実現には、デバイス面でAVCHDカムなどとの共通化もなされているのでしょうか。
濱田氏:基本的に、ノウハウはあるので、その技術はこちらで取り入れて作っています。ただ、向こうはカメラなので自然画が中心になりますが、こちらはテレビ素材と全然違うものなので、チューニングは新たに行っています。
永井氏:ハンディカムだと突然のシーンチェンジはほとんどないですけど、テレビ番組では頻繁にあるので、シーンチェンジの瞬間でビットレートを上げるなどといった工夫も行っています。
−−AVC録画に対応したことで、編集機能の制限が付いたりはしていないのですか?
永井氏:分割結合、A-B消去、チャプター編集は基本的にすべて同じようにできます。あとはフレーム編集の維持ということで、同じですね。AVCHDカムコーダーで取り込んだ映像の編集も入ってきて、自分でエンコードしたもの以外のものが入ってくるのは大変なところだったのですが、編集は同じように行えるようにしました。
■V9/V7のダビング10対応は「検討中」
−−メディアに関して、4倍速BD-RやBD-R LTHタイプといった最新規格への対応はいかでしょうか。
永井氏:4倍速BD-Rについては問題なく対応しています。BD-R LTHタイプについても、対応する方向で進めています。フォーマット自体は決まっていますし、あとはそれに対応したドライブを作るという段階です。実際のメディアを見て検証していくということで、ディスクメーカーさんと協力して対応する方向で進めています。
−−そうしますと、BD-R LTHタイプへは出荷時から対応すると考えていいのでしょうか。
永井氏:出荷時だとメディアが存在していないかもしれませんし、メディアがないと、「保証します」とは言いにくいところがありますね。ただ、対応できる形でメーカーさんとやりとりをしていくつもりです。
−−「ダビング10」(コピーナイン)についてはいかがですか?
永井氏:「対応予定」というのが公式コメントです。まだ規格と運用方法がまだ決まっていないところもあって、対応時期についてはご説明できる状況にありませんが、対応する方向でいきたいな、と思っています。放送局によっては、コピワンのままという場合もありそうなので、あとはどう実際の運用が決まるかですね。それが決まってから、対応時期をご連絡したいと思っています。
−−昨年発売の「BDZ-V9/V7」の、ダビング10対応に関してはいかがですか?
永井氏:既存の2機種に関しても、規格や運用方法が決まるのを待ってから、どういう対応をするか検討したいと思います。今回のBDレコーダーはダビング10の話が出てきてから開発しているので、仕込みを十分に行えますが、過去の機種はそういった部分を考慮していないこともあって、録画回数のカウントをどこで持つかといった問題や、データベースを変更する必要、またメモリー容量など様々な問題があります。そういう状況を見ながらオフィシャルにしていきたいと思っています。
−−今回AVC録画、BD-R 4倍速、LTH、ダビング10対応予定と充実した仕様になったと思うのですが、i.Link(TS)ダビングについては実現されませんでした。これはどういった理由からですか?
永井氏:i.Linkについては、発表直後から多くのご意見をいただきました。今までの弊社製レコーダーでも言われてきたことで、状況を見ながら考えたいと思っていますが、相手機器との動作保証をどこまで取れるかという問題もありますよね。やるからには保証したいですし、ムーブするときに消えてしまうと大きな問題となります。またダビング10の話もありますし、そういった事情もあって、今回のモデルでは対応しませんでした。
<後編では画質・音質のポイントについてお届けします>
(インタビュー・構成:折原一也)
折原一也 プロフィール
埼玉県出身。コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。