SEシリーズの新パッケージ/新ケーブルの詳細も
Shure開発者インタビュー。「KSE1200」で“コンデンサー型イヤホン” の魅力を広めたい
ーー より手の届きやすい価格で提供するという狙いは確かにあるわけですが、KSE1200は「KSE1500の単なる廉価版」というポジションとは違うように思えます。
Shure: そうですね、サウンドクオリティに差はありませんから。DACを搭載しているかどうかだけ、その機能が必要かどうかだけで選んでいただければと思います。我々もデジタルの部分にこれからどのような変化が起きるのか、予想しきれないところもありますし、そこはDAPに任せるという考え方も含めて、ユーザーの方々に自由に選んでいただければと思います。
ーー 今年初めに開催されたCESでは、春以降に向けて「イヤホンのハイエンド」と「コンシューマー向けの使い勝手が良いモデル」を進めているとおっしゃっていましたが(関連記事)、KSE1200がその「イヤホンのハイエンド」ですか?
Shure: そうです。
ーー では「コンシューマー向けの使い勝手が良いモデル」は?
Shure: (目を逸らしながら)……ええ、用意していますとも!
■一新したShureの定番“SEシリーズ”。その展開を支えるMMCX端子へのこだわりとは
ーー なるほど…。さて、イヤホンでは定番「SE」シリーズのパッケージが、ラインナップも内容もデザインも一新されましたね。
Shure: 各モデルごとに用意されるパッケージは少し異なりますが、基本的にはイヤホン本体とケーブルの組み合わせのバリエーションを広げたものです。イヤホン本体と従来通りの通常ケーブルの組み合わせの他、マイクリモコン付きケーブル「RMCE-UNI」、そしてBluetooth対応ケーブル「RMCE-BT1」を組み合わせるパターンも用意しました。
ーー そのケーブル「RMCE-UNI」も新製品ですね。
Shure: 切り替えスイッチでiOSとAndroid、どちらのデバイスの操作にも対応します。Androidへの対応としては、新たなオプションケーブルとして「RMCE-USB」も用意しましたよ。
ーー Lightning接続ケーブル「RMCE-LTG」のUSB-C端子版といった理解で良いでしょうか?
Shure: ええ。スペック的には96kHz/24bitまで対応するようになりましたが、使い勝手としては同じです。我々のLTGケーブルとUSBケーブルは、ケーブルの形ではありますが同時に、SEシリーズに最適化したプレミアムなDACアンプでもあります。SEシリーズのユーザーの方には本当におすすめです。それから、MacBookなどUSB-C搭載PCのユーザーの方にも是非使用いただきたいです。
ーー SEシリーズがこのように新しい接続方法に柔軟に対応できるのは、MMCX端子によるリケーブル機構をいち早く採用していたおかげと思います。メンテナンス性を高めるために採用したリケーブル機構が、今このように活躍することは予想外の幸運だったのでは?
Shure: 実はリケーブル機構を採用した狙いには当初から、接続先に柔軟に対応することも含まれていました。遡れば、例えばSEシリーズよりも前の「E5c」にも、ケーブルの途中からその先を交換できる仕組みを搭載していたのです。その時点では主に航空機内端子への対応が目的でしたが、将来的にそういった役割も包括することも意識して、SEシリーズにはリケーブル機構を採用しました。
ーー 先を見据えてのリケーブル機構採用が、実際に期待に応えて大活躍しているわけですね。しかし現在はともかく、当時オーディオでの使用例は皆無だったMMCX端子の採用は、クオリティ的にもコスト的にも難しいところがあったのでは?
Shure: 実はその点は今も昔もあまり変わっていません。我々が使っているMMCX端子は、パーツメーカーにカスタムオーダーを出して作ってもらっている特注品でして、接触の確実性や耐朽性などクオリティは当時から万全でしたし、代わりにコストは現在も高いままです(苦笑)。
ーー SEシリーズ発売当初からずっとそのMMCX端子を?
Shure: ええ、最初に発売したときからずっとです。
ーー 僕は仕事柄、普通のユーザーよりも頻繁にリケーブルを行わざるを得ないのですが、SEシリーズは215も535も846も、発売されてから今日までイヤホン側のMMCXに問題が生じたことはありません。仕事道具としてとても助かっています。
Shure: 我々の製品の信頼性を実証してくれて嬉しいです。ありがとうございます。
ーー こちらこそありがとうございます。ところで「コンシューマー向けの使い勝手が良いモデル」ですが……
Shure: もう少し待ってください!今の時点で言えることとしては、我々は基本的にはプロシューマー向けブランドですので、製品の継続性も大切にしています。新製品を出すにしても現在の製品をそれで置き換えてなくしてしまうようなことはありません。その点はご安心ください。
(インタビュー/高橋 敦)