『ゴジラ-1.0/C』のBD版もおススメ!
Dolby Vision&Atmosでゴジラの圧倒的迫力と世界屈指のVFXを堪能!4K UHD BD版『ゴジラ-1.0』徹底レビュー
■『ゴジラ-1.0』
2024年5月1日の時点では、いまだ全国でロングラン公開中の『ゴジラ-1.0』が、早くも4K Ultra HDブルーレイ(4K UHD BD)となってホームシアターに襲来。戦後まもない焦土と化した日本に、突如現れたゴジラ。戦う術を持たない人々に、生きて抗う術はあるのか?
主演は元特攻兵の主人公・敷島に神木隆之介、焼け野原で力強く生き抜く女性・典子に浜辺美波。ゴジラの大暴れはもちろん、戦う人間たちの感情にも深く寄り添った本作は、日本のみならずアメリカでも大ヒット。第96回アカデミー賞視覚効果賞を受賞という快挙を、ゴジラ生誕70周年の記念すべき年に成し遂げたことは、皆さんの記憶にも新しいことだろう。
4K UHD BD版の映像は2K仕上げのDIマスターを4Kアップコンバート、HDRフォーマットはDolby Visionを採用。音声はDolby Atmos/Dolby TrueHD 5.1ch/2.0chが収録されている。対応環境があれば、家庭でもドルビーシネマに匹敵するクオリティで楽しめるのがうれしい。本稿では4K UHD BD版の高画質・高音質を楽しめる見どころをチェックしていきたい。それではいよいよ、上映スタート!
【CH1「ゴジラ」】
月明かりが照らす大戸島の航空整備場に、伝説の怪物「呉爾羅(ゴジラ)」が現れる。Dolby Vision&Atmosがいきなり全開だ。鋭いサーチライトや発砲の閃光が照らす中、漆黒の闇に溶けこみ襲いかかる呉爾羅。蹂躙するゴジラの咆哮と足音、兵士たちの発砲と悲鳴が、立体的に見事に配置されている。
零戦に乗った敷島にゴジラが迫る場面では、唸り声がフロント中央から左、さらに左後方の上へと移動。湿気まじりの息吹すら感じる量感の音像が、呉爾羅の「近さ」すら表現する。こうしたカメラワークやカットの切り返しにシンクロした臨場感満点の音響演出が本作の大きな特徴だ。
【CH4 「時間稼ぎ」】
機雷掃海船・新生丸の周囲に無数の深海魚の死体が浮かぶ。4K UHD BD版での再見では、はるか遠くまで浮かぶ夥しい数とプカプカとサラウンドする浮上音にも気づいた。そしていよいよ、巨大化したゴジラが出現。新生丸を追うゴジラは『ジョーズ』を思わせるが、そのスピルバーグが本作を「3回も見た」というから痛快だ。ゴジラの体表はHDRでコントラストが引き締まり、ディテール描写に圧倒的な説得力をもたらす。2Kからのアップコンとはいえ、海面や波の描写も驚異的にナチュラルだ。
新生丸の攻撃に激昂したゴジラが海上に浮上するシーンでは、巨体から滴る水音が立体的に高さ方向へと上がっていく。その刹那、重巡洋艦・高雄がゴジラを攻撃! 主砲発射と爆炎の閃光も力強いが、海中からゴジラが放つ熱線と高雄の大爆発はHDRで非常に鮮烈。作曲家・佐藤直紀による不穏な劇伴音楽と量感あふれる爆発音も相まって、ゴジラの脅威をまざまざと見せつける。
【CH6「銀座上陸」】
ゴジラ、銀座に出現!かつてない厚みのオーケストラ演奏で伊福部昭の旋律が鳴り響き、遂にゴジラが咆哮! その声はフロントから発せられるや否や、凄まじい量感を伴って立体的に広がり響く。ゴジラが噛みついた車輌内では巨大な唸りと車体の軋み、乗客の悲鳴の距離感がリアルにサラウンド。電車を咥えたゴジラの息遣いまでも頭上に響く。
ゴジラ襲来で粉塵が上がる銀座の光景は、HDRでコントラストが際立ち立体的なパノラマを見せつける。日本劇場がゴジラの尻尾で粉砕されるのは第1作のオマージュだが、巨大な風切り音がフロントから反時計回りに音場を切り裂く。
踏み潰される人々の悲鳴の生々しさにも戦慄必至だ。その直後、国会議事堂前から戦車隊がゴジラを攻撃っするが、ゴジラの背びれが青白い怪光と鈍い音と共に迫り上がっていき、大気を大きく吸い込む音が音場高くに響き、歴代シリーズ屈指の猛烈な熱線が放射される! 青白い熱線の周囲に白いスパイラル光が付加された、非常に立体的な作画がHDRで克明になる。熱線の直撃による巨大な炎柱の眩さも、街を吹き飛ばす衝撃波もまた、身の危険を感じるレベル。
悲壮な音楽と共に巨大なキノコ雲があがり、ゴジラの凄まじい叫びがアトモス空間を包み込む。ZOZOマリンスタジアムで実際に大音響によって再生した咆哮で、リアルな響きが収録されたものだ。そして絶叫する敷島に大粒の「黒い雨」が強く、重く降りしきる…。
というわけで、映画の半分まででも見どころが満載なのがわかっていただけるだろう。ゴジラ殲滅の奇策「海神(わだつみ)作戦」とは? 人類はゴジラに勝利できるのか? クライマックスの驚くべきスペクタクルは、ぜひ出来る限りの大画面と大音量で体感していただきたい。
最後になるが、『ゴジラ-1.0/C』も強くオススメしておきたい。SDR収録だが、光と影のコントラストが力強い。色彩情報を排したことで浮かび上がる立体的で質感豊かなモノクロ映像が、非常に新鮮な映画体験だった。
[SPEC]
●制作:2023年/日 ●監督:山崎貴 ●出演:神木隆之介、浜辺美波、山田裕貴 他 ●本編映像:125分、スコープ、Dolby Vision ●本編音声:日本語Dolby Atmos、日本語Dolby TrueHD 5.1ch、日本語Dolby TrueHD2.0ch 他
伊尾喜大祐 1999年よりDVD制作事業をスタート。凝った仕様のパッケージソフトを多数制作、映画人からの厚い信頼を得る。2006年には映像制作プロダクションであるFILM有限責任事業組合(現・株式会社FILM)の発足にも参加。のべ200タイトル以上のディスクを制作・演出。オーディオビジュアルの執筆活動も行っている。 【伊尾喜大祐 ホームシアター「シン・イオキネマ」視聴システム】 ・プロジェクター:Victor「DLA-V80R」 ・スクリーン:KIKUCHI「SE-120HDCW ・テレビ:TVS REGZA「65X9400」 ・BDレコーダー: Panasonic「DMR-ZR1」 ・AVアンプ:DENON「AVC-X8500HA」 ・スピーカーシステム:KEF「R7」(フロントLR)、DALI「OBERON ONWALL」(サラウンドLR/サラウンドバックLR)、DALI「PHANTOM E50」(トップスピーカーフロント/ミドル/リア)、KEF「Kube10b Subwoofer」(サブウーファー) |