「ひと味違う上質な装着感」
「音楽の芯にある魅力を自然に引き出すイヤホン」 − POLK AUDIO「nue era」レビュー
アメリカ東部の都市・ボルチモアで1972年に産声を上げたPolk Audioは、創業者であるマット、ジョージ、サンディが立ち上げた「高品位なサウンドを、できるだけ多くの人に伝える」というコンセプトをベースに、アメリカのオーディオ史に名を残す製品を次々と世に送り出してきた。その思想を現代に受け継いだ、カナル型イヤホンのスタンダードモデルが「nue era」だ。
自然曲線を活かしたコンパクトなハウジングには5.5mm口径のダイナミック型ドライバーを搭載。不要な共振を抑えるために開発された“ダイナミック・バランス・テクノロジー”と呼ばれる素材技術に、高精度なチューニングを施したマイクロ振動版の成形技術を合わせて活かすことによって、音質を徹底的に磨き上げた。
オーバル型のハウジングは落ち着いたつや消しシルバーとし、表側の化粧パーツは一見するとブラック単色のように見えるが、手にとってよく見るとクリアシェルにゴールドのラメを散りばめたような、非常にスタイリッシュなカラーリングに仕上げられている。細身なブラックのケーブルと対称的なアクセントを加えることで、シンプルながらも個性的なデザインが様々な装いにマッチしそうだ。
イヤホン部はとても軽く作られているので、音楽に夢中になると耳に着けている感覚を忘れてしまうほど。長時間リスニング時の負担が少なく、他のイヤホンとはひと味違う上質な装着感が得られる。
スタンダードクラスのイヤホンにしては、本体に付属してくるイヤーチップの種類がバラエティに富んでいる。さらさらとした質感のシリコン製イヤーチップは、サイズがL/M/Sの3種類。鏡餅のかたちをしたトリプルフランジタイプのシリコン製イヤーピースも、サイズはLとSの2種類が付いてくる。イヤホン本体、耳穴に挿入する側であるノズル部分が若干太めにつくられているので、耳穴の小さなユーザーにとっては、先細のトリプルフランジイヤーピースを併用する機会も多くなるはず。このほかに筒型にドーム型と、形状が異なる2種類のフォーム素材のイヤーチップも同梱される。
イヤーチップをイヤホンノズルの先端に装着する形状としているため、イヤーチップの先が耳の奥まで挿入できるので、遮音性が高まるだけでなく音がダイレクトに伝わってくる感覚が強いイヤホンだ。
右側イヤホンから伸びるケーブルのインラインに、マイク付リモコンを搭載する。iOSデバイス対応の3ボタンリモコンと同じ操作ができる。Androidスマホ「Xperia Z2」につないで試してみたところ、中央ボタンのシングルクリックによる楽曲再生と一時停止は操作ができた。
プレーヤー側は金メッキ処理が施されたL字型の端子を採用。ソース機器のイヤホンジャックにしっかりと固定されるので、スマホやタブレットの本体を横向きに構えて動画を見たり、ゲームを楽しむ時にも安定したホールド感が得られるのも特徴だ。
■「どんなジャンルの音楽からも芯にある魅力を自然に引き出すことができる」
nue eraの音質についてはスマートフォンでの使用ケースが中心になることを想定して、今回はXperia Z2に直接つないで試聴した。
TOTOのライブアルバム「35周年アニヴァーサリー・ツアー〜ライブ・イン・ポーランド2013〜」から『Stop Loving You』では、全体的なバランスの良さが実感できた。ディティールの描き込みは思いのほか緻密であり、ライブアルバムの醍醐味であるオーディオエンスの手拍子や歓声など、空間表現を引き立たせる情報も無理なく引き出してくる。
ドラムスはハイハットやシンバルなど高域の楽器の階調感がスムーズで、テクスチャーも柔らかい。ボーカルは張り出し感が控えめであり、声のトーンもむやみに強調することがないので、非常にナチュラルに染み渡ってくるような感覚がある。高域の爽やかな抜け味も悪くない。
エレキギターの音はエッジがきちんと立っていて、スティーブ・ルカサーのクリエイティブな旋律の動きが忠実にトレースされる。低域が膨らみ過ぎて足取りが鈍ることがなく、アタックはタイトで軽快。エレキベースの音像も筋肉質で鮮度が高い。ただ、この曲を聴く限りでは通常のシリコンイヤーチップだとわずかに低域の肉付きが物足りなく感じたので、付属のフォームチップに交換してみたところ筆者の好む音にはまった。イヤーチップの付け替えにより、音がカスタマイズできる楽しさももこのイヤホンの愛すべきキャラクターのひとつだ。
松田聖子のアルバム「SQUALL」から『裸足の季節』では、低域にどっしりとした安定感があり、リズムセクションが刻む旋律の足並みがぴたりと揃っていて心地良い。ボーカルに少し緊張したような固さを感じるが、声質はとてもナチュラルでクセがなく、滑舌にキレがあって生命感がストレートに伝わっている。純潔な乙女らしさを見事に描いていると言えるのではないだろうか。試しにオーディオテクニカのポタアン「AT-PHA100」をつないで、ハイレゾ再生のサウンドを合わせて確認してみたところ、声に暖かみと透明感が加わって、艶やかさがけた違いに上がった。ストリングスやパーカッション、エレキギターなどバンドの楽器もより生っぽく歌うようになる。ハイレゾ再生の魅力や、接続するソース機器のキャラクターをありのまま素直に再現してくれるイヤホンだと言えるのではないだろうか。
どんなジャンルの音楽からも芯にある魅力を自然に引き出すことができるパフォーマンスを備えたイヤホン。使い込むほどに頼り甲斐を感じるはずだ。“いい音”をスタンダードな価格帯で実現した本機こそ、まさにPolk Audioの創業者が追い求めてきた理想型と呼べるのではないだろうか。
【SPEC】型式:インイヤー型 ドライバーユニット:ダイナミック型5.5mm インピーダンス:16Ω 音圧感度:101.2dB/mW 再生周波数帯域:10Hz〜14kHz プラグ:3.5mm 4極ミニプラグ ケーブル:110cm
自然曲線を活かしたコンパクトなハウジングには5.5mm口径のダイナミック型ドライバーを搭載。不要な共振を抑えるために開発された“ダイナミック・バランス・テクノロジー”と呼ばれる素材技術に、高精度なチューニングを施したマイクロ振動版の成形技術を合わせて活かすことによって、音質を徹底的に磨き上げた。
オーバル型のハウジングは落ち着いたつや消しシルバーとし、表側の化粧パーツは一見するとブラック単色のように見えるが、手にとってよく見るとクリアシェルにゴールドのラメを散りばめたような、非常にスタイリッシュなカラーリングに仕上げられている。細身なブラックのケーブルと対称的なアクセントを加えることで、シンプルながらも個性的なデザインが様々な装いにマッチしそうだ。
イヤホン部はとても軽く作られているので、音楽に夢中になると耳に着けている感覚を忘れてしまうほど。長時間リスニング時の負担が少なく、他のイヤホンとはひと味違う上質な装着感が得られる。
スタンダードクラスのイヤホンにしては、本体に付属してくるイヤーチップの種類がバラエティに富んでいる。さらさらとした質感のシリコン製イヤーチップは、サイズがL/M/Sの3種類。鏡餅のかたちをしたトリプルフランジタイプのシリコン製イヤーピースも、サイズはLとSの2種類が付いてくる。イヤホン本体、耳穴に挿入する側であるノズル部分が若干太めにつくられているので、耳穴の小さなユーザーにとっては、先細のトリプルフランジイヤーピースを併用する機会も多くなるはず。このほかに筒型にドーム型と、形状が異なる2種類のフォーム素材のイヤーチップも同梱される。
イヤーチップをイヤホンノズルの先端に装着する形状としているため、イヤーチップの先が耳の奥まで挿入できるので、遮音性が高まるだけでなく音がダイレクトに伝わってくる感覚が強いイヤホンだ。
右側イヤホンから伸びるケーブルのインラインに、マイク付リモコンを搭載する。iOSデバイス対応の3ボタンリモコンと同じ操作ができる。Androidスマホ「Xperia Z2」につないで試してみたところ、中央ボタンのシングルクリックによる楽曲再生と一時停止は操作ができた。
プレーヤー側は金メッキ処理が施されたL字型の端子を採用。ソース機器のイヤホンジャックにしっかりと固定されるので、スマホやタブレットの本体を横向きに構えて動画を見たり、ゲームを楽しむ時にも安定したホールド感が得られるのも特徴だ。
■「どんなジャンルの音楽からも芯にある魅力を自然に引き出すことができる」
nue eraの音質についてはスマートフォンでの使用ケースが中心になることを想定して、今回はXperia Z2に直接つないで試聴した。
TOTOのライブアルバム「35周年アニヴァーサリー・ツアー〜ライブ・イン・ポーランド2013〜」から『Stop Loving You』では、全体的なバランスの良さが実感できた。ディティールの描き込みは思いのほか緻密であり、ライブアルバムの醍醐味であるオーディオエンスの手拍子や歓声など、空間表現を引き立たせる情報も無理なく引き出してくる。
ドラムスはハイハットやシンバルなど高域の楽器の階調感がスムーズで、テクスチャーも柔らかい。ボーカルは張り出し感が控えめであり、声のトーンもむやみに強調することがないので、非常にナチュラルに染み渡ってくるような感覚がある。高域の爽やかな抜け味も悪くない。
エレキギターの音はエッジがきちんと立っていて、スティーブ・ルカサーのクリエイティブな旋律の動きが忠実にトレースされる。低域が膨らみ過ぎて足取りが鈍ることがなく、アタックはタイトで軽快。エレキベースの音像も筋肉質で鮮度が高い。ただ、この曲を聴く限りでは通常のシリコンイヤーチップだとわずかに低域の肉付きが物足りなく感じたので、付属のフォームチップに交換してみたところ筆者の好む音にはまった。イヤーチップの付け替えにより、音がカスタマイズできる楽しさももこのイヤホンの愛すべきキャラクターのひとつだ。
松田聖子のアルバム「SQUALL」から『裸足の季節』では、低域にどっしりとした安定感があり、リズムセクションが刻む旋律の足並みがぴたりと揃っていて心地良い。ボーカルに少し緊張したような固さを感じるが、声質はとてもナチュラルでクセがなく、滑舌にキレがあって生命感がストレートに伝わっている。純潔な乙女らしさを見事に描いていると言えるのではないだろうか。試しにオーディオテクニカのポタアン「AT-PHA100」をつないで、ハイレゾ再生のサウンドを合わせて確認してみたところ、声に暖かみと透明感が加わって、艶やかさがけた違いに上がった。ストリングスやパーカッション、エレキギターなどバンドの楽器もより生っぽく歌うようになる。ハイレゾ再生の魅力や、接続するソース機器のキャラクターをありのまま素直に再現してくれるイヤホンだと言えるのではないだろうか。
どんなジャンルの音楽からも芯にある魅力を自然に引き出すことができるパフォーマンスを備えたイヤホン。使い込むほどに頼り甲斐を感じるはずだ。“いい音”をスタンダードな価格帯で実現した本機こそ、まさにPolk Audioの創業者が追い求めてきた理想型と呼べるのではないだろうか。
【SPEC】型式:インイヤー型 ドライバーユニット:ダイナミック型5.5mm インピーダンス:16Ω 音圧感度:101.2dB/mW 再生周波数帯域:10Hz〜14kHz プラグ:3.5mm 4極ミニプラグ ケーブル:110cm