<山本敦のAV進化論 第112回>
“完全ワイヤレスイヤホン”3機種を徹底比較。それぞれの音質・使い勝手は?
夏場は耳元・首まわりにケーブルが触れてベトつく不快感もなくなるし、何よりケーブルによるタッチノイズとおさらばできる。特に髪の長い女性にとってはイヤホンによる音楽リスニングは格段に快適さを増すだろう。
もともとBluetoothイヤホンはペアリングが面倒なので使いたくないという声もあるようだ。今回取材した3製品はいずれもその点、迷うことが少ない製品であるように思えるが、アップルのAirPodsはiOS 10デバイスとのペアリングが非常に簡単にできるようなので、各社の製品が音質とともに、このあたりの使い勝手をさらにブラッシュアップしてくるかどうか、今後の動向にも注目だ。とにかく、完全ワイヤレスイヤホンはシンプルに使えるようになるのが一番だ。
現状の製品を使ってみて、課題として感じられるポイントもいくつかあった。スタミナについてはバッテリーセルやエネルギーマネージメントの技術進化を期待するほかないが、もう一つ、YouTubeなどの動画コンテンツを再生している時にリップシンクがけっこうズレるのが気になった。完全ワイヤレスイヤホンによる動画視聴のために最適化されたワイヤレスオーディオのコーデック技術も求められてくるかもしれない。
■新製品の発表も止まらない
これから年末、来年にかけてまた新しい完全ワイヤレスイヤホンが続々と発表・発売されるはずだ。本稿を執筆している間にも香港のメーカーから「i.Tech FreeStereo TWINS」という製品が発表された(関連ニュース)。AirPodsよりも安い、1万円台中頃の価格設定も意欲的だ。
9月に開催されたIFA2016ではサムスン電子が「Gear IconX」という完全ワイヤレスイヤホンを展示していた。本体に心拍センサーや加速度センサーを内蔵して、スマホアプリで健康状態がチェックできるウェアラブルデバイスでもあるところが特徴。
ハンズフリーコールのほか、NFCによるワンタッチペアリングにも対応している。そして専用ケースにはリフィル用のバッテリーだけでなく、4GBのストレージと音楽プレーヤー機能まで乗せてしまった究極のワイヤレスイヤホンだ。
そのほかにも米Jabraがスポーツシーンに最適化した完全ワイヤレスイヤホン「Jabra Elite Sport」を展示。こちらも脈拍モニターを使ったフィットネス機能を統合している。
さらに米SOUL ELECTRONICSは来年には一気に3種類の新しい完全ワイヤレスイヤホンを発売しそうだ。アメリカのヘッドホン・イヤホンブランドはハイレゾに対していまひとつ感度が弱いようだが、先進のワイヤレスやセンサー技術を組み込んだ“便利なイヤホン”には大変意欲的にみえる。
来年は数々のブランドから新製品が発表されて、完全ワイヤレスイヤホンが一気にリスニングスタイルのスタンダードになってしまう可能性まで見えてきた。