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【動画付】新製品・速攻レビュー

フィリップスのカナル型イヤホン「SHE9900」を高橋敦氏が聴く − ハイエンドモデルのサウンド&ハンドリングを徹底チェック

公開日 2010/11/15 11:15 レビュー/高橋 敦
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フィリップスから登場する、カナル型イヤホンのラインナップ最上位モデル「SHE9900」を高橋敦氏が速攻レビュー。そのサウンドと、新機構「フレックスインイヤー」の採用による快適な装着感など、ハンドリングの結果を詳しく紹介しよう。

◇ ◇ ◇



PHILIPSのカナル型イヤホンのラインナップに新しいフラグシップモデルとして加わった「SHE9900」
ヨーロッパを代表するエレクトロニクスブランド“Philips”の技術を結集したハイエンド・イヤホンが登場

フィリップスは欧州最大規模の家電総合メーカーだ。生活家電だけではなく、オーディオ・ビジュアルの分野においても、欧州市場を牽引する存在である。イヤホンにおいても、同社は全ての価格帯のモデルで、十分な満足感を与えてくれる音を実現している。音調も帯域バランスも実に最適に整えられており、本当に癖が少ない。良質かつ広範なラインナップのイヤホンを揃えている。

そのフィリップスが同社のトップエンドとして投入するのが、本機SHE9900である。従来のトップエンドSHE9850/9750(こちらも継続販売)と同様に、バランスド・アーマチュア形式のドライバーユニットを搭載している。型番の数字の差こそ小さいが、マイナーアップデートではない。装着感と音質をまとめて向上させるユニークな新機構「フレックスインイヤー」が導入されているのだ。

バランスドアーマチュア方式を採用し、高音質再生を狙った

ヘッドホンの先端部が360度回転する「FlexInear(フレックスインイヤー)」機構を採用

フレックスインイヤーとは、耳の穴に挿入するノズル部分を、360度自在に稼働するようにした機構だ。男の子向けに例を挙げるとすれば、「ガンプラのボールジョイントのように」あるいは「プレステのアナログスティックのように」、ぐりぐりと動く。外殻がクリア素材なので、その内部の動きも観察できる。

【動画レポート】“フレックスインイヤー”の柔軟な動作を体験



フィリップスは従来モデルでも、ノズルに微妙な角度を設定することで装着感の向上を図っており、実際に効果は高かった。しかし今回はそれをさらに上回り、気持ちいいくらいにフィットする。普通の装着方法でもピタリとフィットするし、ケーブルを耳の上に引っ掛ける装着方法を試してみても、やはりフィットする。この対応範囲の広さは驚異的だ。

ちなみに後者の、いわゆるモニタースタイルで装着すると、ケーブルが目立たず、またケーブルのタッチノイズを低減できる。


ケーブルを耳の上に引っ掛ける“ループ掛け”スタイルにも対応



通常の装着スタイルでも心地よいフィット感が得られる
しっかりフィットするということは、不快感や違和感がなく耳に優しいというだけではなく、音質面でも有利だ。イヤホンが耳にピタリとハマることで外の騒音はカットされ、また特に低域の届き方がぐっと改善される。

その他にも、ケーブルの付け根を覆う部分に適度な柔軟性を持つ素材を採用している。低反発素材イヤーピースの代名詞コンプライを標準付属するなど、使い勝手や装着感などにはやはり、特に気をつかっているようだ。どんな音の良いイヤホンでもそういったところがおろそかでは、毎日使う気にはならない。本機はユーザーの使い勝手についてもよく気を配ってくれている。

コード長はY型・1.2m

プラグ部は金メッキを施している


どんなジャンルの音楽にも良好なバランスを持ったサウンドが特徴的

それでは本機のサウンドをチェックしていこう。まずはJacintha「Lush Life」から試聴を開始。モニタースタイルでの装着の方が中低域に優位性があったので、そちらで試聴した。装着方法やイヤーピースの選択は音に大きな影響があるので、色々と試してみた方がよい。

BA型シングル構成だが、中低域も充実。ウッドベースは、濃い重さまでは出せないが、確かな音程感と適度な空気感、そして心地よく弾む感触が秀逸。そして演奏の機微、例えばシンバルのタッチによる音色変化なども実によく伝えてくる。このあたりはBA型の本領発揮だ。

女性ボーカルの肉付きはさほど強調せず、すっとした立ち姿。ねっとりとした歌い回しの湿度感もほどほどに抑え、歌声も音場全体もさっぱりとした描写が持ち味と言える。

本製品のパッケージ

3サイズのシリコン製イヤーチップにComplyフォームチップ、キャリングケース、ケーブルクリップが付属する

続けてJimi Hendrix「Valleys Of Neptune」。ギターのファズは芯の通った硬質感と粒の適度な粗さ、倍音の豊富さを兼ね備え、理想的な音色だ。

ベースの引き締められた音像と腰の強さ、ドラムスのソリッドな抜けと響きも素晴らしい。シンバルの機微には、こちらでもやはり耳を向かされる。リズムセクションはロック的な音圧や迫力を出しながらも、細やかなファンクの要素も強く引き出されるといった感触だ。

Hilary Hahn「Bach: Violin Concertos」については、もうどこが良いのかを挙げるのが難しいほど、完璧に近い。弦の切れ込みの耳障りではない鋭さ、中低域の弦のスタッカートの歯切れの良さが、曲と音場の構築美をぐっと引き上げており、実に見事だ。

それにしてもフレックスインイヤーは、奇をてらったギミックのようでいて、考え抜かれて実用的な仕組みだ。この装着感は店頭のデモ機などでぜひ体験してみてほしい。


【SHE9900 製品仕様】
●形式:バランスド・アーマチュア ●再生周波数帯域:20〜20kHz ●インピーダンス:16Ω(1kHz時) ●感度:102dB ●最大入力:10mW ●ケーブル:Y型、1.2m ●プラグ:3.5mm 金メッキ ●付属品:キャリングケース、イヤーキャップ 3サイズ/Complyフォーム、ケーブルクリップ ●質量:12g



【製品に関する問い合わせ先】
フィリップスP&A サポートセンター
MAIL/[email protected]


高橋 敦氏 プロフィール
埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退。大学中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Apple Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。

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