映像や照明制御信号もwavで記録
世界初「音声以外もwavで記録」システムを体験。ヤマハ「GPAP」でWONKライブにリモート参加
ヤマハは、ソウルバンド「WONK」のライブを、音声以外のデジタルデータもwav形式に統一して記録・再生できる世界初のシステム「GPAP」を用いて遠隔地で楽しめるようにする体験会を開催した。
「GPAP(ジーパップ/General Purpose Audio Protocol)」は、音声だけでなく照明や舞台装置の制御信号など、さまざまなデジタルデータをすべてwav形式に統一して保存・再生可能なシステム。本体験会の前日に開発発表が行われており、実際の活用事例がさっそく披露された格好だ。
通常、コンサートなどのイベントでは音楽や照明、舞台演出などそれぞれを別々の信号で処理した上で同期をとるというシステムが一般的。これに対しGPAPを利用した場合、複雑な同期処理を行うことなく容易にシンクロ再生することができる。加えて、すべてのデータをまとめて配信することも可能だ。
また、コルグが開発したハイレゾ対応の高音質インターネット動画配信システム「Live Extreme」と組み合わせることで、GPAPで記録したマルチメディアコンテンツの配信も可能。これにより、ヤマハが2020年に開発したライブビューイングシステム「Distance Viewing」のリアルタイム配信ができるようになる。
体験会では、ライブ会場現地とほぼ同様の照明をライブビューイング会場にも用意。GPAPと同時発表したパネル型スクリーンで組んだ幅7m×高さ4mのスクリーンに、エプソンの業務用4Kプロジェクター「EB-PU2216B」で現地ライブ会場のステージの模様を4K/30fps/60Mbpsの映像で投影し、48kHz/24bitのPCMで音声を流すというシステムが用意された。
そして上述のとおり、ライブ会場と体験会場間の信号伝送にはコルグのLive Extremeを活用。Live Extremeは映像に加えて最大8チャンネルの音声信号を伝送可能だが、今回はそのうちの1チャンネル分を照明制御信号の伝送に使い、残り7チャンネル分でバンドの演奏を始めとする現地ライブ会場の音を伝送した。
なお、GPAPのデータ伝送に際し、Live Extreme側で仕様変更などの特に何か特別な処理は行っていないとのこと。つまり、GPAPが発表されたばかりであるにも関わらず、その記録データを各地に届けるシステムがすでに存在していることになる。
実際にライブがスタートすると、現地でのステージに連動して体験会場の照明の色も同じタイミングで変わったり動いたりする。
現地と遠隔地で照明が同期するメリットを感じやすかったのが、曲間のMC(トーク)で会場が全体的に明るくなり、MC終わりで暗転、そして次の曲が始まって照明による演出が再開…といったシーン。現地と同じ演出をリアルタイムで体験できるというのは、臨場感や没入感を大きく向上させてくれる。ライブビューイング会場にラインアレイスピーカーが設置されて“ライブハウスの音”で楽しめたこともあり、非常に臨場感のある体験だった。
もしこれを人力でやろうとすると、ライブ会場とライブビューイング会場の両方に照明を始めとする各種スタッフを用意して、双方が綿密に連携する職人技が必要になるが、GPAPならそうした手間が不要になる。例えば何かの都合でステージ演出が急遽変更になった場合でも、現地からの信号をリアルタイムで処理できるGPAPなら、ライブビューイング会場側が慌てなくてもよい。こうした点も大きなメリットだろう。
ただ、この日の体験会場ではステージの一番奥にスクリーンが設置されたのに対して照明はステージ上やステージ前方に設置されたため、ライトによる演出と映像との奥行きのズレが個人的に少々気になる場面もあった。会場の前方に用意されていて記者席を離れ、会場後方に移動するとそうした違和感も気にならなくなったため、スクリーンからある程度距離をとったほうが良席になると言えるかもしれない。
また、映像と音声がほんの僅かながらズレているシーンもあったが、これはGPAP上の問題ではなく、プロジェクターやスピーカーなどハードウェアの処理に起因するものだろうとのこと。実際、その後はきちんと同期されていた。
WONKのメンバーも「4人が日本各地に散って(GPAPを使って演奏を同期させて)ライブする“WONKフランチャイズ化計画”を実行できる(笑)」(キーボード 江ア文武さん)など、GPAPを気に入った様子。
記者としても、発表直後でこれだけの質の高いライブビューイング体験を提供できるGPAPに大きな可能性を感じた。照明の数を減らすなどもっと簡易的なシステムにすれば、昨今増えているカラオケ店でのライブビューイングなどにも採用されるかもしれない。今後の展開にも注目したい。
■ヤマハが開発した世界初のシステム「GPAP」を利用したWONKのライブを記者が体験
「GPAP(ジーパップ/General Purpose Audio Protocol)」は、音声だけでなく照明や舞台装置の制御信号など、さまざまなデジタルデータをすべてwav形式に統一して保存・再生可能なシステム。本体験会の前日に開発発表が行われており、実際の活用事例がさっそく披露された格好だ。
通常、コンサートなどのイベントでは音楽や照明、舞台演出などそれぞれを別々の信号で処理した上で同期をとるというシステムが一般的。これに対しGPAPを利用した場合、複雑な同期処理を行うことなく容易にシンクロ再生することができる。加えて、すべてのデータをまとめて配信することも可能だ。
また、コルグが開発したハイレゾ対応の高音質インターネット動画配信システム「Live Extreme」と組み合わせることで、GPAPで記録したマルチメディアコンテンツの配信も可能。これにより、ヤマハが2020年に開発したライブビューイングシステム「Distance Viewing」のリアルタイム配信ができるようになる。
体験会では、ライブ会場現地とほぼ同様の照明をライブビューイング会場にも用意。GPAPと同時発表したパネル型スクリーンで組んだ幅7m×高さ4mのスクリーンに、エプソンの業務用4Kプロジェクター「EB-PU2216B」で現地ライブ会場のステージの模様を4K/30fps/60Mbpsの映像で投影し、48kHz/24bitのPCMで音声を流すというシステムが用意された。
そして上述のとおり、ライブ会場と体験会場間の信号伝送にはコルグのLive Extremeを活用。Live Extremeは映像に加えて最大8チャンネルの音声信号を伝送可能だが、今回はそのうちの1チャンネル分を照明制御信号の伝送に使い、残り7チャンネル分でバンドの演奏を始めとする現地ライブ会場の音を伝送した。
なお、GPAPのデータ伝送に際し、Live Extreme側で仕様変更などの特に何か特別な処理は行っていないとのこと。つまり、GPAPが発表されたばかりであるにも関わらず、その記録データを各地に届けるシステムがすでに存在していることになる。
■記者が感じたGPAPの魅力と課題
実際にライブがスタートすると、現地でのステージに連動して体験会場の照明の色も同じタイミングで変わったり動いたりする。
現地と遠隔地で照明が同期するメリットを感じやすかったのが、曲間のMC(トーク)で会場が全体的に明るくなり、MC終わりで暗転、そして次の曲が始まって照明による演出が再開…といったシーン。現地と同じ演出をリアルタイムで体験できるというのは、臨場感や没入感を大きく向上させてくれる。ライブビューイング会場にラインアレイスピーカーが設置されて“ライブハウスの音”で楽しめたこともあり、非常に臨場感のある体験だった。
もしこれを人力でやろうとすると、ライブ会場とライブビューイング会場の両方に照明を始めとする各種スタッフを用意して、双方が綿密に連携する職人技が必要になるが、GPAPならそうした手間が不要になる。例えば何かの都合でステージ演出が急遽変更になった場合でも、現地からの信号をリアルタイムで処理できるGPAPなら、ライブビューイング会場側が慌てなくてもよい。こうした点も大きなメリットだろう。
ただ、この日の体験会場ではステージの一番奥にスクリーンが設置されたのに対して照明はステージ上やステージ前方に設置されたため、ライトによる演出と映像との奥行きのズレが個人的に少々気になる場面もあった。会場の前方に用意されていて記者席を離れ、会場後方に移動するとそうした違和感も気にならなくなったため、スクリーンからある程度距離をとったほうが良席になると言えるかもしれない。
また、映像と音声がほんの僅かながらズレているシーンもあったが、これはGPAP上の問題ではなく、プロジェクターやスピーカーなどハードウェアの処理に起因するものだろうとのこと。実際、その後はきちんと同期されていた。
WONKのメンバーも「4人が日本各地に散って(GPAPを使って演奏を同期させて)ライブする“WONKフランチャイズ化計画”を実行できる(笑)」(キーボード 江ア文武さん)など、GPAPを気に入った様子。
記者としても、発表直後でこれだけの質の高いライブビューイング体験を提供できるGPAPに大きな可能性を感じた。照明の数を減らすなどもっと簡易的なシステムにすれば、昨今増えているカラオケ店でのライブビューイングなどにも採用されるかもしれない。今後の展開にも注目したい。