HOME > レビュー > 「正しい」「間違っている」を瞬時に判断できるDAC。MYTEK「Manhattan DAC II」導入の理由

ES9038PROを搭載したフラグシップDAC

「正しい」「間違っている」を瞬時に判断できるDAC。MYTEK「Manhattan DAC II」導入の理由

公開日 2018/12/26 06:15 秋山 真
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

このような特徴から、普段からレコード再生や、STUDER A730のようなCDプレーヤーで、腰の座った堂々たる円盤再生を愉しんでいるオーディオファイルにも、Manhattan DAC IIのサウンドは違和感なく受け入れられるはずだ。「ファイル再生に興味はあるけど、PCオーディオはどうも…」という貴方には、伝家の宝刀SDIF-3もある。TASCAM「DA-3000」のような業務用レコーダー(民生機ではTEAC「SD-500HR」)とSDIF-3接続すれば、操作性はお世辞にも良いとは言えないが、USB経由とは一味違った屹然とした音質に、きっと耳を奪われるはずだ。

Manhattan DAC IIの背面端子部。USBや光/同軸デジタルに加えて、業務用向けの「SDIF-3」端子も搭載する


使いこなしでさらにその本領を引き出すことができる

そんなManhattan DAC IIの使いこなし術をいくつかご紹介しよう。まずはリジットなオーディオボードに置くこと。これが基本だ。その上でインシュレーターによる3点支持でガタツキなくセッティングしよう。拙宅ではウッドと金属の積層によるオーディオボードに、真鍮系のインシュレーターを組み合わせている。響きを抑える系のボードやインシュレーターはあまり相性が良いとは思わない。

そして、やはり効果抜群なのは電源ケーブルの交換だ。筆者は某所で電源ケーブルの開発にも関わっているが、その際の音質評価機になっているのも本機である。これまで述べてきた安定感抜群の帯域バランスと、中庸かつ高解像度なサウンド。それに加えて、組み合わせる機器やアクセサリーに対する反応の速さ、感度の良さは、レファレンス機器として、うってつけの資質と言えるだろう。

一方でManhattan DAC IIは100万円以下の製品だ。外来ノイズや輻射ノイズに対しては、当然ながら価格に見合った対策が施されているものの、数百万円クラスの“超”ハイエンドDACのように分厚い金属の削り出し筐体で覆われているわけではない。しかしご安心を。DIYで効果的にアプローチすることで、超ハイエンド機にも負けないワンランク上のS/Nだって得ることが可能なのだ。

手始めとしては、安価で入手も容易な彫金用の0.2mm厚「なまし銅板」をオススメしたい。これを天板の上ではなく、DACとオーディオボードの間に敷いてみよう。すると重心は一段と下がり、音場はさらに澄み渡って、音像もいっそう精密さを増すのが分かるはずだ。Manhattan DAC IIはユーザーの力量次第でいかようにも進化(深化)していくのである。「買い換える」ではなく「使いこなす」。ややもすると忘れてしまいがちなオーディオマインドの原点を、Manhattan DAC IIは呼び起こしてくれる。



製品や音源の試聴・製作を生業にする筆者が、仕事道具に求める条件はシンプルだ。それは「好き or 嫌い」「良い or 悪い」の先にある、「正しい or 間違っている」を瞬時にジャッジできるかどうか。その点においてもManhattan DAC IIは類稀なる能力を持った製品だと断言しよう。公私共に永い付き合いになりそうである。

(秋山 真)


秋山 真
20世紀最後の年にCDマスタリングのエンジニアとしてキャリアをスタートしたはずが、21世紀最初の年にはDVDエンコードのエンジニアになっていた、運命の荒波に揉まれ続ける画質と音質の求道者。2007年、世界一のBDを作りたいと渡米を決意しPHLに参加。ハリウッド大作からジブリ作品に至るまで、名だたるハイクオリティ盤を数多く手がけた。帰国後はアドバイザーとしてパッケージメディア、配信メディアの製作に関わる一方、オーディオビジュアルに関する豊富な知識と経験を生かし、2013年より「AV REVIEW」誌でコラムを連載中。リスとファットバーガーをこよなく愛する41歳。

前へ 1 2 3

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE