プリアンプ「Formula P1000」も登場予定
XI AUDIO「SagraDAC」を聴く ーラダー抵抗方式DACで実現した圧倒的ピュアリティ
■シングルエンド構成をあえて採用した理由
本機のアナログ出力はRCAシングルエンドとXLRバランスの2系統が用意されているが、内部処理はシングルエンド構成だ。この点に関してSagraDACはシングルエンドでも120dBを超えるS/Nを実現しており、バランス方式としなくても十分なスペックが確保できていることから、R‐2Rモジュールのバランス化を行わなかったという。バランス化にはモジュールがもうひとつ必要であることや、電源部の作り込みもより複雑となり、音質面への良からぬ影響も増える。
また、SagraDACが目指しているR‐2Rラダー抵抗変換方式を身近なものとするためには、シングルエンドで良いサウンドを実現することが最優先事項であったというわけだ。本機ではシングルエンド→バランス変換を行い、XLR出力を作り出しているが、どちらを使ったとしても音色が変わらないよう配慮したという。
もうひとつの新製品となるプリアンプのFormula P1000であるが、こちらはスピーカー再生環境に向けた仕様としており、筐体サイズもSagraDACとは異なっている。シャオ氏はリスニング環境にジェネレックのモニタースピーカーを用いていたことがあり、その音質に納得できなかったことから音量調節できるプリアンプを開発しようと考えたそうだ。詳細はまだ明らかにされていないことも多いので、さらなる情報を待ちたい。
■まさに全方位に対して万全かつシームレスなサウンド
改めてこの2台を組み合わせたサウンドの印象について述べると、普段よく聴くΔΣ方式のDACとはベクトルの異なる量感の豊かさと、細部まで階調が正確な再現性を高い次元で両立した、極めて自然で有機的なサウンドを得ることができる。オーケストラの躍動感と個々の楽器の瑞々しい質感。そして、強調感のない音像の輪郭。そのいずれもが、滑らかに空間へ分離していくのだ。ヴォーカルの存在感も生々しく、リズム隊の切れ味も非常にしなやか。ピアノの余韻もにじみなく、透明度が高い。これは、アナログライクで密度良いサウンドというだけでなく、細部の情報量の多さ、制動性の高さからくる解像感に優れた空間性というべきで、これがSagraDACのサウンドの大きな特徴となっている。
PCM変換となるDSD音源であってもその緻密さ、流麗なタッチは変わらず、爽快な音色が展開。まさに全方位に対し、万全かつシームレスなサウンドである。 XI AUDIOの歩みはまだ始まったばかりであるが、このSagraDACとFormulaP1000がブランド躍進に向けての起爆剤となるであろう。
高い技術を持ちながら決して技術志向に偏らず、あくまで音質優先、音楽性豊かなサウンドの追求を是としたシャオ氏のこだわりは、この後に控える新製品にも継承されてゆくはずだ。情感溢れるサウンドを求める方に、ぜひ選択肢に加えていただきたいブランドである。
(岩井 喬)
SagraDAC Specifications
●最大入力対応サンプルレート(USB入力時):PCM384kHz/24bit、DSD11.2MHz●ダイナミックレンジ:130.5dB●全高調波歪率:0.008%●S/N(0 - 20kHz):127dB●RCA出力:1.4Vrms●バランス出力:4.0Vrms●入力端子:USB(Bタイプ)、I2S(HDMI 端子)、S. PDIF(RCA同軸、BNC同軸、光TOS)、AES/EBU●電源電圧:100V AC 50/60Hz●サイズ:240W×260D×85Hmm●質量:3.5kg ●取り扱い:ENZOj-Fi LLC.、(有)トップウイング
Formula P1000 Specifications
●周波数特性:DC-100kHz●全高調波歪率:0.0005%(A-Weight)●S/N:125dB●ゲイン:14.5dB(ハイ)、4.5dB(ロー)●入力インピーダンス:10kΩ●出力:15Vrms(最大)●入力端子:XLR×2●出力端子:XLR×2●取り扱い:ENZO j-Fi LLC.、(有)トップウイング
本記事は「季刊オーディオアクセサリー」171号所収記事を転載したものです。雑誌の購入はこちらから。
本機のアナログ出力はRCAシングルエンドとXLRバランスの2系統が用意されているが、内部処理はシングルエンド構成だ。この点に関してSagraDACはシングルエンドでも120dBを超えるS/Nを実現しており、バランス方式としなくても十分なスペックが確保できていることから、R‐2Rモジュールのバランス化を行わなかったという。バランス化にはモジュールがもうひとつ必要であることや、電源部の作り込みもより複雑となり、音質面への良からぬ影響も増える。
また、SagraDACが目指しているR‐2Rラダー抵抗変換方式を身近なものとするためには、シングルエンドで良いサウンドを実現することが最優先事項であったというわけだ。本機ではシングルエンド→バランス変換を行い、XLR出力を作り出しているが、どちらを使ったとしても音色が変わらないよう配慮したという。
もうひとつの新製品となるプリアンプのFormula P1000であるが、こちらはスピーカー再生環境に向けた仕様としており、筐体サイズもSagraDACとは異なっている。シャオ氏はリスニング環境にジェネレックのモニタースピーカーを用いていたことがあり、その音質に納得できなかったことから音量調節できるプリアンプを開発しようと考えたそうだ。詳細はまだ明らかにされていないことも多いので、さらなる情報を待ちたい。
■まさに全方位に対して万全かつシームレスなサウンド
改めてこの2台を組み合わせたサウンドの印象について述べると、普段よく聴くΔΣ方式のDACとはベクトルの異なる量感の豊かさと、細部まで階調が正確な再現性を高い次元で両立した、極めて自然で有機的なサウンドを得ることができる。オーケストラの躍動感と個々の楽器の瑞々しい質感。そして、強調感のない音像の輪郭。そのいずれもが、滑らかに空間へ分離していくのだ。ヴォーカルの存在感も生々しく、リズム隊の切れ味も非常にしなやか。ピアノの余韻もにじみなく、透明度が高い。これは、アナログライクで密度良いサウンドというだけでなく、細部の情報量の多さ、制動性の高さからくる解像感に優れた空間性というべきで、これがSagraDACのサウンドの大きな特徴となっている。
PCM変換となるDSD音源であってもその緻密さ、流麗なタッチは変わらず、爽快な音色が展開。まさに全方位に対し、万全かつシームレスなサウンドである。 XI AUDIOの歩みはまだ始まったばかりであるが、このSagraDACとFormulaP1000がブランド躍進に向けての起爆剤となるであろう。
高い技術を持ちながら決して技術志向に偏らず、あくまで音質優先、音楽性豊かなサウンドの追求を是としたシャオ氏のこだわりは、この後に控える新製品にも継承されてゆくはずだ。情感溢れるサウンドを求める方に、ぜひ選択肢に加えていただきたいブランドである。
(岩井 喬)
SagraDAC Specifications
●最大入力対応サンプルレート(USB入力時):PCM384kHz/24bit、DSD11.2MHz●ダイナミックレンジ:130.5dB●全高調波歪率:0.008%●S/N(0 - 20kHz):127dB●RCA出力:1.4Vrms●バランス出力:4.0Vrms●入力端子:USB(Bタイプ)、I2S(HDMI 端子)、S. PDIF(RCA同軸、BNC同軸、光TOS)、AES/EBU●電源電圧:100V AC 50/60Hz●サイズ:240W×260D×85Hmm●質量:3.5kg ●取り扱い:ENZOj-Fi LLC.、(有)トップウイング
Formula P1000 Specifications
●周波数特性:DC-100kHz●全高調波歪率:0.0005%(A-Weight)●S/N:125dB●ゲイン:14.5dB(ハイ)、4.5dB(ロー)●入力インピーダンス:10kΩ●出力:15Vrms(最大)●入力端子:XLR×2●出力端子:XLR×2●取り扱い:ENZO j-Fi LLC.、(有)トップウイング
本記事は「季刊オーディオアクセサリー」171号所収記事を転載したものです。雑誌の購入はこちらから。