画質と使い勝手を試す
JVCの業務用ビデオカメラ「GY-HM850」の進化点を会田肇がチェック
少し前まで業務用機の分野には、映像制作をする学生達も加わって一定の需要があった。しかし、最近はデジタル化による画質向上であえて業務用機を使わなくても不足なく対応できるようになってしまっている。となると、業務用機は本来の「稼ぐ」ことを第一とする、つまりプロ向けの立場をより明確にする必要が出てきている。今回テストする「GY-HM850」(関連ニュース)はそんな需要層に向けて誕生した本格的ショルダー型のフルHDビデオカメラと考えていいだろう。
ボディはこれまで販売されていたGY-HM750とほぼ共通のイメージだ。フィット感の高いショルダースタイルの本体は踏襲され、スイッチ類やカードスロットなどもほぼ同一の配置。少し見ただけでは違いを見つけるのが難しいほどだ。そんな中で大きな変更点となったのがセンサーで、CCDからCMOSへと切り替わった。センサーのスペックは、フルHDをカバーする1/3型220万画素を確保し、CMOSらしい高感度設計としたのが特徴となる。
組み合わせるレンズはバヨネットマウント(1/3型用)の20倍ズーム機能付きフジノンレンズ。このレンズには手ブレ補正はもちろん、AEやAF機能までも装備。しかも手ブレ補正機能まで備わっている。「業務用機でAF?手ブレ補正?」と思う人もいるかもしれないが、とくにAFはENGでも搭載が主流になりつつあり、業務用機である本機がAFを採用するのは今や当然の流れでもあるのだ。さらに、撮影して驚くのが近接撮影能力の高さ。マクロ撮影では被写体をドアップで楽に撮影できるし、その際に表現されるボケ方もとても美しい。ただ、センサーサイズが1/3型とそれほど大きくないので、背景を多少距離をおいて撮影する必要があるのは知っておきたい。
ビデオフォーマットは本機の大きな特徴でもある。新たに「H.264 XHQモード(H.264 50Mbps)」を搭載し、HD記録フォーマットはMPEG-2 Long GOPまたはAVCHD、MPEG-4 H.264から選べる。ファイルフォーマットは、MOV/MP4/MXF/MTSに対応した。ここでありがたいのは、家庭用機とも互換のある「AVCHD」に対応したことだろう。
これにより、家庭用で普及している動画との互換性が保てるようになった他、長時間撮影にも対応可能となった。ブライダルなど、長時間撮影を強いられる現場では重宝されるに違いない。しかもHM750から引き継いだ機能として、SDカードのデュアルスロットを装備。これを使って二つのカードでリレー記録することもできる。なかでも頼もしいのが常にバックアップを取りながらの撮影も可能となること。まさに失敗が許されない業務用として安心できる仕様と言っていいだろう。
別方式の記録を同時に行えることも見逃せない。たとえば、[A]カードで高ビットレートによるHD記録を行い、[B]カードでは「デュアル記録」として、よりビットレートの低いAVCHDファイルやSDファイル、Web用のPROXYファイルを同時に記録できるのだ。一般的に言えば、別方式のフォーマットで同時記録するのは処理能力として一定のパフォーマンスは欠かせない。まさにJVCが誇る「ファルコンブリッド」を2チップ搭載したことによる高度な処理能力があったからこそなのだ。
では、肝心の画質や使い勝手はどうか。画質はまさに強調感のない安定志向の映像だ。とくに家庭用は見た目の派手さを際立たせる傾向にあり、それに慣れていると発色や先鋭感で物足りなさを感じるかもしれない。しかし、色の発色や被写体のリアリティは極めて高く、捉えた映像を素の状態で記録保存する業務用機ならではの映像表現が感じられる。とくに別方式の記録を行っていても何ら画質に影響を与えていないのには改めてパフォーマンスの底力を感じないではいられない。また、ノイズの発生も極めて少ない。NDフィルターはOFFを含めて4段階あるが、このノイズの少なさから思う存分これを撮影に活かせるのは業務用機ならではの懐の深さを感じさせる。
使い勝手は、当たり前だが家庭用と比べると操作スイッチがあまりに多くて戸惑うのは必至だ。ただ、家庭用はメニューの中にそれらの機能を収めているのであって、それが一見してボタンの数が少ないように見えているだけ。業務用機はメニューで呼び出さなくてもすぐに操作できるよう、それらのスイッチが表に出ているだけなのだ。もちろん、家庭用にはない多くの操作スイッチがあることも確かなのだが、操作の基本を知っていればそれほど困るようなことはない。一応、操作メニューはGUIで従来よりも大幅な見直しが図られており、家庭用と比較すべきものではないが、従来よりも着実な進化が見られるのは見逃せないポイントになるだろう。
先に述べた手ブレ補正は、単に補正能力だけを見れば家庭用が上。ただ、家庭用の手ブレ補正が動作しているときは、左右にパンニングしたときにフワフワとした映像の揺れが発生しがち。それに対し、HM850に搭載している補正ではそれがほとんど目立たない。パンにした動きにリニアに追従することができるのだ。そもそもHM850はショルダー型ということでブレそのものが少ないわけで、あくまで“アシストする”レベルの機能と考える方が適切なのかもしれない。
さて、HM850が新搭載したもう一つの機能、それがHM650でも実現していた外付けネットワークデバイスを接続できるUSBホスト端子への対応だ。3G/4GモデムやWi-Fiデバイスが対象で、カメラの各種パラメーターを遠隔操作できるwebサーバー機能も引き続き搭載した。HM850に新たに搭載されたのは、離れた場所から本機に外部アクセスし、本機内のデータをピックアップできるというもの。ライブストリーミングにも対応しており、遠隔地からのライブ配信に大きな力を発揮しそうだ。さらに、アメリカのソフトウェア開発メーカー「Zixi」との協業により、伝送時のドロップ対策を進め、ブロックノイズや駒落ちといった現象を未然に防ぐことが可能になるという。
今回は短期間の取材でユニットが用意できなかったため、試すことができなかったが、家庭用で普及が著しいネットワーク機能が業務用として使い方で活かされるようになったわけだ。基本的な撮影能力を高めた上で、先進のネットワーク機能にも対応することで、ブライダルからENGまで幅広い分野で活躍できるハイパフォーマンス機と言えるだろう。
ボディはこれまで販売されていたGY-HM750とほぼ共通のイメージだ。フィット感の高いショルダースタイルの本体は踏襲され、スイッチ類やカードスロットなどもほぼ同一の配置。少し見ただけでは違いを見つけるのが難しいほどだ。そんな中で大きな変更点となったのがセンサーで、CCDからCMOSへと切り替わった。センサーのスペックは、フルHDをカバーする1/3型220万画素を確保し、CMOSらしい高感度設計としたのが特徴となる。
組み合わせるレンズはバヨネットマウント(1/3型用)の20倍ズーム機能付きフジノンレンズ。このレンズには手ブレ補正はもちろん、AEやAF機能までも装備。しかも手ブレ補正機能まで備わっている。「業務用機でAF?手ブレ補正?」と思う人もいるかもしれないが、とくにAFはENGでも搭載が主流になりつつあり、業務用機である本機がAFを採用するのは今や当然の流れでもあるのだ。さらに、撮影して驚くのが近接撮影能力の高さ。マクロ撮影では被写体をドアップで楽に撮影できるし、その際に表現されるボケ方もとても美しい。ただ、センサーサイズが1/3型とそれほど大きくないので、背景を多少距離をおいて撮影する必要があるのは知っておきたい。
ビデオフォーマットは本機の大きな特徴でもある。新たに「H.264 XHQモード(H.264 50Mbps)」を搭載し、HD記録フォーマットはMPEG-2 Long GOPまたはAVCHD、MPEG-4 H.264から選べる。ファイルフォーマットは、MOV/MP4/MXF/MTSに対応した。ここでありがたいのは、家庭用機とも互換のある「AVCHD」に対応したことだろう。
これにより、家庭用で普及している動画との互換性が保てるようになった他、長時間撮影にも対応可能となった。ブライダルなど、長時間撮影を強いられる現場では重宝されるに違いない。しかもHM750から引き継いだ機能として、SDカードのデュアルスロットを装備。これを使って二つのカードでリレー記録することもできる。なかでも頼もしいのが常にバックアップを取りながらの撮影も可能となること。まさに失敗が許されない業務用として安心できる仕様と言っていいだろう。
別方式の記録を同時に行えることも見逃せない。たとえば、[A]カードで高ビットレートによるHD記録を行い、[B]カードでは「デュアル記録」として、よりビットレートの低いAVCHDファイルやSDファイル、Web用のPROXYファイルを同時に記録できるのだ。一般的に言えば、別方式のフォーマットで同時記録するのは処理能力として一定のパフォーマンスは欠かせない。まさにJVCが誇る「ファルコンブリッド」を2チップ搭載したことによる高度な処理能力があったからこそなのだ。
では、肝心の画質や使い勝手はどうか。画質はまさに強調感のない安定志向の映像だ。とくに家庭用は見た目の派手さを際立たせる傾向にあり、それに慣れていると発色や先鋭感で物足りなさを感じるかもしれない。しかし、色の発色や被写体のリアリティは極めて高く、捉えた映像を素の状態で記録保存する業務用機ならではの映像表現が感じられる。とくに別方式の記録を行っていても何ら画質に影響を与えていないのには改めてパフォーマンスの底力を感じないではいられない。また、ノイズの発生も極めて少ない。NDフィルターはOFFを含めて4段階あるが、このノイズの少なさから思う存分これを撮影に活かせるのは業務用機ならではの懐の深さを感じさせる。
使い勝手は、当たり前だが家庭用と比べると操作スイッチがあまりに多くて戸惑うのは必至だ。ただ、家庭用はメニューの中にそれらの機能を収めているのであって、それが一見してボタンの数が少ないように見えているだけ。業務用機はメニューで呼び出さなくてもすぐに操作できるよう、それらのスイッチが表に出ているだけなのだ。もちろん、家庭用にはない多くの操作スイッチがあることも確かなのだが、操作の基本を知っていればそれほど困るようなことはない。一応、操作メニューはGUIで従来よりも大幅な見直しが図られており、家庭用と比較すべきものではないが、従来よりも着実な進化が見られるのは見逃せないポイントになるだろう。
先に述べた手ブレ補正は、単に補正能力だけを見れば家庭用が上。ただ、家庭用の手ブレ補正が動作しているときは、左右にパンニングしたときにフワフワとした映像の揺れが発生しがち。それに対し、HM850に搭載している補正ではそれがほとんど目立たない。パンにした動きにリニアに追従することができるのだ。そもそもHM850はショルダー型ということでブレそのものが少ないわけで、あくまで“アシストする”レベルの機能と考える方が適切なのかもしれない。
さて、HM850が新搭載したもう一つの機能、それがHM650でも実現していた外付けネットワークデバイスを接続できるUSBホスト端子への対応だ。3G/4GモデムやWi-Fiデバイスが対象で、カメラの各種パラメーターを遠隔操作できるwebサーバー機能も引き続き搭載した。HM850に新たに搭載されたのは、離れた場所から本機に外部アクセスし、本機内のデータをピックアップできるというもの。ライブストリーミングにも対応しており、遠隔地からのライブ配信に大きな力を発揮しそうだ。さらに、アメリカのソフトウェア開発メーカー「Zixi」との協業により、伝送時のドロップ対策を進め、ブロックノイズや駒落ちといった現象を未然に防ぐことが可能になるという。
今回は短期間の取材でユニットが用意できなかったため、試すことができなかったが、家庭用で普及が著しいネットワーク機能が業務用として使い方で活かされるようになったわけだ。基本的な撮影能力を高めた上で、先進のネットワーク機能にも対応することで、ブライダルからENGまで幅広い分野で活躍できるハイパフォーマンス機と言えるだろう。