【特別企画】オーディオアクセサリー銘機賞2022グランプリ受賞
オヤイデの新世代電源ボックス「MTB-6II」と真紅の電源ケーブル「VONDITA-X」の魅力を検証
旧モデルとの実力も比較検証(Text by福田雅光)
■オリジナルパーツ総動員で音質が徹底チューニングされた
オヤイデを代表するフラッグシップ電源ボックス、MTBシリーズが誕生してから18年になる。しかしデザインも性能にも色褪せた印象はない。すでに当時、高性能を実現するための部材や方法は十分に解明されていたからだ。それにオヤイデの構造設計は、2mm厚真鍮シャーシケースを惜しみなく物量投入しているのに加え、ケースの構造も折り曲げ加工を採用して部材の強度を高めており、デザイン的にも洗練されている。
バージョンIIに進化した製品は、マットブラック塗装で落ち着いた高級感が得られている。コンセントの固定経路にハネナイトの制振材や樹脂ワッシャーを追加するなど、音質的にさらに検討してチューニングが行われた。パーツは、オヤイデがこれまでに商品化してきたコンセントや配線材、真鍮スパイク、アース線には精密導体102 SSCなど、総動員。コンセントには厚肉銀メッキにロジウムの2層メッキを採用した、MTB II専用のSWO-DXULTIMO。スパイクは4点設置から、ガタが発生する場合には3点設置に位置の調整が可能である。
■帯域や透明度などの優秀さで6口の「MTB-6II」がお薦め
「MTB-6II」は6口タイプで、透明感の高さ、SN比、中高音の解像度、さらに帯域展開の広さなどに優れる。一方4口タイプの「MTB-4II」は、キャラクターの発生は特に感じることはないが、透明度の高いオーソドックスなバランスで低音のパンチ力も力強く、締まりを効かせている。両者の音質性能には違いがあり、個人的に購入するのであれば「MTB-6II」の方を選ぶだろう。
搭載されている複数個の2口コンセントは、入力部から完全に並列配線されているため、電気的にはどの口も同じ条件で、音に違いが出る理由は不明だ。最近は空きコンセントに挿入して音質を改善するアクセサリーが多いので、6口は便利なことも多い。
旧モデルの「MTB-6」とバージョンIIの「MTB-6II」とを音質比較してみると、「MTB-6」は明快な活気とスピードのあるレスポンスで魅力があるが、音の表情の細かい要素は出にくい。今回の「MTB-6II」になって、表現の繊細さ、ニュアンスは大きく改良されていることが分かった。
ファインチューニングの進化と、魅了される妖艶な音色を新提案(Text by生形三郎)
■新パーツ導入でチューニング、現代に合わせて表現力も進化した「MTB-6II」
フラッグシップ電源ボックス“MTB-IIシリーズ”で目指したのは、昨今の録音、再生環境の進化に合わせた、より広範な音楽ソースを忠実に再現できる情報量やサウンドバランスの追求である。これまでのオヤイデ製電源アクセサリーらしい、音の力強さや押し出し感を踏襲しつつも、入念かつ適切な振動コントロールやアース周りの強化を経て、忠実かつ精細な表現力を確保する狙いだ。
旧モデルと比較するとその進化は明らかである。旧モデルは力強さや押し出しに富みながら高域方向に煌びやかさや華やかさが伴い、ソースによってはそれらが特に前に出てくる印象もあった。
しかし新モデルではそれが抑えられ、ソースを問わず音像の立体性や音場の見通しが大きく良好化している。それに伴い、楽器や歌声には潤いや滑らかさも引き出され、音の質感や演奏の表情がより活き活きとナチュラルに描き出される。これらはまさに、バージョンアップとチューニングの賜物だろう。
なお6口の「MTB-6II」と4口の「MTB-4II」を比べると、筐体サイズの違いによるボディ剛性や響きなどによるのか、6口の方が音像同士の間合いや音場の広さに僅かな余裕を感じ、4口の方は逆にそれらが凝縮された明瞭な音の印象を楽しめた。必要なコンセント数のほか、求める音質によっても4口か6口かを選択するとよいだろう。
全般的に、高解像で分離に富みながらも、明るく抜けの良いサウンドが欲しい部分に投入すると、この電源ボックスの魅力を存分に活かすことができるだろう。例えばアナログソース機器の電源系統に使うと面白そうだ。また壁コンセントへ直接接続し、そこからさらに別の電源ボックスに分岐するなど、電源供給経路の前段部に挿入してサウンドをコントロールするのも好適かもしれない。
■ハイファイ過ぎず潤いを備えて充実した音色の旨味を聴かせる「VONDITA-X」
「VONDITA-X」は、“妖艶なる音色”を求めて開発された、新機軸を打ち出す電源ケーブル。インナーとアウターのシースに異なる色味を重ねて生み出された、深みある赤色が秘める妖しげな美しさが何とも印象的だ。
しっかりとした音の情報量やクオリティを担保しながらも、いわゆるハイファイな方向に頑張り過ぎていない。楽器の音色の旨味がしっかりと感じられる温もりのある、聴き疲れのしない音なのだ。中域、中高域に潤いがあり、幾分マットで落ち着いた質感となっていることもそれに寄与しているのだろう。低域方向も密度のある鳴り方で、超低域に程よく隆起した帯域を持ちボトムに充実感がある。
そして、このケーブルの本領ともいうべきヴォーカル再現には、独特の面妖さや色気を伴った確かなプレゼンスが実現されている。とりわけこれが女性ヴォーカルにフィットしており、癖になる味わいなのだ。ハイファイさを追求した電源ケーブルが多い中で、このようなキャラクターに重きを置くケーブルは稀有な存在と言える。
ポップスやジャズなどの女性ヴォーカルも良いが、個人的にはクラシックのソプラノやカウンターテナーなどノーブルなソースにも、その独特の温かみやコクがジャストフィットすると感じた。歌声に魅了される、楽しいケーブルなのである。システム全体へ電源を分配するボックスのほか、プレーヤー機器などに狙い撃ちで使っても効果的だろう。
■饒舌な音楽再生を堪能、新たな指向の音楽が愉しめる「MTB-6II」+「VONDITA-X」
オヤイデの新たなサウンドを体現する「MTB-6II」と「VONDITA-X」を組み合わせれば、使いこなしとして、まさに同社が示す新たな指向の音楽表現を愉しむことができるだろう。
精彩さと抜けの良さが魅力の「MTB-6II」と、色気や潤い、落ち着きを伴った「VONDITA-X」が融合することで、忠実さや解像力一辺倒ではない、そこからさらに一歩踏み込んだ饒舌な音楽再生を堪能させるに違いない。
Specification
【MTB-II】●筐体:2mm厚真鍮(マットブラック塗装)●コンセント:MTB-II専用SWO-DX-ULTIMO(メッキ:厚肉銀+ロジウム)●内部配線:4N純銀2mm単線(AC電源)/Oyaide 3398-14(アース)●インレット:Power Inlet PP(メッキ:プラチナ+パラジウム)●スパイク:特製真鍮製●ハンダ:Oyaide SS-47●定格:125V/15A 屋内用
【VONDITA-X(ヴォンディータ・エックス)】●ケーブル部:VONDITA(1.8m)●構造:3芯キャブタイヤ●導体:精密導体102 SSC(ホット/コールド/アース)●導体面積:4.0sq(SPECIAL STRANDED)●絶縁体:高分子ポリオレフィン●シールド:銅箔テープ●外装シース:PVC+ポリオレフィン●カラー:パールレッド●ケーブル外径:13.0mm●電源プラグ/コネクター:V-XY/V-XX(メッキ:プラチナ+パラジウム/金)●電極:ベリリウム銅●定格:125V/15A〈PS〉E認証品●ケーブル延長:0.5m増すごとに+¥6,600(税込)
(提供:オヤイデ電気)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.183』ならびに『オーディオアクセサリー大全2022〜2023』からの転載です。