[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第196回】ニッポン放送よっぴー発案 “新しいラジオ”「Hint」をラジオ大好きっ子ライターが使ってみた
ぱっと見てそのデザインというかカタチについて「ラジオらしからぬ」という印象を受けた方も少なからずだろう。その印象はこのラジオの本質に迫っていると思う。
このラジオの「縦置きの円筒」というカタチは音を360度に放射する「無指向性」とするために必然的に導き出されたものだ。そしてその円筒の縦長さが増している理由としては、メインのフルレンジドライバーユニットの他に低音を支えるウーファーと高音をクリアに再生するトゥイーターという、それぞれの帯域専用のドライバーも搭載したマルチドライバー構成の採用がある。
音を綺麗に広げて無指向性にするには、ドライバーユニットを真上あるいは真下に向けて配置し、その対面に音を拡散するリフレクターを設置するのが一番だ。そこから円筒形という形が導き出される。
そして広い帯域をクリアに再生できる土台を用意し、その上でのラジオ向けの音作りの自由度を高め、聴き心地の良い高音質を求めるのであれば、各帯域を補強するドライバーユニットを増やすのがシンプルな回答。円筒形という枠の中でドライバーユニットを増やすのであれば上下に積み重ねることになるので、円筒の高さが増す。
逆に言えば、従来のラジオがこのカタチでなかったのは、従来のラジオの多くは無指向性でも高音質志向でもなかったからだ。では対してHintはなぜ無指向性で高音質に設計されたのか?それは「思わず近くに置きたくなる、気配を感じるラジオ」にはそれが必要だからだろう。
「思わず近くに置きたくなる、気配を感じるラジオ」とは、僕の解釈で言い換えれば、「そばにいてもかしこまらなくてもいいし、うるさくもない。そして話し始めるととても心地良い。だからいつも一緒にいたい。そんな人みたいなラジオ」だ。それはラジオというメディアの性格にも通じるものがある。ラジオが「ながら聞き」に適したメディアと言われるのも、そういった特性からだろう。
「無指向性」というのは、このラジオを部屋のどこに置いても、リスナーが部屋のどこに移動しても、ラジオからの声や音楽、その気配が自然に届いて来るということだ。そしてクリアな「高音質」あるいは「好音質」であるからこそ耳に心地良く、生活や他の作業の邪魔にもならず、それでいて耳を傾ければトークの内容も音楽も明瞭に届いてくる。