車載用蓄電池のリユース、リサイクルを加速
EVのバッテリーを家庭用へ安全にリユース、「JETリユース電池認証」がスタート
電気製品等の試験・認証事業を行う一般財団法人電気安全環境研究所(JET)は、車載用蓄電池等をリユースし、家庭用および業務・産業用の定置用蓄電システム(BESS)に適用する際の安全性を確保することを目的とした「JETリユース電池認証」を2022年2月1日より開始した。
■車載用蓄電池の幅広い再利用が可能に
政府は2021年1月、乗用車の新車販売における電気自動車(EV)の割合を、2035年までに100%とすることを打ち出した。年明け早々にはトヨタが「バッテリーEV戦略に関する説明会」を開催し、全16車種にのぼる電気自動車を披露。豊田社長が「2030年にバッテリーEVのグローバル販売台数で年間350万台を目指す」と明言するなど、自動車メーカー各社がEVへの積極的なシフトを相次ぎ発表しており、今後の急速な市場拡大が予想されている。
これに伴い注目されるのが、EVの普及・拡大にあわせてニーズが高まることが想定される車載用リチウムイオン電池のリユース、リサイクルだ。JET 理事・技術部長・住谷淳吉氏は「車載用のリチウムイオン電池は、5〜10年使用すると蓄電容量が低下するため、交換が必要となります。そこからリユースされた製品は、高出力・高容量が求められる車載用として再び利用するには適しませんが、病院や自治体、企業やご家庭など、定置用蓄電システムとしてはまだ十分に使用することができます」と説明する。
しかし、これまで劣化した車載用電池等を再利用した定置用蓄電システムは、電力系統に連系させることが安全面から認められていなかった。この課題に対し、今回発表された「JETリユース電池認証」は、リユースする車載用電池等の安全性について検査・確認し、認証をすることで、電力系統に連系させることを可能としたもの。新品の蓄電池より価格も安く入手することができることから、「車載用をはじめとするリチウム電池等の再利用拡大に道が拓ける」と訴える。
■今このタイミングが重要な意味を持つ
「JETリユース電池認証」では、蓄電池をEVのような移動体用途から定置用蓄電システムなどの他の製品にリユースするために必要な安全確認を行い、適合した電池モジュール(リユース電池)にはJET リユース電池認証マークが付与される。
「JETリユース電池認証」を取得するには、 (1)すべてのリユース電池について、JET が指定した非破壊診断方法で劣化解析を行い、安全状態が維持された劣化基準以内でリユース電池の選別がなされていること (2)リユース電池が、定置用蓄電システムに要求される蓄電池の安全基準(JIS C 8715-2)に適合すること (3)電池単体が発火した場合でも他への類焼が起こらないことを確認するために、最も劣化基準に近いリユース電池がJIS の耐類焼試験に適合すること。以上3つの要件を満たすことが必要となる。
認証の要件を満たしたリユース電池には、未使用蓄電池の部品認証状況によって用意された、2つの「JETリユース電池認証マーク」のいずれかを付すことができる。リユース電池を利用して定置用蓄電システムを製造する事業者は、「JETリユース電池認証マーク」を確認することにより、リユース電池の安全確認が効率的に行えるようになる。
住谷氏は「定置用蓄電システムの系統連系保護装置等認証や製品安全認証(S-JET認証)には、電池がJIS C 8715-2を適用した部品認証品であることが必須となっている。JETリユース電池認証を取得していれば、未使用電池と同様に既存の認証制度で活用できる」と導入メリットを説明する。
もちろん、これから解決すべき課題も少なくない。「全数の識別をいかに安価に効率的な方法で行えるようにできるか。使用済み電池のリユース、リサイクルの研究や事業化に力を入れる自動車メーカーや電池メーカーの協力が必須」と住谷氏は指摘する。「まずはSDGsなどを背景に関心、需要が高まる企業用から始まり、次の段階では家庭用の定置用蓄電システムへと普及に弾みがつくのではないか」と展望を述べた。
これまで車載用とは異なっていた定置用蓄電システムに対する蓄電池の安全性について、「確認するためのスキームを、電気自動車の普及が本格化する前にきちんと整備することが大事。これからEVが普及し、車載用リチウム電池のリユースが本格化したとき、スムーズに進展させることができる」と導入のタイミングの重要性について訴える住谷氏。「今でも数多くの相談がわたしたちのもとに届いている。業界が一丸となってスキームを構築していくために、今、そのための本気度を示すことも重要」と力を込めた。
JETリユース電池認証の開始により、今後、普及が待たれるEVや、そこに搭載されたバッテリーの中古価値の高まりが後押しされ、将来に向けた流れを、より加速させることが期待される。
■車載用蓄電池の幅広い再利用が可能に
政府は2021年1月、乗用車の新車販売における電気自動車(EV)の割合を、2035年までに100%とすることを打ち出した。年明け早々にはトヨタが「バッテリーEV戦略に関する説明会」を開催し、全16車種にのぼる電気自動車を披露。豊田社長が「2030年にバッテリーEVのグローバル販売台数で年間350万台を目指す」と明言するなど、自動車メーカー各社がEVへの積極的なシフトを相次ぎ発表しており、今後の急速な市場拡大が予想されている。
これに伴い注目されるのが、EVの普及・拡大にあわせてニーズが高まることが想定される車載用リチウムイオン電池のリユース、リサイクルだ。JET 理事・技術部長・住谷淳吉氏は「車載用のリチウムイオン電池は、5〜10年使用すると蓄電容量が低下するため、交換が必要となります。そこからリユースされた製品は、高出力・高容量が求められる車載用として再び利用するには適しませんが、病院や自治体、企業やご家庭など、定置用蓄電システムとしてはまだ十分に使用することができます」と説明する。
しかし、これまで劣化した車載用電池等を再利用した定置用蓄電システムは、電力系統に連系させることが安全面から認められていなかった。この課題に対し、今回発表された「JETリユース電池認証」は、リユースする車載用電池等の安全性について検査・確認し、認証をすることで、電力系統に連系させることを可能としたもの。新品の蓄電池より価格も安く入手することができることから、「車載用をはじめとするリチウム電池等の再利用拡大に道が拓ける」と訴える。
■今このタイミングが重要な意味を持つ
「JETリユース電池認証」では、蓄電池をEVのような移動体用途から定置用蓄電システムなどの他の製品にリユースするために必要な安全確認を行い、適合した電池モジュール(リユース電池)にはJET リユース電池認証マークが付与される。
「JETリユース電池認証」を取得するには、 (1)すべてのリユース電池について、JET が指定した非破壊診断方法で劣化解析を行い、安全状態が維持された劣化基準以内でリユース電池の選別がなされていること (2)リユース電池が、定置用蓄電システムに要求される蓄電池の安全基準(JIS C 8715-2)に適合すること (3)電池単体が発火した場合でも他への類焼が起こらないことを確認するために、最も劣化基準に近いリユース電池がJIS の耐類焼試験に適合すること。以上3つの要件を満たすことが必要となる。
認証の要件を満たしたリユース電池には、未使用蓄電池の部品認証状況によって用意された、2つの「JETリユース電池認証マーク」のいずれかを付すことができる。リユース電池を利用して定置用蓄電システムを製造する事業者は、「JETリユース電池認証マーク」を確認することにより、リユース電池の安全確認が効率的に行えるようになる。
住谷氏は「定置用蓄電システムの系統連系保護装置等認証や製品安全認証(S-JET認証)には、電池がJIS C 8715-2を適用した部品認証品であることが必須となっている。JETリユース電池認証を取得していれば、未使用電池と同様に既存の認証制度で活用できる」と導入メリットを説明する。
もちろん、これから解決すべき課題も少なくない。「全数の識別をいかに安価に効率的な方法で行えるようにできるか。使用済み電池のリユース、リサイクルの研究や事業化に力を入れる自動車メーカーや電池メーカーの協力が必須」と住谷氏は指摘する。「まずはSDGsなどを背景に関心、需要が高まる企業用から始まり、次の段階では家庭用の定置用蓄電システムへと普及に弾みがつくのではないか」と展望を述べた。
これまで車載用とは異なっていた定置用蓄電システムに対する蓄電池の安全性について、「確認するためのスキームを、電気自動車の普及が本格化する前にきちんと整備することが大事。これからEVが普及し、車載用リチウム電池のリユースが本格化したとき、スムーズに進展させることができる」と導入のタイミングの重要性について訴える住谷氏。「今でも数多くの相談がわたしたちのもとに届いている。業界が一丸となってスキームを構築していくために、今、そのための本気度を示すことも重要」と力を込めた。
JETリユース電池認証の開始により、今後、普及が待たれるEVや、そこに搭載されたバッテリーの中古価値の高まりが後押しされ、将来に向けた流れを、より加速させることが期待される。