山之内正と鈴木裕がそれぞれの視点から迫る
エソテリック「マスターサウンドワークス」シリーズの魅力を徹底レビュー!
■Part.2 JBL 4365
小音量でも実在感の高い音像が並び音離れが素晴らしいのも特筆できる
続いてJBLのスピーカー、4365を聴く。JBLブランドの、現在のフラッグシップのユニットと言える1501FE、つまり15インチのウーファーユニットを搭載した大型3ウェイだ。4インチのコンプレッションドライバーもスピーカーユニット好きには堪らないフィーチャーだろう。このスピーカーを駆動する上で難しいのは93㏈(2・83V/1m)という高能率であり、アンプの残留ノイズに敏感に反応する中・高域のユニット構成だ。
鳴らし始めてみると、B&Wの時よりもボリュームの位置が半分くらいに下がっている。ボリュームを上げ下げして、各音量時における音の違いを探ったが、何らかのネガティヴさを見い出せなかった。つまり、かつての大出力のアンプだと小音量再生時には音の形があいまいになったり、生気のない鳴り方になったものだがA-02ではきっちり音場空間が出て、そこに実在感の高い音像が並ぶさまが美しい。その印象は山下達郎の打ち込みの音を聴いても、クラシックのアコースティックなソフトを聴いても変わらない。音像のフォーカスがよく、スピーカーからの音離れが素晴らしいのも特筆できる。
さらに音の分解能が高く、音量が上がっていっても飽和する感じにならない。さらに印象的だったのは、何度も試聴メモに書いてあるのだが、“音楽の運びの上手さ”という部分である。駆動力は高いのだが、力で押し切ろうとするのではなく、元のソフトに入っている音、元の音楽性をストレートに聴かせて、演奏の良さを楽しませてくれるのだ。
■試聴で分かったA-02の実力
マスター再生の成果が見事に結実していて優れたスピーカー対応力を証明してくれた
筆者はオーディオを「マイクで収録したものをスピーカーで鳴らすこと」と定義しているが、マスター(以前はアナログの磁気テープだったが、現在では音楽制作用のPCのハードディスクが多い)とは、オーディオにとっての究極の音源である。
A-02の開発途中には、レコーディングスタジオの現場でも試用されたということだが、現場でミュージシャンたちが演奏したばかりのものをマスターから再生するということは、もっとも厳しいテストだったのだろう。
その成果が見事に反映されたパワーアンプであることが明確に分かった。能率やインピーダンスが低めのスピーカーを十分に駆動し、逆に能率が高く、アンプの残留ノイズの問題が出てくる可能性を持ったスピーカーにも対応して見事な音を聴かせてくれたのだ。また、演奏のノリやミュージカリティといった部分にまで踏み込んで再生してくれた点も素晴らしかった。
【A-02はどのようなファンに薦められるのか?】 奏者の出している美音そのまま聴かせてくれ 多くのオーディオ好き、音楽好きに薦められるA-02だが、特に以下のようなスピーカーには適している。「大口径のウーファーを持っている」「小さめながら複数のウーファーユニットで構成されている」「能率、インピーダンスが低め」「残留ノイズの問題の可能性がある」「ぼんやりした音」etc… 音の方向性としては、トロミとか聴き心地の良さといったある種の演出で音をよくする方向性ではない。素晴らしい演奏を、ミュージシャンの出している味わいのある美音を、素晴らしい演奏のままに、味わい深い美音のままに聴かせてくれるアキュレートなパワーアンプだ。高い駆動力とミュージカリティが高い次元で成立している。 |
【製品に関する問い合わせ先】
エソテリック(株)
TEL/0570-000-701