メーカー比較や新旧商品の違いをもっとわかりやすく
ビックカメラ有楽町店、賑わいを取り戻したカメラ市場。変化するトレンドを捉えて売り場も進化
■Vlogなど動画を契機に20代・30代のカメラ需要が顕在化
デジタルカメラが活発な動きを見せている。ビックカメラ有楽町店でも「コロナ禍では外出やイベントが敬遠されるなど低迷しましたが、この1年で急速にお客様が戻ってきています」(カメラコーナー・乙川和矢氏)と売り場が賑わいを見せている。
一時は懸念材料となっていた商品の供給不足も、「人気を集めた新製品が需要に追いつかない、また、急速に回復したインバウンドによる影響も見られますが、以前のような半年待ちといった例はほとんど見られず、長くても2ヶ月・3ヶ月待ちまでです」と着実に解消に向かっている。
勢いを取り戻すと同時に、市場トレンドには変化が見受けられるという。「極端なものとは言えないのですが、お客様の動向を見ていると “小型カメラ”と“フルサイズカメラ”への二極化が進んでいます」と指摘する。
小型カメラ需要を牽引するのは、Vlogをはじめ自己表現の手段として初めてカメラを持つ20代・30代の若年層。「Vlog向けを謳ったカメラもいろいろ出ていますが、初めて手にすることもあり、予算を含めてやはり大きいものには抵抗感もあるようで、小さなカメラが人気を集めています」。
同店で今、圧倒的な支持を得ているモデルがDJI「Osmo Pocket 3」。「若い人たちが求めているのは、まず簡単に扱えること。従来のカメラはいろいろ設定しないと使えないのではないかと、ハードルが高いイメージを持たれています。それを覆すことができるスマホのようにタッチ操作で使えるものが人気を集めています。若い人には縁遠い存在だと感じられていたカメラとの距離感は確実に縮まってきています」とスマホと差別化された新しいカメラのニーズが顕在化していると注目する。
インバウンドでも人気が高い、チェキシリーズ初の“撮影”に特化した手のひらサイズのカメラ「INSTAX Pal」、「動画を、かるがるキレイに。きっと毎日撮りたくなる」と謳うキヤノンのVlogカメラ「PowerShot V10」なども注目度が高いという。
店頭ではお客様が気兼ねなく、カメラを実際に手に触れて確認していただけるように、明るく親しみやすい雰囲気づくりで “見えない壁” を取り払う。関心を寄せて足を運んでいただいたお客様に「カメラが簡単に操作できることを、わかりやすく説明しています。やはり、実際に手に取って操作いただくことではじめてわかることも少なくありません。購入につながるケースも多く見受けられます」と新しい流れを引き寄せる。
■多様化する用途がカメラ市場を盛り上げる
もう一方のフルサイズカメラでは、その中にも2つのトレンドが見受けられると注目する。ひとつは小型・軽量のモデルが増えていること。「“フルサイズ=重い”というイメージが希薄になることで、従来のハイアマチュア向けといった枠組みが取り払われ、皆が手の届く商品になりました。初めてのカメラをフルサイズでという方もいらっしゃいます」。
各社ラインナップにおいてもバリエーションが膨らむが、「なかでも強いのがソニーですね」と、同社の小型フルサイズミラーレス「α7C」シリーズの第2世代モデルとして10月13日に発売された新製品「α7C II」「α7CR」が鋭い立ち上がりを見せ、店頭でも大きくアピールする。
もうひとつは、こちらも現在大ヒットしているニコンの新製品「Z f」に象徴される、従来のカメラファンから根強い支持を集める趣味のカメラの流れ。乙川氏は「前者の小型・軽量は、写真や動画という “結果” を簡単に手に入れたいというニーズに応えるもの。それに対して後者は、撮影そのものを楽しむ “過程” に重きが置かれていて、所有する喜びも大きなウエイトを占めています」と2つのトレンドを説明してくれた。
「いろいろな方向性が表れ、それに応えるいろいろなモデルが出てくるのは大変喜ばしいことです。裾野も拡がりますし、市場も盛り上がります」と今後のさらなる盛り上がりを予感し、大きな期待を寄せている。
カメラのミラーレス化が進み、各社の交換レンズもラインナップが充実する。「交換レンズの数が少ないことから買い替えを躊躇していた一眼レフのユーザーが、ここに来て急速にミラーレスへシフトしています。小型で軽量な望遠レンズなどミラーレスだからこそ実現できたレンズも数多く登場し、需要に拍車をかけています」と活発な動きを見せている。
■メーカー比較や新旧商品の違いをもっとわかりやすく
こうした変化を受け止め、売り場も進化している。「お客様から聞かれることが多い、最も気にされているポイントのひとつが、新旧モデルがどう違うのか、どこがどう進化しているのかということです」。このポイントに改めて着目し、よりわかりやすく違いが比較できるように工夫を凝らしている。
新製品だけを前面に出してアピールするのではなく、あえて旧モデルも並べて展示。スペックの比較表も用意して、実際に比較対象となるモデルを手に取りながら、違いを確認することができるようにした。「お客様がどこを重視し、そこがどう進化したのか。価格差に対する判断基準がよりわかりやすくなったと好評です」と語る。
また、これまで当たり前とされていたメーカーごとの売り場がカメラに詳しい人を基準にしたものだったとして、新しい流れが顕在化してくるなか、「あなたに合った納得の一台が見つかる!ビックカメラ専門販売員によるメーカー別比較!」と訴えたコーナーを新設した。
メーカーの垣根を越え、ソニー、キヤノン、ニコン、フジフイルム、パナソニック、OMシステムズの6つのブランドから、エントリーモデルとミドルクラスのモデルを横並びにして展示することで、一度に比較できるようにした。ミドルクラスのモデルには、通常よく見受けられるキットレンズではなく、35mmのレンズを統一して装着している。
コーナー内では交換レンズも「できるだけ多くのものを手軽に試すことができるように配慮して品揃えしています。ぜひ、レンズによる違いも確認してほしいですね」とアピールする。
「確実に需要が戻ってきています」と活気が戻るフロアに笑顔をのぞかせる乙川氏。各社から次々に発表される新製品も話題を集め、市場が盛り上がりを見せるなか、「店頭に立つ販売員それぞれがさらに知識を深めて、お客様に最適な納得する一台をご案内できるよう、売り場を含めてさらに進化していきます。どうぞご期待ください」と意気込みを示した。