“フルバランス” が引き出すクラスDアンプの真価
「 20万円以下では圧倒的な駆動力」。パイオニアのプリメイン「A-70A」を岩井喬がレビュー
前モデル「A-70」と新モデル「A-70A」の違いを整理
新モデル「A-70A」がA-70と大きく違うのは、DAC部を持たないこと、そしてプリ段が左右独立のフルバランス構成になったことが挙げられる。
バランス構成によるメリットは、バランスケーブルでの長距離伝送において外来ノイズをキャンセルできる点が良く知られているが、実はそれだけではない。
まず、DACチップに用意された差動モードを活用したバランス回路を、プレーヤーもしくはDACそのものから構成できることが挙げられるだろう。ノイズに強いバランス回路を取り入れることで、筺体内回路の引き回しの点でも優位性がある。
さらに数十年前の製品はアンバランス構成が主流で、バランス出力はアンバランス変換回路を経たものだったのに対し、前述したDACチップ構成を踏まえ、現在は回路の基本設計をフルバランス構成とする製品も多くなった。ゆえにバランス出力を活用する方が、アンバランス変換回路の影響を受けないというメリットがある。
こうしたいくつもの事情を鑑みると、バランス接続することで音質設計の意図が汲み取れることがわかるのではないか。昨今のバランス接続環境による音質傾向としては、S/Nが高く、音場の透明感が一際優れることと、音像の輪郭のにじみがなく、より鮮度の高いサウンドが楽しめる点が挙げられるだろう。
このフルバランス構成プリ段の後に用意された、Direct Power FETによるクラスD出力段においては、周辺の部品をブラッシュアップ。駆動の観点からさらなる最適化を実施したという。これによりクラスDアンプのメリットでもある高速な応答性、つまり、音の立ち上がり&立下りの素早さ、そして低域の切れ味の良さが向上し、躍動感のある低域の再現度が高まったという。
加えて電源部には、パワー部とプリ部に各々独立したシールドつき大容量電源トランスを搭載。トランスのケース内部には、定在波を除去する特殊な形状が施された。さらに、ノイズ発生を抑えたカスタム電解コンデンサーや音質に優れるフィルムコンデンサー、オーディオ用大型リレーなど、細部に渡って高音質パーツを取り入れている。
XLRバランス入力端子は信頼性の高いノイトリック社製を採用(極性切り替えも装備)。従来モデルではソリッドな意匠のボリュームノブを用いていたが、今回のリニューアルで前方へややすぼまるようなシェイプを持った新デザインのアルミ無垢材削り出しボリュームノブを取り入れ、直線的な意匠の中のアクセントとしている。
筺体構造は、各ブロックのシールドや相互干渉、および共振の影響を取り除く低重心な設計を継承している。シャーシには、クラスDアンプのメリットである発熱の少なさ、大型ヒートシンクが不要な構造を生かした“高剛性3分割シャーシ”を採用。さらにはリジッドアンダーベース、真鍮削り出しインシュレーターを用いることで、高剛性かつ制振性に優れたつくりとした。
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