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<IFA>セイコーエプソン・碓井社長 基調講演 − 「エプソンが“無くてはならない企業”になるために」

公開日 2012/09/01 09:02 Phile-web編集部:山本 敦
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IFA2012のオープニング・キーノートスピーチに、セイコーエプソン(株)代表取締役社長の碓井稔氏が登壇し、同社の独自技術の紹介と、ビジネス戦略をテーマにした基調講演を行った。


セイコーエプソン(株)代表取締役社長の碓井稔氏
スピーチのタイトルは「Becoming Indispensable in a Changing World(変化し続ける世界の中で、なくてはならない存在になるために)」。今日ますますデジタル化が進むエレクトロニクス市場において技術企業が直面する課題と、変化の中にあって企業が重視すべきコア・コンピタンスの在り方について、エプソンならではの取り組みを交えて紹介した。

セイコーエプソンは今年で創立70周年を迎えるが、同社はその歴史の中で常に、日本の伝統的な「匠」の精神に則って、専門知識と職人技術をもって独自の製品開発に取り組んできたと碓井氏は語る。顧客に喜びと驚きをもたらすことのできる製品をつくることを最終目標として、R&Dに始まり、製品の製造まで一貫したハイレベル・ハイクオリティな「物作り」に、エプソンはこだわり続けているという。

デジタル化が進み、エレクトロニクスに関連した技術が進化する一方で、かつては日本企業の職人技とも言えるオリジナリティあふれる技術やノウハウが、今では簡単に模倣できるようになってしまったと碓井氏は指摘。「匠」の伝統価値の存続が疑問視されつつある現在の環境において、「代表取締役社長としての私のミッションは、エプソンをお客様にとって“なくてはならない会社”にすることだ」と語る。


ハイクオリティ・ハイレベルな「物作り」にエプソンはこだわり続ける
インクジェットプリンター開発担当のエンジニアとして活躍してきた碓井氏は、今もなお同社のインクジェットプリンターの独自技術として進化を続けている「ドットマトリクス」を一例に挙げ、「独自技術を活かして市場のニーズを満たしてきたことで、エプソンは業界の中心的な存在としてその立場を不動のものとしてきた」とコメント。3LCDやQMEMSなど、エプソンの高いオリジナリティをもったコアテクノロジーが、同社のブランドステータスを支えてきたと説明した。

同社ではさらに、インクジェットプリンターやプロジェクター、電子デバイス、産業ロボットの各分野で事業を展開しているが、製造の難易度が高い「小型化・高性能化」という困難なアプローチに敢えて取り組むことで、他社が真似できない領域にまで、その技術力を高めてきたと碓井氏は振り返る。

例えばインクジェットプリンターであれば、本体を徹底して小型化することで、使用する材料や部品が少なくでき、デザインやハンドリングの面でも優位性が生まれると碓井氏は考えを述べた。さらにはエコフレンドリーという強い価値がそこに生まれる点についても指摘を加えた。碓井氏は「製品を小型化し、美しいものに進化させていくというコンセプトについて、私は今後もプリンターだけでなく、プロジェクターなど他の製品にも広げていきたいと考えている」とし、今後もデバイスの小型・軽量化を積極的に推し進めていく戦略を示した。

エプソンの強みはさらに「デジタルとアナログの世界を結びつける力」であると碓井氏は語る。その近年の成果の一つは、国内でも展開する“シースルーモバイルビューアー“Moverio”「BT-100」であるとした。本機が小型化・軽量化を極めたウェアラブル機器でありながら、シースルーレンズを採用して、映像を見ながら周囲の風景を確認できるというメリットを備えていることを碓井氏は強調しながら、「プロジェクターが大画面ホームシアターを変えてきたように、今後はBT-100のような価値を持った機器がユーザーのパーソナルエンターテインメントを変えていくだろう」と意気込む。

これらの独自の技術と柔軟な発想力により、碓井氏は「当社の強みである“匠”の技術に磨きをかけることで、短中期的な経済環境の変化に耐えうる会社にしていく」と宣言。エプソンという企業を、周囲にとって“真になくてはならない会社”としていくことが自身のミッションと語った。

シースルーモバイルビューアー“Moverio”「BT-100」の魅力を紹介

その使命を実現させるための重要な取り組みとして、碓井氏はR&D、商品企画開発の重要性を改めて指摘する。テクノロジーや製品は、手間暇をかけてでもゼロから一貫して自社で作り上げることで、本当のコア・コンピータンスになり得るとしながら、碓井氏は物作りの原点としての、同社の姿勢をアピールした。碓井氏は「他社が模倣できない独自技術を生みだし、練り上げながらコンシューマーの期待や想像を超える製品を実現していくこと」の重要性を述べる。物作り企業としての強い土壌を作り上げるため、同社では本社に「ものづくり塾」をオープンして、国内社員の研修制度を発足。全従業員にプリンターと時計の組み立て分解ができるようになるスキルを身につけさせることで、「匠」の企業理念を徹底して追求している。

またサプライチェーン全体を見直し、それぞれの場所特有の「強み」に集中することのメリットについても碓井氏は指摘。サプライチェーンの効率化を図ることで、顧客ニーズに正しく合致する商品が提供できたり、技能の継承が図れるというメリットが生まれてくるとした。そしてこれこそが将来、エプソンが“なくてはならない存在”であり続けるためのキーファクターであることを強調し、スピーチを結んだ。

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