構造改革費用2,650億円を計上
【更新】パナソニック、薄型テレビ事業の改革内容を発表 − プラズマは高級機へシフト、液晶はODMも活用し大型化
パナソニック(株)は本日、2011年度上半期の中間決算を発表。同時に薄型テレビ事業の事業構造改革を行い、改革費用を計上することで4,200億円の最終赤字になる見通しを発表した。
本日夕方から行われた記者会見では、同社の大坪文雄社長が、事業構造改革の詳細や、今後の成長戦略などを説明した。
大坪社長は、今回発表したリストラ策を「収益改善に向けた徹底的な改革」と表現。「赤字解消を行い、環境革新企業へ一歩を踏み出すための構造改革だと理解してもらいたい」と述べた。
薄型テレビ事業では、11年度に構造改革費用として2,650億円を計上する。なお今回の構造改革に伴う、来年度以降の構造改革効果は810億円/年を見込み、2012年度の黒字転換を目指す。
またPDP/LCDとも、人員体制もスリム化する。大坪社長は「薄型テレビ以外にも、半導体や三洋電機などで構造改革を行っている。2010年度末は36万3〜4千人程度の従業員規模だったが、従来からこれを2012年度末に35万人以下にするという目標を掲げていた。これを前倒し、2011年度末に達成させるイメージだ」と説明した。
PDPパネル事業では、尼崎第5工場を生産休止して減損処理するほか、第3工場については設備の上海移転を中止する。これにより生産拠点は、これまでの尼崎第4/第5/上海の3拠点という計画から、尼崎第4工場のみの1拠点へと集約。42型換算でのパネル生産能力は、これまでの1,380万台から720万台へと減らす。
同時にテレビセット事業でも、プラズマテレビはこれまでのフルライン展開から、大画面中心へと方針を転換。収益力のある高級機種へ集中させる。具体的には50型以上の販売比率を、これまでの4割から6割へ引き上げる。
液晶パネル事業も構造改革を行う。茂原工場を休止するほか、姫路工場も減損処理を行い、国内2拠点から1拠点へとスリム化。同時にIPSパネルの性能を活かし、テレビ用だけでなく、ハイエンドモニターや車載モニター、医療用など、テレビ以外のパネルへも用途を広げる。非テレビ用パネルの販売比率を、一気に半分近くにまで高める計画で「すでに商談もいくつか進んでいる」(大坪社長)という。
液晶テレビのセット事業では、これまでの自社パネル中心、インチサイズを限定した取り組みから、海外パネルを活用し、大画面展開を行う方針へと改める。
また液晶テレビのセット事業ではOEM/ODMも活用する。2012年度には他社パネル品が半分近くとなり、残りを自社パネル品とOEM/ODM品で分け合うような形になる。
さらに液晶テレビの大型展開も同時に進め、50型以上のモデルも展開していく。
テレビセット事業では、国内のセット生産体制も集約。宇都宮は「モノ作り革新センター」にするほか、茨木についてはパネル技術の拠点と位置づける。
なお、記者からテレビ事業の今後の位置づけについて問われた大坪社長は、「これまでテレビは、言うまでもなく当社にとって、単一の商品では最大の売上規模だった。ブランドを象徴するグローバルな商品だった。この位置づけを急激に変えるわけではなく、引き続き重要な商品であることは変わらない。だが、これで収益を上げることができなかったことが問題と考えている」とした。
■システムLSIでも構造改革
半導体事業でも構造改革を行う。UniPhierなどのブランドで自社開発・生産を行ってきたシステムLSI事業は、今後ファブレス化を進め、生産委託へ切り替える。また一部先端工場の減損処理も行う。
さらに開発の一体化やスリム化も行い、開発は本社の関連研究所と統合。一部は他事業へシフトする。
これらの改革で浮いたリソースは、画像センサーやパワー半導体など、今後の成長が見込まれる事業に集させる。画像センサーでは新製品の投入で、デジカメ向けで挽回を図るほか、新技術の投入でモバイル市場も開拓する。
半導体事業における11年度の構造改革費用は590億円、構造改革効果は150億円/年を見込む。
■新興国攻略や「まるごと事業」拡大で成長を
さらに大坪社長は、別項で紹介した2012年1月からの事業体制再編についても説明(関連ニュース)。各ドメインごとの自主責任経営を強化すると同時に、新グローバル&グループ本社を設置して全社戦略機能を強化しつつスリム化するという、基本的な考え方を紹介した。
今後の成長戦略では、新興国の攻略に注力。特に中国、インド、ブラジルでは現地起点のモノ作りを行うとともに、マーケティング体制も強化し、大増販を仕掛ける計画を表明した。
さらに今後注力する製品分野として、ソーラー事業、民生用/車載用リチウム電池事業、蓄電システム、LED照明、モバイル・エコデバイスなどを紹介。その上で、製品群で強みを発揮するだけでなく、保守やメンテナンス、モニタリング、改善コンサルティングなどをトータルで提供する「まるごと事業」へ、引き続き注力する考えを示した。
最後に大坪社長は、今回発表した構造改革を完遂することで、2012年度に収益構造を大きく転換させると表明。「2011年度で徹底的に改革をし終え、2012年度以降は成長戦略によって増益させる」とした。
■質疑応答
以下、発表会で行われた質疑応答をお伝えする。質問にはすべて大坪社長が回答した。
Q:今回構造改革を発表した薄型テレビと半導体では、いつ頃危機感を感じたのか。
A:多様な原因が複合的に重なったと考えている。
薄型テレビについては、2008年度から採算が急に厳しくなり、2009年度以降にモデル組み換えなどの施策を行ってきたが、思うような事業構造にならなかった。
一つには、グローバルでメーカーが集中したということ。一気にコモディティー化が進み、思うような事業展開が行えなかった。円高ウォン安もコモディティー化を進める要因になって、結果として設備の過剰につながった。
半導体事業についても、これまでは自社開発を行うことで開発スピードを上げ、他社と差別化して収益を生むスタイルだったが、次第にシステムLSIと汎用LSIとで、微細化のコンセプトやスピードが変わっていった。特にシステムLSIで微細化が急速に進み、キャッチアップするための投資負担が厳しくなった。今回テレビ事業の適正化に伴い、システムLSIについても適正化したということだ。
Q:尼崎第3工場で計画していた太陽電池パネルの増産計画はどうなる?
A:国内生産よりも海外で生産するメリットが大きいと判断した。ソーラー単品というよりも、ソーラー、蓄電池、IT調理器具など、商品群をパッケージで提案していく。
Q:エナジー事業にアジアメーカーが集中しているが問題はないか。
A:エナジー関連に限らず、ライバルがいない事業というのはほとんどない。先ほどお話ししたとおり「家まるごと」「街まるごと」などを今後の成長戦略として、商品、技術、サービスのすべてを提供する数少ないメーカーの一つとして、じゅうぶん海外のライバルメーカーとも競争していけると考えている。
Q:社長在任が6年となった。不躾な質問だが、社長交代のタイミング、また後継者の資質についてはどう考えているか。
A:適切なタイミングが来れば自ら判断する。その時にあらためてお話しする。
Q:TPPなどの問題も浮上しているが、今後どういうふうに競争力を維持していくか。
A:円高の問題やTPPの問題で、極めて厳しい環境で闘わなければならないことは確かだ。その意味で大きなハンデを背負っている。
競争量を高めるために、コアとすべきは何と言っても技術力だ。たゆまず技術開発力を身につけることが重要で、これがなければ我々の存立基盤が崩れてしまう。
技術開発力を充実させながら新しい事業や商品を国内で作り込む。これを競争力の源泉として、商品や事業の成熟化に合わせて海外展開する。こういう考え方が重要だと思う。いまの問題は、こういう思いがあっても、様々な制約があって、国内でなかなかこういった事業展開を行えないということだ。
Q:今回の改革をパナソニックの歴史の中でどう位置づけているのか。
A:環境革新企業へ一歩を踏み出すための構造改革だと理解してもらいたい。
Q:パネル構造改革後の姿が知りたい。P3/P5の今後の活用はどうなるか。姫路での生産体制、生産能力は。
A:P3/P5については、生産を休止するということ。その後、P3/P5をどう活用するかはまだ確定していない。
姫路については、来年度以降は非テレビ用途が半分近くになる。従来通り、テレビ換算で何台という指標は役に立たない。現状、テレビセット換算で年間1,000万台近い能力がある。何割かは外販し、何割かは自社テレビに移すということだ。
Q:尼崎工場に関する兵庫県からの補助金について、兵庫県知事が返還を求めているという話があるが、これについてはどう考えるか。
A:兵庫県の知事から補助金の返還という話も聞いている。今後、交渉させてもらうことになると思う。
Q:テレビ事業縮小で売上が減ると思うが、全社的な売上規模の目標はどう変えていくのか。
A:売上10兆円、ROE10%という、いわゆる「グローバルエクセレントカンパニー」を目指すという考え自体は変わらない。ただし為替が変動しており、2012年度の経営目標は今後改めて発表したい。
本日夕方から行われた記者会見では、同社の大坪文雄社長が、事業構造改革の詳細や、今後の成長戦略などを説明した。
大坪社長は、今回発表したリストラ策を「収益改善に向けた徹底的な改革」と表現。「赤字解消を行い、環境革新企業へ一歩を踏み出すための構造改革だと理解してもらいたい」と述べた。
薄型テレビ事業では、11年度に構造改革費用として2,650億円を計上する。なお今回の構造改革に伴う、来年度以降の構造改革効果は810億円/年を見込み、2012年度の黒字転換を目指す。
またPDP/LCDとも、人員体制もスリム化する。大坪社長は「薄型テレビ以外にも、半導体や三洋電機などで構造改革を行っている。2010年度末は36万3〜4千人程度の従業員規模だったが、従来からこれを2012年度末に35万人以下にするという目標を掲げていた。これを前倒し、2011年度末に達成させるイメージだ」と説明した。
PDPパネル事業では、尼崎第5工場を生産休止して減損処理するほか、第3工場については設備の上海移転を中止する。これにより生産拠点は、これまでの尼崎第4/第5/上海の3拠点という計画から、尼崎第4工場のみの1拠点へと集約。42型換算でのパネル生産能力は、これまでの1,380万台から720万台へと減らす。
同時にテレビセット事業でも、プラズマテレビはこれまでのフルライン展開から、大画面中心へと方針を転換。収益力のある高級機種へ集中させる。具体的には50型以上の販売比率を、これまでの4割から6割へ引き上げる。
液晶パネル事業も構造改革を行う。茂原工場を休止するほか、姫路工場も減損処理を行い、国内2拠点から1拠点へとスリム化。同時にIPSパネルの性能を活かし、テレビ用だけでなく、ハイエンドモニターや車載モニター、医療用など、テレビ以外のパネルへも用途を広げる。非テレビ用パネルの販売比率を、一気に半分近くにまで高める計画で「すでに商談もいくつか進んでいる」(大坪社長)という。
液晶テレビのセット事業では、これまでの自社パネル中心、インチサイズを限定した取り組みから、海外パネルを活用し、大画面展開を行う方針へと改める。
また液晶テレビのセット事業ではOEM/ODMも活用する。2012年度には他社パネル品が半分近くとなり、残りを自社パネル品とOEM/ODM品で分け合うような形になる。
さらに液晶テレビの大型展開も同時に進め、50型以上のモデルも展開していく。
テレビセット事業では、国内のセット生産体制も集約。宇都宮は「モノ作り革新センター」にするほか、茨木についてはパネル技術の拠点と位置づける。
なお、記者からテレビ事業の今後の位置づけについて問われた大坪社長は、「これまでテレビは、言うまでもなく当社にとって、単一の商品では最大の売上規模だった。ブランドを象徴するグローバルな商品だった。この位置づけを急激に変えるわけではなく、引き続き重要な商品であることは変わらない。だが、これで収益を上げることができなかったことが問題と考えている」とした。
■システムLSIでも構造改革
半導体事業でも構造改革を行う。UniPhierなどのブランドで自社開発・生産を行ってきたシステムLSI事業は、今後ファブレス化を進め、生産委託へ切り替える。また一部先端工場の減損処理も行う。
さらに開発の一体化やスリム化も行い、開発は本社の関連研究所と統合。一部は他事業へシフトする。
これらの改革で浮いたリソースは、画像センサーやパワー半導体など、今後の成長が見込まれる事業に集させる。画像センサーでは新製品の投入で、デジカメ向けで挽回を図るほか、新技術の投入でモバイル市場も開拓する。
半導体事業における11年度の構造改革費用は590億円、構造改革効果は150億円/年を見込む。
■新興国攻略や「まるごと事業」拡大で成長を
さらに大坪社長は、別項で紹介した2012年1月からの事業体制再編についても説明(関連ニュース)。各ドメインごとの自主責任経営を強化すると同時に、新グローバル&グループ本社を設置して全社戦略機能を強化しつつスリム化するという、基本的な考え方を紹介した。
今後の成長戦略では、新興国の攻略に注力。特に中国、インド、ブラジルでは現地起点のモノ作りを行うとともに、マーケティング体制も強化し、大増販を仕掛ける計画を表明した。
さらに今後注力する製品分野として、ソーラー事業、民生用/車載用リチウム電池事業、蓄電システム、LED照明、モバイル・エコデバイスなどを紹介。その上で、製品群で強みを発揮するだけでなく、保守やメンテナンス、モニタリング、改善コンサルティングなどをトータルで提供する「まるごと事業」へ、引き続き注力する考えを示した。
最後に大坪社長は、今回発表した構造改革を完遂することで、2012年度に収益構造を大きく転換させると表明。「2011年度で徹底的に改革をし終え、2012年度以降は成長戦略によって増益させる」とした。
■質疑応答
以下、発表会で行われた質疑応答をお伝えする。質問にはすべて大坪社長が回答した。
Q:今回構造改革を発表した薄型テレビと半導体では、いつ頃危機感を感じたのか。
A:多様な原因が複合的に重なったと考えている。
薄型テレビについては、2008年度から採算が急に厳しくなり、2009年度以降にモデル組み換えなどの施策を行ってきたが、思うような事業構造にならなかった。
一つには、グローバルでメーカーが集中したということ。一気にコモディティー化が進み、思うような事業展開が行えなかった。円高ウォン安もコモディティー化を進める要因になって、結果として設備の過剰につながった。
半導体事業についても、これまでは自社開発を行うことで開発スピードを上げ、他社と差別化して収益を生むスタイルだったが、次第にシステムLSIと汎用LSIとで、微細化のコンセプトやスピードが変わっていった。特にシステムLSIで微細化が急速に進み、キャッチアップするための投資負担が厳しくなった。今回テレビ事業の適正化に伴い、システムLSIについても適正化したということだ。
Q:尼崎第3工場で計画していた太陽電池パネルの増産計画はどうなる?
A:国内生産よりも海外で生産するメリットが大きいと判断した。ソーラー単品というよりも、ソーラー、蓄電池、IT調理器具など、商品群をパッケージで提案していく。
Q:エナジー事業にアジアメーカーが集中しているが問題はないか。
A:エナジー関連に限らず、ライバルがいない事業というのはほとんどない。先ほどお話ししたとおり「家まるごと」「街まるごと」などを今後の成長戦略として、商品、技術、サービスのすべてを提供する数少ないメーカーの一つとして、じゅうぶん海外のライバルメーカーとも競争していけると考えている。
Q:社長在任が6年となった。不躾な質問だが、社長交代のタイミング、また後継者の資質についてはどう考えているか。
A:適切なタイミングが来れば自ら判断する。その時にあらためてお話しする。
Q:TPPなどの問題も浮上しているが、今後どういうふうに競争力を維持していくか。
A:円高の問題やTPPの問題で、極めて厳しい環境で闘わなければならないことは確かだ。その意味で大きなハンデを背負っている。
競争量を高めるために、コアとすべきは何と言っても技術力だ。たゆまず技術開発力を身につけることが重要で、これがなければ我々の存立基盤が崩れてしまう。
技術開発力を充実させながら新しい事業や商品を国内で作り込む。これを競争力の源泉として、商品や事業の成熟化に合わせて海外展開する。こういう考え方が重要だと思う。いまの問題は、こういう思いがあっても、様々な制約があって、国内でなかなかこういった事業展開を行えないということだ。
Q:今回の改革をパナソニックの歴史の中でどう位置づけているのか。
A:環境革新企業へ一歩を踏み出すための構造改革だと理解してもらいたい。
Q:パネル構造改革後の姿が知りたい。P3/P5の今後の活用はどうなるか。姫路での生産体制、生産能力は。
A:P3/P5については、生産を休止するということ。その後、P3/P5をどう活用するかはまだ確定していない。
姫路については、来年度以降は非テレビ用途が半分近くになる。従来通り、テレビ換算で何台という指標は役に立たない。現状、テレビセット換算で年間1,000万台近い能力がある。何割かは外販し、何割かは自社テレビに移すということだ。
Q:尼崎工場に関する兵庫県からの補助金について、兵庫県知事が返還を求めているという話があるが、これについてはどう考えるか。
A:兵庫県の知事から補助金の返還という話も聞いている。今後、交渉させてもらうことになると思う。
Q:テレビ事業縮小で売上が減ると思うが、全社的な売上規模の目標はどう変えていくのか。
A:売上10兆円、ROE10%という、いわゆる「グローバルエクセレントカンパニー」を目指すという考え自体は変わらない。ただし為替が変動しており、2012年度の経営目標は今後改めて発表したい。