光デジタル出力も装備した話題作
【レビュー】楽しみ方自由自在! ティアックの新レコードプレーヤー「TN-570」を聴く
■ターンテーブルとしての基本性能は期待通りの高さ
カーペンターズの『ア・ソング・フォー・ユー』ではカレンのヴォーカルをウォームな音調で再生し、アナログレコードならではの温かみのあるサウンドを実感する。声の定位にブレがなく、各楽器のセパレーションも良好で、ターンテーブルシステムとしての基本性能は期待通りという印象を受ける。
ベースが必要以上にふくらまず、ヴォーカルやギターをマスクしないことにも感心させられたが、タイトで鮮鋭な方向に行き過ぎるのではなく、ドライで細い音とは対極の豊かさをたたえている。
ティツィアーティ指揮スコットランド室内管弦楽団によるハイドンの交響曲を45回転のLPレコードで再生すると、静寂から立ち上がるトゥッティの描写に3次元の立体感が感じられ、S/NとダイナミックレンジについてもTN-350を明らかに上回っていることがわかる。カタログを見るとS/Nの数値に変わりはないのだが、シャーシの制振性が上がっているためか、音にまとわりつく付帯音が少なく、立ち上がりと立ち下がりがすっきりしているのだ。
ムラヴィンスキー指揮レニングラードフィルのチャイコフスキー『悲愴』は、解像感ではCDの方が上回るものの、各楽器の音が自然に溶け合って一体感のある響きが生まれ、部分ではなく演奏全体の特徴やオーケストラが生み出す強烈な推進力を聴き取ることができた。録音から半世紀以上を経た録音の場合、当時メインの音源だったレコードで再生した方が、作り手が目指した音に近いバランスが得られるのかもしれない。名録音とされるこの『悲愴』は特にその印象が強い。
■内蔵フォノイコの音作りは力強さ重視、クオリティは十分
次に、背面パネルのスイッチを内蔵フォノイコライザーアンプの出力に切り替えて、ライン接続で同じレコードを再生した。リビングルームで手頃なサイズのアンプと組み合わせる場合など、こちらの方が一般的だと思う。
C-37のニュートラルな音調に比べると、内蔵フォノイコライザーアンプは音の志向がはっきりしていて、狙いが明確だ。ひとことで言えば力強さを狙った音調で、低音の豊かな量感や中域が迫り出す感触、中高域の勢いの強さなどに個性が感じられた。自然な音像定位や情報量では外部のフォノイコライザーアンプが有利だが、それは価格差を考えれば当然の結果である。TN-570の用途を考えれば、力強さを狙った内蔵イコライザーの音作りにはむしろ共感できる部分が多い。
ヴォーカルはイメージが広がり気味だが、低い音域にはほどよいボディ感があり、温度感の高い音色を引き出す。ベースとドラムは多少引き締めたくなるほど力感があるが、量感に制約のあるコンパクトなブックシェルフ型と組み合わせる場合は、このぐらいのエネルギー感があった方が自然なバランスを引き出しやすいと思う。オーケストラはディテール描写が神経質なタッチにならず、伸びやかでゆったりとした音調で聴き手を包み込む。
■カートリッジ交換で音質グレードアップを試みる
ここでカートリッジをゴールドリングの2500に交換し、音質のグレードアップを狙う。TN-570にはオーディオテクニカのAT100E同等のカートリッジが付属するが、2500はさらに高出力のIM型。TN-570の内蔵フォノイコライザーでそのまま鳴らせるので、価格を除けば導入のハードルは低い。