<山本敦のAV進化論 第28回>開発者訪問&試聴レビュー
ハイレゾ・ウォークマン 新旧ガチンコ対決!新「Aシリーズ」は「F880」を超えたか?
より多くの方にいい音を届けるというのがAシリーズのコンセプトなので、ハイレゾ音源だけでなく、リッピングしたCDや圧縮音源もいい音で楽しめることが大切な要素になる。だからAシリーズに高音質化技術の「DSEE HX」が搭載された意味は大きい。浦川氏も「圧縮音源をメインで聴いている方々にも、少しずつハイレゾの良さを感じていただくため、DSEE HXはぜひ搭載したかった」と語る。
Aシリーズに搭載されたDSEE HX機能は、非ハイレゾ音源を最大192kHz/24bit相当に高音質化するというもの。整数倍のアップサンプリングとビット拡張を行うが、例えば44.1kHz/24bitの音源を再生する際には176.4kHz/24bit相当にアップサンプリングする。他メーカーでも、非ハイレゾ音源を高音質化するための技術がトレンドになっており、スマートフォンなどに採用されるケースが広がっている。手持ちの音源を高音質化する技術は、ハイレゾ・リスニングの文化を定着させのに重要な役割を担っている。
DSEE HXの効果をCDリッピングのソースで試聴してみると、高域の情報量が増えて、ボーカルや弦楽器のタッチがより滑らかになる。ベースやドラムスの低域はよりタイトに引き締まって、演奏全体に厚みが増してくる印象だ。
ソニーおすすめのエフェクト機能が簡単に設定できる「ClearAudio+」機能も搭載した。先行モデルのZX1、F880と仕様が異なっているのは、ClearAudio+とDSEE HXの設定が別項目になっており、どちらか一方だけの排他利用になっている点だ。ハイレゾ音源の再生時にClearAudio+は適用できないが、ダウンサンプリングしてから音響効果を効かせることができる。
さらに、Bluetoothのワイヤレス再生がapt-Xの高音質コーデックに対応した。NFCによる対応機機同士でのワンタッチペアリングも行える。
なおZX1、F880シリーズではAndroid OSが搭載されていたが、AシリーズはLINUXベースの専用OSになっている。背景には「音楽専用機としてよりシンプルな操作を実現したい」という開発者の狙いがある。
また音づくりの面でも、ZX1とF880の当時と比べて開発環境に変化があったと上村氏は語る。