著名プロダクト・デザイナーが緊急来日
ティモシー・ヤコブ・イェンセン氏が語る − 東芝“REGZA”「F1シリーズ」のデザインにかける思い
(株)東芝は2日、東京・青山にて液晶テレビ“REGZA”「F1シリーズ」のデザイン・コンセプトに関する記者説明会を開催。会場にはプロダクトデザインを手がけたJACOB JENSEN DESIGN社チーフデザイナー兼CEOのTimothy Jacob Jensen氏が出席し、今回のデザインワークを紹介した。
“LED REGZA”「F1シリーズ」は本年8月下旬から東芝の液晶テレビのラインナップに新しく加わった3D対応テレビ。240Hz/4倍速駆動のVA方式による1,920×1,080画素フルHD クリアパネルを搭載し、バックライトエリアコントロール対応の白色LEDエッジライトシステムを採用。高画質な映像と奥行き29mmのスリムサイズを併せて実現している。また外付けUSB HDDへ、テレビ番組の録画も楽しめる(関連ニュース)。
F1シリーズはそのプロダクトデザインを、デンマークに拠点を置く世界的に有名なデザインスタジオである「JACOB JENSEN DESIGN」社が手がけた製品であることも話題を呼んでいる。JACOB JENSEN DESIGN社と東芝によるコラボレーションは、F1シリーズが初めての機会となるが、日本国内で展開されるF1シリーズのほか、ヨーロッパでは「WL768」「VL748」の2シリーズがJACOB JENSEN DESIGN社のプロダクトデザインにより商品化されている(関連ニュース)。
記者説明会にはTimothy Jacob Jensen氏が登壇し、同社のデザインポリシーや“REGZA F1シリーズ”が誕生した背景について説明を行った。
同社は1958年にデンマークのコペンハーゲンに誕生し、以後数多くの著名ブランドとのコラボレーションによるプロダクトデザインを展開してきた。また、自社ブランドの時計やホームアプライアンス製品、キッチン・バス用アイテムやアイウェアなども展開し、多くのファンを獲得している。「私たちはトータル・デザイン・ソリューションを提供するスタジオです」と語るJensen氏。創立から52年の活動の中で、デザインスタジオとショールームを現在のデンマーク郊外の街に構え、世界的に著名なデザインスタジオとして発展を遂げてきた。
Jensen氏は「デザインはハードワーク」であるという。Jensen氏はスタジオの創立者であり、実父であるJacob Jensen氏からデザインを学び始めた頃の体験を振り返った。「初めに父は、私に大きなホワイトボードとチョークを手渡して、ただ“縦の線を描きなさい”と命じました。そこで私は定規を使って線を引きはじめたのですが、父は私の定規を取り上げ、フリーハンドで描くように指示しました。父が私に伝えたかったことは、“縦の線とは何か”を感じとってもらうことだったのです。私は縦の線を何度も繰り返し描きました。縦の線で及第点をもらったら、次は“横の線”、最後は“円”を描くことが課題となりました。それぞれを繰り返し描いた後、父は私に課した反復作業の意味を初めて教えてくれました。縦の線は“命”、横の線は“死”(人が横になること)、そして円は“生命の連鎖”を意味しており、反復した動きを体で覚えることが、この課題の持つ真意だったのです。今から振り返ればとても懐かしい昔の出来事ですが、これが私にとって最初の“デザイン”でした」
やがて1990年に同社のチーフデザイナーに就任したJensen氏は、その後も数々の著名なプロダクトデザインを発表してきた。「はじめてデザインしたプロダクトは、何度もカットアンドトライを繰り返して完成させたものです」と、当時の想い出をJensen氏は語る。「その製品のプロダクトデザインを初めた頃は、前日につくりあげたデザインを翌朝に見直して、気になる箇所は繰り返し修正していくという作業が続きました。やがて76日目の朝、もはや何も修正する点はないと言える磨き上げられたデザインがそこに完成していました。デザインの現場では、時折このようにマジカルな瞬間を迎えることができるのです」
良質なデザインを創造するためには、敢えて困難な道を選択することが重要であると語るJensen氏は、その道のりを“トマトスープ”をつくる作業に例えて説明する。「トマトスープを食べたくなったとしましょう。近所のスーパーに出かけて、出来合いの商品を買って空腹を満たすことは簡単ですが、そこで敢えて市場にまで足を運んで、一つ一つの素材から吟味してスープをつくる道を選んだとします。腕前やレシピの解釈によっては、最終的にトマトスープではない何かができてしまうかもしれませんが、そのスープを味わった時の感動はひときわであるはずです。例えば何かをつくるとき、簡単な方法を選ぶのではなく、あえて困難な道を選択するという考え方は、JACOB JENSEN DESIGNのコーポレートポリシーそのものです」
続いてJensen氏のプレゼンテーションは、今回“REGZA”シリーズで実現した同社と東芝とのコラボレーションに及んだ。Jensen氏が紹介した1枚のスライドには、上部に東芝のロゴと東京の風景、下部にJACOB JENSEN DESIGN社のロゴとデンマークの長閑な風景が映し出された。「今回、世界的な大企業である東芝とコラボレーションを実現できたことを、私はとても光栄に感じています。スライドの下の写真は、私たちのオフィスから見たデンマークの風景です。ご覧のように、両社はまったく違う環境でそれぞれのビジネスを展開していますが、異なるフィールドで、異なるアイデアを生み出し、それぞれに実績を築き、多くのユーザーから評価を受けてきた両社だからこそ、一緒に手を取って新しいことに取り組むことで、”1+1”以上の何かが誕生はずと考えて、今回のコラボレーションに踏み出しました。テレビというプロダクトは、ただの箱ではありません。画面に映し出されるコンテンツが人々のイマジネーションを育み、そこに価値が創造されるプロダクトです。テレビはその誕生から今日まで、目覚ましい発展を遂げてきました。躍動を続けるテレビというプロダクト・フィールドにおいて、先端を行く東芝とコラボレーションを組み、新たな価値を創造していけることを、私は非常に喜ばしく思います。私は両社のタッグによるコンセプトを、“スカンディ・エジアン”(スカンジナビア+アジア より)と名付けたいと思います」とJensen氏は語る。
REGZA「F1シリーズ」については、デザインを完成へ導くまで、やはり幾度ものカットアンドトライを繰り返してきたというJensen氏。昨今のエレクトロニクス製品の開発速度はとても速く、プロダクトデザインにおいてもスピードが求められたと振り返ったJensen氏は、「開発過程には困難なことも多かったが、F1シリーズを新生児に例えるなら“素晴らしい赤ちゃん”を授かったと自負できるでしょう」と胸を張った。
この日執り行われた記者説明会の冒頭には、(株)東芝 ビジュアルプロダクツ社 映像第一事業部 グローバルマーケティング部の本村裕史氏も登壇し、挨拶した。本村氏は今回、Jensen氏を迎えてF1シリーズを紹介した背景には、もうひとつ「本日はまだ詳しくお話しできないが、次はどんなコラボでプロジェクトを拡大していくか、ミーティングするためにも今回Jensen氏に来日いただいた」と語る。両社によるコラボレーションが今後どんなかたちに発展していくのか、とても興味深いところだ。
【問い合わせ先】
東芝 テレビご相談センター
TEL/0120-97-9674
“LED REGZA”「F1シリーズ」は本年8月下旬から東芝の液晶テレビのラインナップに新しく加わった3D対応テレビ。240Hz/4倍速駆動のVA方式による1,920×1,080画素フルHD クリアパネルを搭載し、バックライトエリアコントロール対応の白色LEDエッジライトシステムを採用。高画質な映像と奥行き29mmのスリムサイズを併せて実現している。また外付けUSB HDDへ、テレビ番組の録画も楽しめる(関連ニュース)。
F1シリーズはそのプロダクトデザインを、デンマークに拠点を置く世界的に有名なデザインスタジオである「JACOB JENSEN DESIGN」社が手がけた製品であることも話題を呼んでいる。JACOB JENSEN DESIGN社と東芝によるコラボレーションは、F1シリーズが初めての機会となるが、日本国内で展開されるF1シリーズのほか、ヨーロッパでは「WL768」「VL748」の2シリーズがJACOB JENSEN DESIGN社のプロダクトデザインにより商品化されている(関連ニュース)。
記者説明会にはTimothy Jacob Jensen氏が登壇し、同社のデザインポリシーや“REGZA F1シリーズ”が誕生した背景について説明を行った。
同社は1958年にデンマークのコペンハーゲンに誕生し、以後数多くの著名ブランドとのコラボレーションによるプロダクトデザインを展開してきた。また、自社ブランドの時計やホームアプライアンス製品、キッチン・バス用アイテムやアイウェアなども展開し、多くのファンを獲得している。「私たちはトータル・デザイン・ソリューションを提供するスタジオです」と語るJensen氏。創立から52年の活動の中で、デザインスタジオとショールームを現在のデンマーク郊外の街に構え、世界的に著名なデザインスタジオとして発展を遂げてきた。
Jensen氏は「デザインはハードワーク」であるという。Jensen氏はスタジオの創立者であり、実父であるJacob Jensen氏からデザインを学び始めた頃の体験を振り返った。「初めに父は、私に大きなホワイトボードとチョークを手渡して、ただ“縦の線を描きなさい”と命じました。そこで私は定規を使って線を引きはじめたのですが、父は私の定規を取り上げ、フリーハンドで描くように指示しました。父が私に伝えたかったことは、“縦の線とは何か”を感じとってもらうことだったのです。私は縦の線を何度も繰り返し描きました。縦の線で及第点をもらったら、次は“横の線”、最後は“円”を描くことが課題となりました。それぞれを繰り返し描いた後、父は私に課した反復作業の意味を初めて教えてくれました。縦の線は“命”、横の線は“死”(人が横になること)、そして円は“生命の連鎖”を意味しており、反復した動きを体で覚えることが、この課題の持つ真意だったのです。今から振り返ればとても懐かしい昔の出来事ですが、これが私にとって最初の“デザイン”でした」
やがて1990年に同社のチーフデザイナーに就任したJensen氏は、その後も数々の著名なプロダクトデザインを発表してきた。「はじめてデザインしたプロダクトは、何度もカットアンドトライを繰り返して完成させたものです」と、当時の想い出をJensen氏は語る。「その製品のプロダクトデザインを初めた頃は、前日につくりあげたデザインを翌朝に見直して、気になる箇所は繰り返し修正していくという作業が続きました。やがて76日目の朝、もはや何も修正する点はないと言える磨き上げられたデザインがそこに完成していました。デザインの現場では、時折このようにマジカルな瞬間を迎えることができるのです」
良質なデザインを創造するためには、敢えて困難な道を選択することが重要であると語るJensen氏は、その道のりを“トマトスープ”をつくる作業に例えて説明する。「トマトスープを食べたくなったとしましょう。近所のスーパーに出かけて、出来合いの商品を買って空腹を満たすことは簡単ですが、そこで敢えて市場にまで足を運んで、一つ一つの素材から吟味してスープをつくる道を選んだとします。腕前やレシピの解釈によっては、最終的にトマトスープではない何かができてしまうかもしれませんが、そのスープを味わった時の感動はひときわであるはずです。例えば何かをつくるとき、簡単な方法を選ぶのではなく、あえて困難な道を選択するという考え方は、JACOB JENSEN DESIGNのコーポレートポリシーそのものです」
続いてJensen氏のプレゼンテーションは、今回“REGZA”シリーズで実現した同社と東芝とのコラボレーションに及んだ。Jensen氏が紹介した1枚のスライドには、上部に東芝のロゴと東京の風景、下部にJACOB JENSEN DESIGN社のロゴとデンマークの長閑な風景が映し出された。「今回、世界的な大企業である東芝とコラボレーションを実現できたことを、私はとても光栄に感じています。スライドの下の写真は、私たちのオフィスから見たデンマークの風景です。ご覧のように、両社はまったく違う環境でそれぞれのビジネスを展開していますが、異なるフィールドで、異なるアイデアを生み出し、それぞれに実績を築き、多くのユーザーから評価を受けてきた両社だからこそ、一緒に手を取って新しいことに取り組むことで、”1+1”以上の何かが誕生はずと考えて、今回のコラボレーションに踏み出しました。テレビというプロダクトは、ただの箱ではありません。画面に映し出されるコンテンツが人々のイマジネーションを育み、そこに価値が創造されるプロダクトです。テレビはその誕生から今日まで、目覚ましい発展を遂げてきました。躍動を続けるテレビというプロダクト・フィールドにおいて、先端を行く東芝とコラボレーションを組み、新たな価値を創造していけることを、私は非常に喜ばしく思います。私は両社のタッグによるコンセプトを、“スカンディ・エジアン”(スカンジナビア+アジア より)と名付けたいと思います」とJensen氏は語る。
REGZA「F1シリーズ」については、デザインを完成へ導くまで、やはり幾度ものカットアンドトライを繰り返してきたというJensen氏。昨今のエレクトロニクス製品の開発速度はとても速く、プロダクトデザインにおいてもスピードが求められたと振り返ったJensen氏は、「開発過程には困難なことも多かったが、F1シリーズを新生児に例えるなら“素晴らしい赤ちゃん”を授かったと自負できるでしょう」と胸を張った。
この日執り行われた記者説明会の冒頭には、(株)東芝 ビジュアルプロダクツ社 映像第一事業部 グローバルマーケティング部の本村裕史氏も登壇し、挨拶した。本村氏は今回、Jensen氏を迎えてF1シリーズを紹介した背景には、もうひとつ「本日はまだ詳しくお話しできないが、次はどんなコラボでプロジェクトを拡大していくか、ミーティングするためにも今回Jensen氏に来日いただいた」と語る。両社によるコラボレーションが今後どんなかたちに発展していくのか、とても興味深いところだ。
【問い合わせ先】
東芝 テレビご相談センター
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