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1998年の放送当時からの担当者にインタビュー

4Kスキャン「CCさくら」は“思い出補正”を超える! 新世代BD BOXに込められたこだわりを聞いた

公開日 2017/12/28 10:00 インタビュアー:秋山 真 構成:押野 由宇
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ーーそういった新しい手法は、他の仕事をしながら思いついたりするんですか?

岡田大体は仕事中ですね。今回も色々と考えている時に某アニメを思い出し、そのなかに「何かを得るためにはそれと同等の代価が必要になる」というくだりがあって。「そうだ、等価交換だ」って気づいたんです。ノイズをなくすためには何と交換するんだ? と考えていたら、思いついちゃいました。アニメは役に立ちますね(笑)。

ーー睡眠時間と交換ですかね(笑)。ところで今回の新マスターはフォーカスがバッチリ合ってますよね。ただ4Kスキャンしただけではこうはならないと思います。このフォーカシングの秘密についても教えてください。

岡田4Kスキャナーのピントは当然フィルム面に合っていますが、フィルムに記録されているもの自体が完全にピントが合っているとは限りません。どんなアニメ作品でも撮影時のピンボケが大なり小なりあるものです。これをFORSによるデジタル処理でピント合わせしています。

これはシャープネスや超解像といったものとは全く違う概念で、わずかにピンボケしていても拡散した成分さえ残っていれば、それを使って再び合焦させることが可能になります。これは4Kスキャンによる高解像度情報があると、より効果的ですね。今回は全話にその処理を掛けていますが、キリキリになるまでは合わせていません。やりすぎると、セルアニメの雰囲気まで消えてしまうのです。

上が2009年版リマスター、下が最新版リマスター。さくらや魔法陣にフォーカスが合ったことで解像感が大幅アップ。背景のグラデーションもスムーズになっている

ーーこのジャストフォーカスなのに柔らかさも感じられる仕上がりには脱帽したのですが、そういった最後のさじ加減は岡田さんのセンスがなせる匠の技ですね。正直、これと比較してしまうと2009年版がSD解像度であるかのように錯覚してしまうほどです。

岡田最初の段階でフォーカス処理をしていることにより、HDサイズに縮小した際でも2009年版の倍以上の解像力を実現しています。ちなみに全70話もあるため途中のリマスター作業自体は2K解像度で行いました。ただし2Kといってもアスペクト比が4対3なので、横2K、縦1.5Kあります。面積にして2009年版のほぼ2倍のサイズで作業していることになり、ゴミ消しや各種補正の精度も格段に向上しています。

上が2009年版、下が最新版のリマスター。最新版では魔法陣がボヤけなくシャープで、外を走る青い線から広がりグラデーションの波が滑らかだ(*画面の一部を切り抜き)

ーーリマスター技術の進化には本当に驚かされますが、それもこれもCCさくらが35mmフィルムで作られていたおかげですね。

岡田リマスターと言えば、当時オンエア編集をしていた際に、さくらちゃん(木之本桜)の服の色が間違っているシーンを発見したことがあります。当時の技術ではそれを直すのはすごく大変だったのですが、何とかオンエアまでに修正することが出来ました。しかし元のフィルムは間違った色のままなわけです。だからその後、リマスター版を作る度に修正作業が発生することになりました。しかもどんどん解像度が上がって細部が見えるようになってしまうから、技術的なハードルがどんどん上がってしまって(苦笑)。

ーーデジタルアニメだと、制作現場の方に一度戻して直してもらうといったことも出来ますが、セル画だとそうもいかないですからね。セル画の話が出て来ましたが、一連のリマスター作業を行うにあたって、何らかの基準となるものが必要だと思うのですが、岡田さんの場合、リファレンスはセル画になるのでしょうか?

岡田セル画もそうですが、今時のデジタルアニメの線の出し方も参考にしています。オリジナルのテイストを尊重しつつも、最新のデジタル作品と横並びにしても古さを感じさせないような、そういう画作りを目指しています。

ーーその時代に見合ったものに仕上げるということですね。それこそがリマスターの意義だと思います。岡田さん自身はCCさくらがこれだけ長い間ファンに愛され続ける理由はどこにあるとお考えですか?

岡田男女問わず、子どもから大人まで、幅広く楽しめる作品だからだと思います。シリアスな話があったとしても、根っからの悪人が出たり、残酷だったりとか、そういった負の面がない。いろいろあっても最後にはホッと出来る、そんな余韻の良さが永く愛される秘密なのではないでしょうか。

インタビュアーの秋山氏は2005年までキュー・テックに在籍。取材中も『CCさくら』の思い出話に花が咲いた

ーー印象深いエピソードはありますか?

岡田う〜ん、たくさんあるんですが…。特に第57話の小狼くん(李小狼)がエレベーターで初めて「さくらー!」と名前で叫ぶシーンはグッときましたね。あと、ストーリーとは直接関係ないのですが、知世ちゃんと同じ縦型のミニDVカメラを買いました(笑)。だからクリアカード編を見たら、時代がジャンプしたように感じられるかもしれません。「知世ちゃんのビデオカメラが新しくなってる!」みたいな(笑)。クリアカード編は家の中の書き込みもリアルなんですよ。だから「あ、この炊飯器は◯◯製だ!」ってすぐに分かっちゃう。で、それも同じものが我が家にあります(照)。

ーーもう完全にCCさくらの大ファンですね(笑)。それで炊いたご飯は?

岡田美味しいです(笑)。

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