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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第152回】そして次の10年へ。銘機10proの“正式後継者” JH Audio「TriFi」レビュー

公開日 2016/04/08 10:00 高橋 敦
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■TriFiを「再構築」と捉える理由

ということでJH Audio「TriFi」。僕はここまで「再構築」という言葉を使ってきたが、それは公式にそう表現されているわけではない。なのでまずはその「再構築」という表現を選んだ理由を説明しておこう。

「銘機を現在の技術で」の他分野での直近の例としては、「iPhone SE」が思い浮かぶのではないだろうか。だがあれとこれとでは、その内容は実はかなり異なる。iPhone「SE」は「5/5s」の筐体をほとんどそのまま流用し、内部を最新コンポーネントで組み直すことで機能・性能を現在のハイエンドレベルにまで引き上げたモデルだ。噂として語られていた名称である「iPhone 5SE」の方が、実態をわかりやすく伝えるものだったかもしれない。

そのこと自体は個人的にも大歓迎で実際に即日機種変した。豊富なアクセサリー資産をそのまま継承できるという大きな利点もあるのだから、目新しさのためだけに無理に筐体を変えるより、ユーザーにもアクセサリーメーカーにもありがたい判断だったと思う。しかしこれは5から5s、無印からsというアップデートの延長線上のものだ。「iPhone 5を再構築した」なんて大げさな捉え方にはならないだろう。

対して「Triple.Fi 10」からの「TriFi」を見てみる。本当に見ただけで、外観がもう完全に別物だ。「iPhone 5→SE」とは違う話だということを、ここでもうおわかりいただけるだろう。

…別物!

外観上での共通点はこの色合いくらいだろうか

ではその内部に搭載された技術的な面では?とそこを確認してみても、明確な共通点と言えるのはドライバー構成のみだ。低域側BA×2+高域側BA×1。2ウェイ3ドライバー。特徴的なドライバー構成ではあるが、ドライバー構成が共通なイヤホンなんてこの世に何パターンでもある。ここだけを殊更に重く考える必要はないだろう。ドライバー構成は同じままにするというのは、開発上自らに課したチャレンジや、あるいはユーザーに対して「同じドライバー構成のままでこれだけ進化したぞ!」とわかりやすく伝えるためかもしれないが。

しかし「外観も中身も別物」というだけの話だとそれはもう、アップデートではないが再構築でもない、ただの別物だ。ではなぜこのモデルをアップデートでも別物でもなく「再構築」と表現するのか。

いまのハービー氏がこのモデルを開発するにあたって「こういうイヤホンを作りたい」と思い描いたイメージと、十年前のハービー氏が思い描いたイメージは、突き詰めて辿れば同じものなのではないか。あるいはあえて同じものにしたのではないか。そう感じるからだ。

ハービー氏が具体的なモノとしてではなくイメージとして頭の中に完成させた「このモデル」の元型。それを仮定する。すると十年前の技術や環境においてベストを尽くした、その成果としての「Triple.Fi 10」は、理想の元型のカタチや音を100点としたら80点にまでは到達していたのかもしれない。

そして十年を経たいま現在の技術や環境、そしてハービー氏が積み重ねてきた経験を反映した「TriFi」では95点にまで迫った。結果として外観等は別物になったがその元型、理想として目指した先は同じものなのではないか? 僕がそういうイメージ、妄想を膨らませてしまっただけなのだが、それそのままではなくてもそれに近いものは動機としてあったのではないかと思う。

ならばポイントは「十年を経たいま現在の技術」だ。細かな部分を見ればいくらでもあるだろう。そもそも根本であるBAドライバー自体の性能が違っている。しかし最大のポイントはやはり、ハービー氏がJH Audioとしての活動を始めて以降のキーテクノロジー「Freqphase」だろう。

こちらノズル先端、音導管の出口

ノズルの細長さはJHユニバーサルの特徴的な部分

詳細は明らかではないが、各帯域の位相を可能な限り揃える技術とのことだ。このモデルの場合、2ウェイで音導管も2本なので、そのふたつから音が鼓膜に届くタイミングをいかに揃えるか、そういうことだと思う。

JHのユニバーサルはノズル部分が比較的長めで耳の奥まで入ってくる。もしかしたらそれも、その長く確保された経路を利用して位相を揃え、そしてできるだけ鼓膜に近い場所までノズル内で管理することで最終的な位相特性を高める、そういう狙いかもしれない。

次ページそんなTriFiの音質をチェック! そして、この先10年も

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