超小型でも音の厚みは十分 − ソニーの“ゴルフボール大"シアターシステム「HT-IS100」を聴く
●小型化を突き詰めた5.1chスピーカーシステム
サラウンド環境を手軽に実現できるホームシアターシステムは、近年その製品数をぐっと増やしている分野である。今回紹介するソニー「HT-IS100」(製品詳細)もその分野の製品だが、ホームシアターシステムで重視されるコンパクトさをさらに突き詰めているのがこのシステムの特徴だ。
なんと、5ch分のスピーカーのそれぞれが、実にゴルフボール程度の大きさしかない(幅43×高さ43×奥行40mm)。もちろん壁掛けも想定しており、金具が付属する。なお、同社直販サイトのソニースタイルでは89,800円で販売を行う予定で、すでに予約受付を始めている。
またセンタースピーカーの台座部分にリモコン受光部が内蔵されているが、これは実用的かつ見た目もスマート(リモコン受光部だけ取り外して設置することも可能)。
サブウーファー部はさすがにそれなりのサイズがあるが、その設置場所さえ確保できれば、他のスピーカーの置き場所にはあまり困らないだろう。実際、試聴場所は筆者自室という狭小生活空間だったのだが、何とか収めることができた。5.1chシステムとしては抜群の設置性と言える。
●「S-Master」や自動音場補正、3系統のHDMIなど仕様は充実
サブウーファーに内蔵されるシステムアンプは同社が誇るフルデジタルアンプ32ビット「S-Master」。フロント/センター/サラウンドが各45W、サブウーファー(120mmと160mmの2ユニット構成)は100W+100Wと十分な出力を確保している。
自動音場補正は「DCAC(Digital Cinema Auto Calibration)」を搭載。なんと約30秒で設定完了する、超高速自動補正だ。設置時にしか使わない機能ではあるが、作業の流れを途切れさせないこの速さは気分がよい。
HDMI入力は3系統と十分。1080p、x.v.Color、リニアPCM7.1chなどに対応する。もちろん「ブラビアリンク」にも対応し、同社テレビやレコーダーとの電源連動、入力自動切り替えなどが可能だ。
また「オートジャンルセレクター」対応のブラビアとHDMI接続した場合には、視聴中の番組ジャンルに合わせてサラウンドフィールド(MOVIE/MUSIC/SPORTS/NEWS/STANDARDの、いわゆる音場モード)を自動で切り替えることも可能。ユーザーが操作することなく、番組に合わせた最適な音場が提供される。
なおHDMI出力はコンポジット/コンポーネント入力をアップコンバートしての出力にも対応している。
その他、別売アダプターで同社ウォークマンの対応機を接続し、再生・連係動作させることも可能。同社製品のメディアセンター的な役割を任せることもできそうだ。
●サブウーファーとスピーカーの音域が自然につながっている
前述のように試聴環境は狭かったのだが、音場補正の効果も大きいのか、不満を感じさせないサラウンド音場を生み出してくれた。
「イノセンス」冒頭の事件現場周囲。野次馬の声や様々な物音を漏らさずに伝えてくる。サラウンド空間後方の音も、明瞭でありながら過度な強調はなく、自然な空間性を生んでいる。
事件現場建物内。場面の重苦しく緊迫した空気感を生み出している通奏低音は、十分な厚さを持ち、不気味な揺らぎもしっかり感じられる。低音の迫力は、硬質さではなく重厚さによるものが大きい。格闘シーンの打撃音もドムッと重く、回し蹴りのサラウンド処理もキレがあって効果的。
検死官との会話の場面では台詞描写に注目。超小型スピーカーにしては、台詞は意外と厚手だ。耳を近付けてみると、サブウーファーが中音域近くまでをカバーしている。それにしては音域のつなぎの違和感もあまり感じさせない。人物がカメラの外に出たときの、台詞の距離感、響き方の変化も丁寧に伝えてきてくれる。
「DTSデモディスク」からはオマー・ハキムの演奏を試聴。DTS-HD Master Audio収録だが、同社BDレコーダーBDZ-X90側でL-PCMにデコード、それを受けて再生した。
多弦ベースの低音域はほとんどがサブウーファーの担当となるようだ。そのためその定位はサブウーファーの設置位置に多少引きずられる。サブウーファーは可能なかぎりセンター寄りに置くのがよいだろう。設置時に気をつかうとすれば、その程度だ。
サラウンド空間を存分に生かして描き出されるギターとブルース・ハープの浮遊感も適当に再現される。前述のようにリア成分が自然なので、下手にリアに回りすぎることもない。
●超小型ながら厚みのある音場を実現した注目モデル
ステレオ音楽ソース(CD)も聴いてみた。上原ひろみ「Beyond Standard」も多弦ベースがボトムを支えているが、その重低音の表現も説得力を損なわないレベル。ステレオソース再生時にも中低域はサブウーファーが利用されており、その効果だ。ステレオソースを2.1ch化すると不自然さが出てしまう場合もあるが、そういったことは感じなかった。帯域バランスは整っており、ステレオの広がりも心地よい。
個人的には音場補正後のダイレクトの状態で満足であったが、本機には前述のサラウンドフィールドと、BASS/MIDDLE/TREBLEのレベル調整も用意されている。それぞれの環境・好み、ソースに合わせたフィッティングも可能なことも付け加えておく。
通して、超コンパクトシステムでありながら、サブウーファーを活かして全体に厚みのある音場を生み出す巧みさが印象的であった。
フロントサラウンドではなく本式の5.1chシステムを望みつつ、設置性の高さや手頃な価格も求めるという方には、検討候補に入れてみてほしいシステムだ。
(高橋敦)
執筆者プロフィール
埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。
サラウンド環境を手軽に実現できるホームシアターシステムは、近年その製品数をぐっと増やしている分野である。今回紹介するソニー「HT-IS100」(製品詳細)もその分野の製品だが、ホームシアターシステムで重視されるコンパクトさをさらに突き詰めているのがこのシステムの特徴だ。
なんと、5ch分のスピーカーのそれぞれが、実にゴルフボール程度の大きさしかない(幅43×高さ43×奥行40mm)。もちろん壁掛けも想定しており、金具が付属する。なお、同社直販サイトのソニースタイルでは89,800円で販売を行う予定で、すでに予約受付を始めている。
またセンタースピーカーの台座部分にリモコン受光部が内蔵されているが、これは実用的かつ見た目もスマート(リモコン受光部だけ取り外して設置することも可能)。
サブウーファー部はさすがにそれなりのサイズがあるが、その設置場所さえ確保できれば、他のスピーカーの置き場所にはあまり困らないだろう。実際、試聴場所は筆者自室という狭小生活空間だったのだが、何とか収めることができた。5.1chシステムとしては抜群の設置性と言える。
●「S-Master」や自動音場補正、3系統のHDMIなど仕様は充実
サブウーファーに内蔵されるシステムアンプは同社が誇るフルデジタルアンプ32ビット「S-Master」。フロント/センター/サラウンドが各45W、サブウーファー(120mmと160mmの2ユニット構成)は100W+100Wと十分な出力を確保している。
自動音場補正は「DCAC(Digital Cinema Auto Calibration)」を搭載。なんと約30秒で設定完了する、超高速自動補正だ。設置時にしか使わない機能ではあるが、作業の流れを途切れさせないこの速さは気分がよい。
HDMI入力は3系統と十分。1080p、x.v.Color、リニアPCM7.1chなどに対応する。もちろん「ブラビアリンク」にも対応し、同社テレビやレコーダーとの電源連動、入力自動切り替えなどが可能だ。
また「オートジャンルセレクター」対応のブラビアとHDMI接続した場合には、視聴中の番組ジャンルに合わせてサラウンドフィールド(MOVIE/MUSIC/SPORTS/NEWS/STANDARDの、いわゆる音場モード)を自動で切り替えることも可能。ユーザーが操作することなく、番組に合わせた最適な音場が提供される。
なおHDMI出力はコンポジット/コンポーネント入力をアップコンバートしての出力にも対応している。
その他、別売アダプターで同社ウォークマンの対応機を接続し、再生・連係動作させることも可能。同社製品のメディアセンター的な役割を任せることもできそうだ。
●サブウーファーとスピーカーの音域が自然につながっている
前述のように試聴環境は狭かったのだが、音場補正の効果も大きいのか、不満を感じさせないサラウンド音場を生み出してくれた。
「イノセンス」冒頭の事件現場周囲。野次馬の声や様々な物音を漏らさずに伝えてくる。サラウンド空間後方の音も、明瞭でありながら過度な強調はなく、自然な空間性を生んでいる。
事件現場建物内。場面の重苦しく緊迫した空気感を生み出している通奏低音は、十分な厚さを持ち、不気味な揺らぎもしっかり感じられる。低音の迫力は、硬質さではなく重厚さによるものが大きい。格闘シーンの打撃音もドムッと重く、回し蹴りのサラウンド処理もキレがあって効果的。
検死官との会話の場面では台詞描写に注目。超小型スピーカーにしては、台詞は意外と厚手だ。耳を近付けてみると、サブウーファーが中音域近くまでをカバーしている。それにしては音域のつなぎの違和感もあまり感じさせない。人物がカメラの外に出たときの、台詞の距離感、響き方の変化も丁寧に伝えてきてくれる。
「DTSデモディスク」からはオマー・ハキムの演奏を試聴。DTS-HD Master Audio収録だが、同社BDレコーダーBDZ-X90側でL-PCMにデコード、それを受けて再生した。
多弦ベースの低音域はほとんどがサブウーファーの担当となるようだ。そのためその定位はサブウーファーの設置位置に多少引きずられる。サブウーファーは可能なかぎりセンター寄りに置くのがよいだろう。設置時に気をつかうとすれば、その程度だ。
サラウンド空間を存分に生かして描き出されるギターとブルース・ハープの浮遊感も適当に再現される。前述のようにリア成分が自然なので、下手にリアに回りすぎることもない。
●超小型ながら厚みのある音場を実現した注目モデル
ステレオ音楽ソース(CD)も聴いてみた。上原ひろみ「Beyond Standard」も多弦ベースがボトムを支えているが、その重低音の表現も説得力を損なわないレベル。ステレオソース再生時にも中低域はサブウーファーが利用されており、その効果だ。ステレオソースを2.1ch化すると不自然さが出てしまう場合もあるが、そういったことは感じなかった。帯域バランスは整っており、ステレオの広がりも心地よい。
個人的には音場補正後のダイレクトの状態で満足であったが、本機には前述のサラウンドフィールドと、BASS/MIDDLE/TREBLEのレベル調整も用意されている。それぞれの環境・好み、ソースに合わせたフィッティングも可能なことも付け加えておく。
通して、超コンパクトシステムでありながら、サブウーファーを活かして全体に厚みのある音場を生み出す巧みさが印象的であった。
フロントサラウンドではなく本式の5.1chシステムを望みつつ、設置性の高さや手頃な価格も求めるという方には、検討候補に入れてみてほしいシステムだ。
(高橋敦)
執筆者プロフィール
埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。