<山本敦のAV進化論 第82回>
「PlayStation VR」発売間近、準備は順調! SCE吉田プレジデントが語る開発の裏側
「実際にVRコンテンツの製作を手がけるようになってからというもの、プレーヤーがいまその世界にいるように錯覚してしまうほどリアルな“Sense of Presence”の感覚を追求することの大切さを実感しています。VRの場合、ある程度ゲーム性を抑えても上質なエンタテインメントをつくることができます。VRならではの『体験をデザイン』するという視点が必要なのです」
吉田氏はVRコンテンツを制作する手法論として、普通は足を運べない場所を疑似体験できたり、バーチャルな世界の中でプレーヤーどうしがコミュニケーションできる場所をつくるなど、VR独自の「体験をデザイン」することで、新しいタイプのエンタテインメントが生み出せると強く主張する。さらにそのことがPS VRによるエンタテインメントを中心に、新たなユーザー層を掘り起こせるきっかけにもなるというのが吉田氏の見解だ。
またリコーの360度全天球カメラ「THETA」シリーズのように、一般ユーザーが全天球撮影型のカメラで記録した動画や写真をオンラインで共有して、PS VRでも楽しめるようになる可能性についても模索されているようだ。
吉田氏は「まだゲーム以外のコンテンツについては具体的なお話しをしていないが、今後PS VRで様々なエンタテインメントが楽しめるようになるべきだと思っています。他社とのコラボレーションなども通じて、積極的に可能性を広げていきたいですね」と述べている。
吉田氏が言うところのVRコンテンツの「Believability」を高めるためには、映像だけでなくサウンドもVRに適したものが作られるべきだ。CESではドルビー・ラボラトリーズによる「Dolby VR」や、ゼンハイザーの「AMBEO」など、VR市場の成長を見据えた次世代サウンド技術のデモンストレーションにも触れることができた。
吉田氏もまた3Dオーディオの重要性を指摘する一人だ。SCEでも独自にオブジェクトベースによる3Dオーディオの技術仕様をつくり、これをSDKとして提供していると吉田氏は語っている。
またPS VRでは、別筐体のプロセッサーユニットに3Dオーディオの処理を一部負担させることで、PS4の本体と合わせてスムーズなVR映像と3Dオーディオの再生パフォーマンスを確保するシステム構成を採っている。
■VR空間の中のオブジェクトに触れることの気持ち良さ
PS VRは安全面にも配慮し、ディスプレイ部分の下部から手元の様子を確認できるが、装着するとどこまでも仮想世界が広がり、その隙間を感じさせない。そのためVR空間の中でスムーズにゲームをプレイするための入力インターフェースについてもPS VRならではの工夫が凝らされている。