歴代モデルから受け継いだものは大きい
新生テクニクスの音質を山之内 正がチェック ー かつての志向に現代的な鮮鋭感が加わった
このたび復活をアナウンスした名門オーディオブランド「Technics(テクニクス)」(関連ニュース)。こちらの記事では、50年の歴史のなかで同ブランドが培ってきたプレゼンスを紹介した。本稿では、気になるその音のインプレッションをお伝えしよう。
■“R1シリーズ”の再生音をチェック
リファレンスクラスの“R1シリーズ”の構成は、既存のオーディオ機器とは別物だ。プリアンプがファイル再生ベースのソースコンポーネントを兼ね、デジタル伝送された信号の音量調整は実質的にパワーアンプが担う。外見上は既存のシステムとよく似た構成だが、情報の欠落と劣化を避けるために、あえて導入した斬新なアプローチである。さらに、組み合わせるスピーカーに合わせて広範囲の周波数領域で位相特性を改善する手法「LAPC」も注目に値する。
ヴェールを脱いだばかりのR1シリーズの再生音を早速聴いてみた。DLNAとUSBメモリからの再生音を両方確認したが、両者はクオリティ感と音調がほぼ共通し、ともにフラットなレスポンスと膨大な情報量に特徴がある。
ハイレゾ音源ならではの音の鮮度や躍動感をどこまで再現しているかに注目して聴いてみると、まずはLAPCの効果と思われる立ち上がりの素直さと低音楽器の動きの良さに感心した。
低音の立ち上がりに遅れがないことはすぐに気付く特徴の一つだ。オーケストラを例に挙げると、低弦と高弦の動きがビシッと揃っている。ベルリンフィルのシューマン(交響曲第1番第1楽章)は、遠くまで音が一気に飛ぶ感触を正確に伝えてくれた。ベルリンフィルは音を出すタイミングを高精度に合わせることに強くこだわる奏者が集まっていて、この演奏にもその特徴がよく現れている。音程と速さが精密に揃うことでひとつひとつの音に強大なエネルギーが乗り、その結果、音が遠くに飛ぶのだ。近くでも聴いても遠くで聴いても演奏の力強さがダイレクトに伝わる雰囲気は、彼らの本拠地フィルハーモニーの響きにかなり近いと感じた。
SB-R1のウーファー構成がやや複雑なためもあるのか、コントラバスのA線の音域では響きが若干長めに残る傾向があるが、ブース内の特設試聴室という環境が影響していた可能性はある。
むしろ、同試聴室で鳴っていたSB-R1には低域の挙動に関する課題を補って余りあるメリットがあった。同軸ユニットと仮想同軸構成のミッドウーファーに由来する音像定位の正確さである。
パット・メセニーの「KIN」でパーカッションとベースの立ち上がりが正確に揃うのは前述のLAPCの効果だが、それに加えてサックスの楽器イメージが立体的かつピンポイントに決まるのが実に心地良い。シンバルの打点が空中にピタリと定まることと合わせ、タイトな空間で楽器が目の前に迫るような生々しい臨場感を味わうことができた。
■C700シリーズのサウンドをチェック
リファレンスシリーズはスペースに余裕のある専用リスニングルーム向けだが、プレミアムクラスの“C700シリーズ”はリビングの空間にもなじむサイズで、プレーヤーとアンプそれぞれに凝縮感がある。
デザインはリファレンスシリーズ以上に新しさを感じさせ、特にボリュームの一部がトップパネル上に盛り上がったSU-C700の造形はかなり目を引くし、アナログメーターとの対照にも新しさがある。
コンパクトなシステムながら、その再生音が作り出す空間は予想以上に広大で、特に低音はスピーカーに張り付かず、伸びやかに広がっていく。空間そのものが大きく感じるのは、ジッターを抑えることで微細情報を正確に再現し、奥行きや遠近感を正確に引き出しているためだろう。アンサンブルの息遣いや空気の動きをリアルに再現するのはLAPC技術の成果と思われるが、スピーカーのシンプルな構成も強みを発揮していると感じた。
SB-C700の同軸ユニット一発という潔い構成は、楽器イメージのリアリティを引き出すうえで、明らかにプラスに働いている。音像のまとまりの良さと自然な周波数バランスに加え、音の立ち上がりが低音から高音まできれいに揃っていることも特筆できる。リニアフェーズ思想や平面振動板へのこだわりはまさにテクニクス製スピーカーの伝統であり、アナログメーターを積むアンプほどではないものの、どことなくかつての製品を連想させるものがある。
■かつてのテクニクスから音の志向を受け継ぎつつ、新しいエッセンスも加わる
そして、これは2つのシリーズに共通することだが、音の志向という点でかつてのテクニクスから受け継いでいる部分は外見以上に大きいと思う。
もちろん、単なる旧製品への回帰ということではない。ハイレゾ音源ならではの鮮度と精度の高さが加わっているし、特にプレミアムシリーズの再生音はエモーショナルなアピールが強く、演奏者との近さを伝える。高音には若干硬質な部分が感じられたが、発売の時点では解消するだろう。
日本への導入は来年になりそうだが、発売が大いに楽しみである。なお、量産機レベルでなければ10月の「音展」でその片鱗に触れられる可能性もある。ぜひご注目いただきたい。
■“R1シリーズ”の再生音をチェック
リファレンスクラスの“R1シリーズ”の構成は、既存のオーディオ機器とは別物だ。プリアンプがファイル再生ベースのソースコンポーネントを兼ね、デジタル伝送された信号の音量調整は実質的にパワーアンプが担う。外見上は既存のシステムとよく似た構成だが、情報の欠落と劣化を避けるために、あえて導入した斬新なアプローチである。さらに、組み合わせるスピーカーに合わせて広範囲の周波数領域で位相特性を改善する手法「LAPC」も注目に値する。
ヴェールを脱いだばかりのR1シリーズの再生音を早速聴いてみた。DLNAとUSBメモリからの再生音を両方確認したが、両者はクオリティ感と音調がほぼ共通し、ともにフラットなレスポンスと膨大な情報量に特徴がある。
ハイレゾ音源ならではの音の鮮度や躍動感をどこまで再現しているかに注目して聴いてみると、まずはLAPCの効果と思われる立ち上がりの素直さと低音楽器の動きの良さに感心した。
低音の立ち上がりに遅れがないことはすぐに気付く特徴の一つだ。オーケストラを例に挙げると、低弦と高弦の動きがビシッと揃っている。ベルリンフィルのシューマン(交響曲第1番第1楽章)は、遠くまで音が一気に飛ぶ感触を正確に伝えてくれた。ベルリンフィルは音を出すタイミングを高精度に合わせることに強くこだわる奏者が集まっていて、この演奏にもその特徴がよく現れている。音程と速さが精密に揃うことでひとつひとつの音に強大なエネルギーが乗り、その結果、音が遠くに飛ぶのだ。近くでも聴いても遠くで聴いても演奏の力強さがダイレクトに伝わる雰囲気は、彼らの本拠地フィルハーモニーの響きにかなり近いと感じた。
SB-R1のウーファー構成がやや複雑なためもあるのか、コントラバスのA線の音域では響きが若干長めに残る傾向があるが、ブース内の特設試聴室という環境が影響していた可能性はある。
むしろ、同試聴室で鳴っていたSB-R1には低域の挙動に関する課題を補って余りあるメリットがあった。同軸ユニットと仮想同軸構成のミッドウーファーに由来する音像定位の正確さである。
パット・メセニーの「KIN」でパーカッションとベースの立ち上がりが正確に揃うのは前述のLAPCの効果だが、それに加えてサックスの楽器イメージが立体的かつピンポイントに決まるのが実に心地良い。シンバルの打点が空中にピタリと定まることと合わせ、タイトな空間で楽器が目の前に迫るような生々しい臨場感を味わうことができた。
■C700シリーズのサウンドをチェック
リファレンスシリーズはスペースに余裕のある専用リスニングルーム向けだが、プレミアムクラスの“C700シリーズ”はリビングの空間にもなじむサイズで、プレーヤーとアンプそれぞれに凝縮感がある。
デザインはリファレンスシリーズ以上に新しさを感じさせ、特にボリュームの一部がトップパネル上に盛り上がったSU-C700の造形はかなり目を引くし、アナログメーターとの対照にも新しさがある。
コンパクトなシステムながら、その再生音が作り出す空間は予想以上に広大で、特に低音はスピーカーに張り付かず、伸びやかに広がっていく。空間そのものが大きく感じるのは、ジッターを抑えることで微細情報を正確に再現し、奥行きや遠近感を正確に引き出しているためだろう。アンサンブルの息遣いや空気の動きをリアルに再現するのはLAPC技術の成果と思われるが、スピーカーのシンプルな構成も強みを発揮していると感じた。
SB-C700の同軸ユニット一発という潔い構成は、楽器イメージのリアリティを引き出すうえで、明らかにプラスに働いている。音像のまとまりの良さと自然な周波数バランスに加え、音の立ち上がりが低音から高音まできれいに揃っていることも特筆できる。リニアフェーズ思想や平面振動板へのこだわりはまさにテクニクス製スピーカーの伝統であり、アナログメーターを積むアンプほどではないものの、どことなくかつての製品を連想させるものがある。
■かつてのテクニクスから音の志向を受け継ぎつつ、新しいエッセンスも加わる
そして、これは2つのシリーズに共通することだが、音の志向という点でかつてのテクニクスから受け継いでいる部分は外見以上に大きいと思う。
もちろん、単なる旧製品への回帰ということではない。ハイレゾ音源ならではの鮮度と精度の高さが加わっているし、特にプレミアムシリーズの再生音はエモーショナルなアピールが強く、演奏者との近さを伝える。高音には若干硬質な部分が感じられたが、発売の時点では解消するだろう。
日本への導入は来年になりそうだが、発売が大いに楽しみである。なお、量産機レベルでなければ10月の「音展」でその片鱗に触れられる可能性もある。ぜひご注目いただきたい。