5月4日に20の新作も追加
アップルの定額ゲームサービス「Apple Arcade」、開発者からみた魅力とは
今月4日、アップルが提供するゲームのサブスクリプションサービス「Apple Arcade」に、新しく20の新作ゲームが追加された。これによって200以上のゲームタイトルを楽しむことができるようになった。
2019年にスタートしたApple Arcadeだが、サービス開始からラインナップを順調に拡充している。当初は約100本でスタートし、その後2021年には『FANTASIAN』『太鼓の達人 PopTapBeat!』『NBA 2K23 Arcade Edition』などの注目タイトルも多くリリースされた。
日本の開発者によるゲームも増えてきており、当初はラインナップのうち7本だったところ、昨年時点で24本にまで増えてきた。もちろん、今回追加された20本のゲームの中にも日本の開発者によるものが含まれている。
そんなApple Arcadeのゲームラインナップだが、今回は日本の開発者の方々に話を伺う機会を得られた。『Time Locker+』『PPKP+』『ソリティ馬 Ride On! 』という3つのゲームについて、それぞれ裏話や、開発者目線から見たApple Arcadeで配信するメリットなどをお伝えしたい。
『Time Locker+』は、プレイヤーキャラクターを動かすことで時間が動くという、見下ろし視点のシューティングゲームだ。急いで動かせば敵の動きが早くなり、逆に何も操作しないと敵の動きを止めることもできる。
すでに6年くらい前にリリースされたタイトルであり、開発自体も終了しているとのこと。そんな中でApple Arcade版をリリースした理由について、個人で開発しているSotaro Otsuka氏は「より純粋にプレイしてもらえる」ことを挙げた。
基本無料のゲームで収益化をしようとすると、無理やり壁を作って課金するようにしたり、広告をユーザーに見てもらうようにしたりする必要がある。オリジナル版の『Time Locker』ではそれらを強制的させないようにしたとのことだが、サブスクリプション形式のApple Arcadeであれば、ユーザーはゲーム内課金や広告といったことを気にせずに楽しめる。
またOtsuka氏は、Apple Arcade版を開発するにあたり、「新旧どちらのユーザーにも喜んでもらえる」ことを意識したという。単に課金や広告の要素を除外するだけでは、これまでのファンから興味を持ってもらえない、と考えたとのことだ。
この解決策として、敵の追加だけでなく、大きな要素としてステージ進行の難易度曲線を変更。従来はアーケードゲームのようにストレートに難易度が上がっていたところ、指数関数的な上がり方に変えた。これにより、初心者は序盤の難易度の上がり方が緩やかになり、逆に慣れたユーザーは一気に難易度が上がる楽しさを得られるようになったという。これらの取り組みが功を奏し、多くのユーザーから高評価を得ているとした。
『PPKP+』は、ドット絵のキャラクターを操作して敵を倒していくことで、モンスターに襲撃された街を復興していくというゲーム。復興を進めていくことで必殺技などの要素が解禁されたり、レベルを上げていくことでキャラクターを強化したりもできる。
こちらのゲームも個人で作られたもので、Shimada Toshihiro氏が一人で開発している。そして同氏よると、Apple Arcadeで配信することは、個人開発者からみて「発信力」の点で恩恵が大きいとのこと。より多くのユーザーが一気にダウンロードして遊んでくれるそうだ。
本ゲームも以前からApp Storeで配信されてきたものだが、前述のTime Locker+と同じように、Apple Arcadeに合わせて多くの変更が行われている。たとえば倒した時に敵が爆発するアニメーションを変更することで “気持ちよさ” を高めたほか、コインの色味も変えている。トップのセーブ画面の背景をタップすることで遊べるなど、細かな隠し要素も多く盛り込んだ。
また、Apple Arcadeのレギュレーションに合わせるため、色覚多様性の調整も行った。ゲームの要素として「敵の目が青く光ったときに倒すとコインを獲得できる」というものがあるのだが、この青く光った際の見え方が、人によっては白く飛んで分かりにくかったという。後述のタイトルでも触れるが、Apple Arcadeでは主要な言語をカバーしている必要もあるなど、多くの人が楽しめるように意識されているのは、ユーザーからすると嬉しいポイントだろう。
最後にご紹介するのが、ソリティアと競馬を合わせた『ソリティ馬 Ride On!』。こちらは『ポケットモンスター』シリーズで知られるゲームフリークによるタイトルだ。
ソリティ馬というタイトルは、もともとNintendo 3DSのダウンロード用ソフトとしてリリースし、日本ゲーム大賞で特別賞に選ばれるなど評価の高いタイトルだった。しかし、翌2014年にスマホアプリ版をリリースしたものの、1年でサービス終了した過去があるという。“基本無料” で課金を前提に運営していくノウハウが足らなかったとのことだ。
そういった経緯もあり、本作のディレクターを務めた田谷正夫氏によると、Apple Arcadeは「コンシューマーの売り切りのような状態で楽しんで頂ける」という点で、非常に魅力的なサービスだったという。配信後は作品への反響も大きく、発表当日にTwitterのトレンド入りを果たし、その後Apple Arcadeのランキングで一位を獲得した。
すでに配信数は、リリースから半年を待たずに3DS版を超えたとのこと。ユーザーからの意見や指摘を取り込むかたちで、バランス改善や不具合の解消、そして新しい「おウマさん」の追加など、しばらく継続的にアップデートも行っていくそうだ。
先に触れたが、Apple Arcadeのレギュレーションに対応するため、本作もリリース時点から日本語と英語だけでなくヨーロッパの主要な言語もサポートし、現在は十数言語にまで対応を広げている。
Apple Arcadeはユーザーから見ると「定額でゲームを遊べる」サービスだが、開発者からみても魅力的なサービスのようだ。実際、田谷氏は説明の中で「自分の作ったゲームが世界中のユーザーに手にとって遊んで頂けていることが、単純に幸せなこと。Apple Arcadeに挑戦してよかった」と語っていた。Apple ArcadeのゲームはiPhone、iPad、Mac、Apple TVでプレイできるので、端末を持っている方は試してみてはいかがだろうか。
2019年にスタートしたApple Arcadeだが、サービス開始からラインナップを順調に拡充している。当初は約100本でスタートし、その後2021年には『FANTASIAN』『太鼓の達人 PopTapBeat!』『NBA 2K23 Arcade Edition』などの注目タイトルも多くリリースされた。
日本の開発者によるゲームも増えてきており、当初はラインナップのうち7本だったところ、昨年時点で24本にまで増えてきた。もちろん、今回追加された20本のゲームの中にも日本の開発者によるものが含まれている。
そんなApple Arcadeのゲームラインナップだが、今回は日本の開発者の方々に話を伺う機会を得られた。『Time Locker+』『PPKP+』『ソリティ馬 Ride On! 』という3つのゲームについて、それぞれ裏話や、開発者目線から見たApple Arcadeで配信するメリットなどをお伝えしたい。
■Time Locker+
『Time Locker+』は、プレイヤーキャラクターを動かすことで時間が動くという、見下ろし視点のシューティングゲームだ。急いで動かせば敵の動きが早くなり、逆に何も操作しないと敵の動きを止めることもできる。
すでに6年くらい前にリリースされたタイトルであり、開発自体も終了しているとのこと。そんな中でApple Arcade版をリリースした理由について、個人で開発しているSotaro Otsuka氏は「より純粋にプレイしてもらえる」ことを挙げた。
基本無料のゲームで収益化をしようとすると、無理やり壁を作って課金するようにしたり、広告をユーザーに見てもらうようにしたりする必要がある。オリジナル版の『Time Locker』ではそれらを強制的させないようにしたとのことだが、サブスクリプション形式のApple Arcadeであれば、ユーザーはゲーム内課金や広告といったことを気にせずに楽しめる。
またOtsuka氏は、Apple Arcade版を開発するにあたり、「新旧どちらのユーザーにも喜んでもらえる」ことを意識したという。単に課金や広告の要素を除外するだけでは、これまでのファンから興味を持ってもらえない、と考えたとのことだ。
この解決策として、敵の追加だけでなく、大きな要素としてステージ進行の難易度曲線を変更。従来はアーケードゲームのようにストレートに難易度が上がっていたところ、指数関数的な上がり方に変えた。これにより、初心者は序盤の難易度の上がり方が緩やかになり、逆に慣れたユーザーは一気に難易度が上がる楽しさを得られるようになったという。これらの取り組みが功を奏し、多くのユーザーから高評価を得ているとした。
■PPKP+
『PPKP+』は、ドット絵のキャラクターを操作して敵を倒していくことで、モンスターに襲撃された街を復興していくというゲーム。復興を進めていくことで必殺技などの要素が解禁されたり、レベルを上げていくことでキャラクターを強化したりもできる。
こちらのゲームも個人で作られたもので、Shimada Toshihiro氏が一人で開発している。そして同氏よると、Apple Arcadeで配信することは、個人開発者からみて「発信力」の点で恩恵が大きいとのこと。より多くのユーザーが一気にダウンロードして遊んでくれるそうだ。
本ゲームも以前からApp Storeで配信されてきたものだが、前述のTime Locker+と同じように、Apple Arcadeに合わせて多くの変更が行われている。たとえば倒した時に敵が爆発するアニメーションを変更することで “気持ちよさ” を高めたほか、コインの色味も変えている。トップのセーブ画面の背景をタップすることで遊べるなど、細かな隠し要素も多く盛り込んだ。
また、Apple Arcadeのレギュレーションに合わせるため、色覚多様性の調整も行った。ゲームの要素として「敵の目が青く光ったときに倒すとコインを獲得できる」というものがあるのだが、この青く光った際の見え方が、人によっては白く飛んで分かりにくかったという。後述のタイトルでも触れるが、Apple Arcadeでは主要な言語をカバーしている必要もあるなど、多くの人が楽しめるように意識されているのは、ユーザーからすると嬉しいポイントだろう。
■ソリティ馬 Ride On!
最後にご紹介するのが、ソリティアと競馬を合わせた『ソリティ馬 Ride On!』。こちらは『ポケットモンスター』シリーズで知られるゲームフリークによるタイトルだ。
ソリティ馬というタイトルは、もともとNintendo 3DSのダウンロード用ソフトとしてリリースし、日本ゲーム大賞で特別賞に選ばれるなど評価の高いタイトルだった。しかし、翌2014年にスマホアプリ版をリリースしたものの、1年でサービス終了した過去があるという。“基本無料” で課金を前提に運営していくノウハウが足らなかったとのことだ。
そういった経緯もあり、本作のディレクターを務めた田谷正夫氏によると、Apple Arcadeは「コンシューマーの売り切りのような状態で楽しんで頂ける」という点で、非常に魅力的なサービスだったという。配信後は作品への反響も大きく、発表当日にTwitterのトレンド入りを果たし、その後Apple Arcadeのランキングで一位を獲得した。
すでに配信数は、リリースから半年を待たずに3DS版を超えたとのこと。ユーザーからの意見や指摘を取り込むかたちで、バランス改善や不具合の解消、そして新しい「おウマさん」の追加など、しばらく継続的にアップデートも行っていくそうだ。
先に触れたが、Apple Arcadeのレギュレーションに対応するため、本作もリリース時点から日本語と英語だけでなくヨーロッパの主要な言語もサポートし、現在は十数言語にまで対応を広げている。
Apple Arcadeはユーザーから見ると「定額でゲームを遊べる」サービスだが、開発者からみても魅力的なサービスのようだ。実際、田谷氏は説明の中で「自分の作ったゲームが世界中のユーザーに手にとって遊んで頂けていることが、単純に幸せなこと。Apple Arcadeに挑戦してよかった」と語っていた。Apple ArcadeのゲームはiPhone、iPad、Mac、Apple TVでプレイできるので、端末を持っている方は試してみてはいかがだろうか。