【一条真人の体当たり実験室】お風呂AV界の知られざる王者“ザバディ"、その驚異の実力
●自由時間の少ない現代人
普通の大人のウィークデイの生活時間は、いくつかのセグメントに整理することができると思う。仕事をするワークタイム、睡眠をとるスリープタイム、食事や風呂などの生活にかかるライフタイム、そして、趣味などのホビータイムの4セグメントに分けると、時間の使い方を把握しやすい。
1日は24時間だが、仕事と睡眠を除くと、自由に使える時間は意外に短い。8時間仕事をして、会社までの往復に片道1時間かかるとすると、ワークタイムだけで10時間は取られしまう。スリープタイムは削ると健康に悪いので、最低でも6時間以上は必要だろう。食事は1回で1時間として合計3時間(ビジネスアワーに昼食をすませれば2時間)、風呂に1時間かかるとすると、これだけで3〜4時間かかる。日常的なルーチンワークだけで合計20時間程度かかってしまうことになる。
しかも、サラリーマンなら仕事で1〜2時間残業というのもザラだろう。多くの人にとって、ウィークデイのパーソナルなホビータイムはせいぜい1〜2時間程度というのが現実なのではないだろうか。これではレコーダーでTV番組を録画してもなかなか見るひまがないし、ゆったりと音楽を楽しむ時間も持ちにくい。こうして、すべては週末の楽しみに持ち越されていく。
●もっと時間を手に入れるには?
そんな生活のなかで、よりリッチにウィークデイの時間を使うにはどうしたらいいだろう。最近、電車のなかで携帯デバイスを使っている人が多い。携帯でメールをする方もいれば、携帯ゲーム機でゲームをしたり、音楽を聴いたりしている。通勤や通学という時間を、ほかのことをすることで、より効率的に使っているわけだ。
生活のなかで、電車での移動中のように同時に他のことをすることができれば、時間を効率的に使うことができる。どんなことがそれにあたるかは人それぞれだと思うが、多くの人にとって、それはバスタイムではないだろうか。
なかにはバスタイムは数分程度とか、シャワーを浴びるだけという人もいるだろうが、多くの人はゆったりと長時間を過ごしているのではないだろうか。そんなバスタイムを他のことにも使えれば、時間をよりリッチに使えることになる。バスタイムに音楽を聴けたり、レコーダーに録りためた番組を見たりできれば、ウィークデイの時間効率は大きく向上するだろう。
●激動するお風呂AV界
通常のAV機器を風呂場で使うことは不可能だ。ただし、防水であることを売り物にしているAV機器がないわけではない。最近ではiPodなどのDAPを入れる防水パックが多くのメーカーから発売されているし、カシオがCDプレーヤーなどいろいろな防水AV製品を出していた記憶もあった。
ある日、ふとした興味で防水AV機器をリサーチしてみたところ、驚いたことにカシオは防水AV機器からすでに撤退していたのだ。G-SHOCKで定評のあるカシオのこと、ちょっと見ない間にハンパなく防水で耐ショックでクールな防水AV機器を発売しているかも、という僕の期待は大きく裏切られた。オーロラを撮影するためにアラスカに行き、深夜、零下30〜50度まで低下した気温のなかで、無敵なほどタフと信じていた僕のG-SHOCKが壊れた時のようなショックだ。
もはや、防水AV機器は絶滅の危機にあるのだろうか。時代は“お風呂でAV”などという心に余裕あるものを許容しなくなっているのか。なおもリサーチを続ける僕は、今まで見たことのないデバイスを発見した。その名は「ザバディ」。ツインバードという会社が発売する防水AV機器のシリーズ名で、DVDプレーヤーからワイヤレスモニター、ワンセグTVまで多彩なラインナップを揃えている。
ザバディシリーズはすべてIPX7相当の防水機能を持っていて、これは水深1メートルの、流れのない水のなかに30分放置しても浸水しないという水準であり、風呂のなかで使って濡らしてもOKなのだ。さすがに、お湯のなかに長時間沈めてしまうのはまずいが、誤って湯船に落としても、すぐに拾い上げれば問題ない程度の防水性能を持っている。
そして、さらに僕を驚かせたのは、調査時点で、価格.com「携帯テレビ」セグメントの「人気アイテムランキング」で、ザバディシリーズのワイヤレスモニター「LINK ZABADY VW-J707」がBRAVIAワンセグを抑えて1位になっていたことだ(編集部注:2008年4月10日現在ではBRAVIAワンセグが1位、LINK ZABADYは3位に後退している)。知らない間に、お風呂AV界はこれほどまでに激動していたのか…。僕は速攻でザバディの発売元であるツインバード社に連絡を取り、DVDザバディとリンクザバディをお借りして試してみた。
●7インチ液晶のポータブル防水DVDプレーヤー「DVDザバディ」
DVDザバディ(DVD ZABADY:VD-J712W)は7インチ液晶搭載のポータブル防水DVDプレーヤーだ。価格はオープン価格だが、Amazonでは現在2万2,300円程度と、ごくリーズナブルな価格で販売されている。ステレオスピーカー搭載(400+400mW)なので、ステレオでDVDや音楽を楽しむことができる。
対応メディアとしては市販DVDビデオのDVD-Video形式に加え、レコーダーの録画形式であるVR形式にも対応。さらにCPRMにも対応しているため、地デジ録画のCPRMディスクも再生可能だ。残念ながら、現時点ではAVCRECやHD Recの再生には対応していない。
しかし、音楽CDの再生も可能であり、さらにJPEG、MP3、MPEG4(動画)データを焼き込んだCD-R/RWディスクの再生にも対応する。その上、SDメモリーカード(SDHC不可)にも対応し、これもJPEG、MP3、MPEG4(動画)データを再生可能だ。少し残念なのは、SD-Audioには対応していないことだ。
駆動電源に関しては、充電池による駆動、AC電源による駆動、カー電源(DC12V)による駆動が可能だが、カー電源はオプションとなる。AC電源による接続時は防水にならないので、必然的に風呂では充電池による駆動となる。この充電池は5時間でフル充電となり、約2.5時間の駆動が可能と公称している。
●がっしりしたボディにハンドル付きで取り回しは安心
DVDザバディの実物を手にすると、思ったよりがっしりしていて、安心感がある。背面上部にハンドルがあるため、持ち運びに関しても濡れた状態でもすべって落としたりする心配がない。
DVDザバディはそのままの状態でも安定して立つが、背面のスタンドを使うことで、より安定して置くことができる。
DVDのセットは背面のカバーを開いて行う。バックルを引き、ロックを外してからカバーを開けるのだが、この部分のロックもなかなかしっかりしており、防水の面では安心感がある。SDメモリーカードスロットも、このDVDドライブの右下の部分にある。
操作ボタンとしては、本体前面左側に上から電源ボタン、音量調節スイッチ、明るさ調節スイッチ、右に再生、停止、スキップなどの再生コントロールボタンがある。しかし、DVDザバディにはリモコンが付属しており、設定やメディアの切り替えなどの細かい操作から再生までをリモコンで操作できる。
液晶は当然ワイド表示であり、DVD-Videoなどの16:9映像をフル画面で適正に表示できる。この液晶表示は通常の室内照明下では、デフォルト設定ではちょっと明るすぎて、コントラストが低いようにも見えるのだが、普通の部屋よりやや暗めな風呂場の照明レベルにはマッチしている。前面に明るさ調整スイッチがあるが、さらにリモコンで「設定」>「画質設定」を実行することで明るさ、コントラスト、色調、彩度などを設定することもできる。
ちなみにDVDザバディは、電源を入れた際にメディアが入っていると自動的に再生を開始する。優先順位が高いのはDVDビデオで、DVDとSDの両方のメディアがある場合は自動的にDVDビデオを再生する。DVDとSDの再生の切り替えはリモコンで可能となっている。
SDメモリーカードの再生を選択すると、エクスプローラのようなフォルダツリー画面が表示される。カーソルで目的のデータのあるフォルダを選択して目的のデータを確定すると、そのフォルダにあるメディアが次々に再生されていく。
●ワイヤレスでリビングのAV機器を操作できる「リンクザバディ」
リンクザバディ(LINK ZABADY:VW-J707S)は、送信機ユニットとワイヤレス7インチ液晶モニターの2つのユニットからなる。送信機を目的のAVデバイスとS端子やコンポジット接続して、その映像や音声をワイヤレスモニター側で楽しむことができる。
接続した機器からの映像データは送信機内でMPEG2に変換され、無線LAN(802.11a/b/g)でワイヤレスモニターに転送されて表示される。インターネット経由の視聴はできないが、仕組みとしてはソニーのロケーションフリーのようなものだと思えばいいだろう。ちなみに価格はオープン価格だが、Amazonでは3万8,800円程度で販売されている。
ワイヤレスモニター側はクレードルとセットになっている。このクレードルにACアダプターをセットし、モニターをセットしておくことで充電が行われる。クレードルは防水ではないので、当然、風呂のなかでは充電池で駆動することになる。8時間充電で2.5時間の駆動が行える。
リンクザバディの送信機には、3系統のAV入力端子があり、DVDプレーヤー、ハードディスクレコーダーなど、自分の好きなAV機器を接続することができる。
入力端子に接続した機器は、赤外線のAVコントローラーをセットすることで、付属のリモコンから遠隔操作することができる。
このリモコンは学習型で、操作する機器のリモコン信号を学習させることができる。あらかじめ各社のリモコン信号がプリセットされているのではなく、ユーザーが1つ1つリモコンのボタンを学習させなければならないのがちょっと面倒だが、送信機の3つの入力端子に接続したそれぞれのAV機器ごとのリモコン信号を学習できるという長所もある。
ちなみに、入力3系統はワイヤレスモニター側から、付属のリモコンで切り替えることができる。また送信機には入力1からの信号をスルー出力するための出力端子も備えている。
●撮影にはデジカメも防水が必要
さて、次は実際の風呂場での使用にトライするわけだが、AV機器に限らず、カメラのような精密機器も風呂場でまともに使うには、普通の製品では不可能だ。僕は普段であればデジカメ一眼で撮影をしているのだが、今回は風呂でのザバディを撮影するために、防水デジカメを調達した。機種はオリンパスの「μ790SW」。ザバディよりも1レベル高いJIS 保護等級8 相当の防水機能を持ったコンパクトデジカメだ。防塵設計でもあり、耐温度も-10度までOKというタフなデジカメだが、型落ちなので意外に安く入手できた。
●意外に使えるリモコンだが
DVDザバディに関して、はじめはDVDの再生程度の作業にリモコンが必要かと訝しんだが、実際に湯船につかっていると、少しでも動くのがおっくうになってしまうため、リモコン操作が可能なことはかなりのアドバンテージだ。リンクザバディはより複雑な操作が可能であるため、リモコン使用の頻度はさらに高い。ボタンも多く、DVDザバディよりも大型のリモコンになっている。
さて、はじめてザバディを使った人は、風呂場でのリモコンの置き場にやや戸惑うだろう。手の届くところにないと意味がないし、されとて風呂のふちなどに置いておくと、滑って湯船、あるいは風呂場の床に墜落する可能性が高い。手で持つという方法もあるが、水中に長時間没していると浸水してしまうので、水面より上に持っていなければならない。これでは手が疲れてしまう。ザバディを使うにはなんらかのリモコン置き場を考えておく必要がある。
僕はこの問題を解決するため、写真にあるようなバスブックスタンドを利用した。これは本来は本を立てるためのスタンドだが、ザバディのリモコンも余裕で置くことができる。この種のバスブックスタンドは最近ではバス用品を扱っている店でよく売っており、価格もリーズナブルなものが多いので、ザバディのリモコン置き場に困りそうな人にお薦めだ。ペットボトルなど飲み物も置けるため、水分補給にもバッチリだ。
ところで、DVDザバディの場合、濡れた状態でメディア交換ができないため、風呂に持ち込む前に慎重にメディア選びをすることが必要だ。DVDとSDの2つのメディアが使えるため、DVDには映像、SDにはお気に入りの音楽を入れておけば、DVDがハズレだった場合も、音楽を聴くことで対処できる。楽しむメディアの自由度という面では、機器さえ接続すればハードディスクレコーダーの録画からTV、DVDビデオ、音楽までを楽しめるリンクザバディのほうがやはり上だ。
●ザバディの防水に関して
ザバディの防水機能に関して限界を試したわけではないが、普通に浴槽の縁に置く場合、しばしば水はねがあたる程度なので、シャワーなどが強い勢いでかからないように気をつければ大丈夫だろう。リモコンに関しては、濡れた手で操作したのは当然だが、何度かうっかり湯船に落としてしまったことがあり、その場合、すぐに拾い上げて周りの水分をぬぐうように気を遣ったためか、特に支障はない。
僕はスキューバダイビングを少しかじっているので、水圧に関しては普通の人よりは考えが細かい。ザバディのような7等級の防水デバイスは、水深1メートルの静かな水中に30分放置してもOKという水準なのだが、水深1メートルの水圧というのはそう強くはない。そのため、これは濡れても大丈夫だが、シャワーのような勢いの強い水であれば、浸水してしまうレベルなのだ。防水という言葉を過信しないほうがいいだろう。
また、使用後はそのまま風呂場に置いておかずに、水分をよくぬぐって、2〜3時間はカバーを開けたりしないで乾燥させた。これはよく拭いたつもりでも、カバー周囲に水分が残っている可能性があるため、それを乾燥させるよう配慮したためだ。
●ザバディはお風呂AV界の王者だ
実際に風呂場でザバディを使ってみると、その実用性の高さと想像以上の快適さに驚かされた。液晶の画質と音質の絶対値に関しては、DVDザバディとリンクザバディは液晶サイズも同じであり、ほぼ同等という感じだ。どちらも風呂場で視聴するレベルであれば十分以上のクオリティを持っていると感じた。当然、リンクザバディに関しては送信機から風呂場まで電波が届かないと映像が表示できないわけだが、これは個々の住宅事情によるだろう。802.11a/b/gなので、普通のマンション程度であればまず問題ないと思う。
このようにDVDザバディ、リンクザバディは実用的な防水機能を持ち、バスタイムに楽しむには十分なAV機能を持つデバイスであることが確認できた。製品の作りもしっかりしていてクオリティが高く、価格のリーズナブルさを考えれば、そのコストパフォーマンスは恐ろしく高いと言える。
ユーザーのニーズに合わせて、DVDプレーヤー、ワイヤレスモニター、ワンセグTVまでが選択可能なのもザバディの魅力だ。ザバディは現在のお風呂AV界では見逃すことのできない存在であり、現時点でのキングと言っていいのではないだろうか。今まで、こんなナイスなAVデバイスをノーマークだったとは迂闊としかいいようがない。
ウィークデイに忙しく働いている人が限られた時間を効率的に使うためには、ザバディは悪くない投資なのではないかと思う。また、女性がゆったりと過ごすバスタイムのなかで、何か違う楽しみが欲しいという場合にもお薦めだろう。ザバディはあなたのバスタイムを変化させ、日常をよりリッチに変えるデバイスだ。
(一条真人)
執筆者プロフィール
デジタルAV関連、コンピュータ関連などをおもに執筆するライター。PC開発を経て、パソコン雑誌「ハッカー」編集長、「PCプラスワン」編集長を経てフリーランスに。All Aboutの「DVD ・HDDレコーダー」ガイドも務める。趣味はジョギング、水泳、自転車、映画鑑賞など。
普通の大人のウィークデイの生活時間は、いくつかのセグメントに整理することができると思う。仕事をするワークタイム、睡眠をとるスリープタイム、食事や風呂などの生活にかかるライフタイム、そして、趣味などのホビータイムの4セグメントに分けると、時間の使い方を把握しやすい。
1日は24時間だが、仕事と睡眠を除くと、自由に使える時間は意外に短い。8時間仕事をして、会社までの往復に片道1時間かかるとすると、ワークタイムだけで10時間は取られしまう。スリープタイムは削ると健康に悪いので、最低でも6時間以上は必要だろう。食事は1回で1時間として合計3時間(ビジネスアワーに昼食をすませれば2時間)、風呂に1時間かかるとすると、これだけで3〜4時間かかる。日常的なルーチンワークだけで合計20時間程度かかってしまうことになる。
しかも、サラリーマンなら仕事で1〜2時間残業というのもザラだろう。多くの人にとって、ウィークデイのパーソナルなホビータイムはせいぜい1〜2時間程度というのが現実なのではないだろうか。これではレコーダーでTV番組を録画してもなかなか見るひまがないし、ゆったりと音楽を楽しむ時間も持ちにくい。こうして、すべては週末の楽しみに持ち越されていく。
●もっと時間を手に入れるには?
そんな生活のなかで、よりリッチにウィークデイの時間を使うにはどうしたらいいだろう。最近、電車のなかで携帯デバイスを使っている人が多い。携帯でメールをする方もいれば、携帯ゲーム機でゲームをしたり、音楽を聴いたりしている。通勤や通学という時間を、ほかのことをすることで、より効率的に使っているわけだ。
生活のなかで、電車での移動中のように同時に他のことをすることができれば、時間を効率的に使うことができる。どんなことがそれにあたるかは人それぞれだと思うが、多くの人にとって、それはバスタイムではないだろうか。
なかにはバスタイムは数分程度とか、シャワーを浴びるだけという人もいるだろうが、多くの人はゆったりと長時間を過ごしているのではないだろうか。そんなバスタイムを他のことにも使えれば、時間をよりリッチに使えることになる。バスタイムに音楽を聴けたり、レコーダーに録りためた番組を見たりできれば、ウィークデイの時間効率は大きく向上するだろう。
●激動するお風呂AV界
通常のAV機器を風呂場で使うことは不可能だ。ただし、防水であることを売り物にしているAV機器がないわけではない。最近ではiPodなどのDAPを入れる防水パックが多くのメーカーから発売されているし、カシオがCDプレーヤーなどいろいろな防水AV製品を出していた記憶もあった。
ある日、ふとした興味で防水AV機器をリサーチしてみたところ、驚いたことにカシオは防水AV機器からすでに撤退していたのだ。G-SHOCKで定評のあるカシオのこと、ちょっと見ない間にハンパなく防水で耐ショックでクールな防水AV機器を発売しているかも、という僕の期待は大きく裏切られた。オーロラを撮影するためにアラスカに行き、深夜、零下30〜50度まで低下した気温のなかで、無敵なほどタフと信じていた僕のG-SHOCKが壊れた時のようなショックだ。
もはや、防水AV機器は絶滅の危機にあるのだろうか。時代は“お風呂でAV”などという心に余裕あるものを許容しなくなっているのか。なおもリサーチを続ける僕は、今まで見たことのないデバイスを発見した。その名は「ザバディ」。ツインバードという会社が発売する防水AV機器のシリーズ名で、DVDプレーヤーからワイヤレスモニター、ワンセグTVまで多彩なラインナップを揃えている。
ザバディシリーズはすべてIPX7相当の防水機能を持っていて、これは水深1メートルの、流れのない水のなかに30分放置しても浸水しないという水準であり、風呂のなかで使って濡らしてもOKなのだ。さすがに、お湯のなかに長時間沈めてしまうのはまずいが、誤って湯船に落としても、すぐに拾い上げれば問題ない程度の防水性能を持っている。
そして、さらに僕を驚かせたのは、調査時点で、価格.com「携帯テレビ」セグメントの「人気アイテムランキング」で、ザバディシリーズのワイヤレスモニター「LINK ZABADY VW-J707」がBRAVIAワンセグを抑えて1位になっていたことだ(編集部注:2008年4月10日現在ではBRAVIAワンセグが1位、LINK ZABADYは3位に後退している)。知らない間に、お風呂AV界はこれほどまでに激動していたのか…。僕は速攻でザバディの発売元であるツインバード社に連絡を取り、DVDザバディとリンクザバディをお借りして試してみた。
●7インチ液晶のポータブル防水DVDプレーヤー「DVDザバディ」
DVDザバディ(DVD ZABADY:VD-J712W)は7インチ液晶搭載のポータブル防水DVDプレーヤーだ。価格はオープン価格だが、Amazonでは現在2万2,300円程度と、ごくリーズナブルな価格で販売されている。ステレオスピーカー搭載(400+400mW)なので、ステレオでDVDや音楽を楽しむことができる。
対応メディアとしては市販DVDビデオのDVD-Video形式に加え、レコーダーの録画形式であるVR形式にも対応。さらにCPRMにも対応しているため、地デジ録画のCPRMディスクも再生可能だ。残念ながら、現時点ではAVCRECやHD Recの再生には対応していない。
しかし、音楽CDの再生も可能であり、さらにJPEG、MP3、MPEG4(動画)データを焼き込んだCD-R/RWディスクの再生にも対応する。その上、SDメモリーカード(SDHC不可)にも対応し、これもJPEG、MP3、MPEG4(動画)データを再生可能だ。少し残念なのは、SD-Audioには対応していないことだ。
駆動電源に関しては、充電池による駆動、AC電源による駆動、カー電源(DC12V)による駆動が可能だが、カー電源はオプションとなる。AC電源による接続時は防水にならないので、必然的に風呂では充電池による駆動となる。この充電池は5時間でフル充電となり、約2.5時間の駆動が可能と公称している。
●がっしりしたボディにハンドル付きで取り回しは安心
DVDザバディの実物を手にすると、思ったよりがっしりしていて、安心感がある。背面上部にハンドルがあるため、持ち運びに関しても濡れた状態でもすべって落としたりする心配がない。
DVDザバディはそのままの状態でも安定して立つが、背面のスタンドを使うことで、より安定して置くことができる。
DVDのセットは背面のカバーを開いて行う。バックルを引き、ロックを外してからカバーを開けるのだが、この部分のロックもなかなかしっかりしており、防水の面では安心感がある。SDメモリーカードスロットも、このDVDドライブの右下の部分にある。
操作ボタンとしては、本体前面左側に上から電源ボタン、音量調節スイッチ、明るさ調節スイッチ、右に再生、停止、スキップなどの再生コントロールボタンがある。しかし、DVDザバディにはリモコンが付属しており、設定やメディアの切り替えなどの細かい操作から再生までをリモコンで操作できる。
液晶は当然ワイド表示であり、DVD-Videoなどの16:9映像をフル画面で適正に表示できる。この液晶表示は通常の室内照明下では、デフォルト設定ではちょっと明るすぎて、コントラストが低いようにも見えるのだが、普通の部屋よりやや暗めな風呂場の照明レベルにはマッチしている。前面に明るさ調整スイッチがあるが、さらにリモコンで「設定」>「画質設定」を実行することで明るさ、コントラスト、色調、彩度などを設定することもできる。
ちなみにDVDザバディは、電源を入れた際にメディアが入っていると自動的に再生を開始する。優先順位が高いのはDVDビデオで、DVDとSDの両方のメディアがある場合は自動的にDVDビデオを再生する。DVDとSDの再生の切り替えはリモコンで可能となっている。
SDメモリーカードの再生を選択すると、エクスプローラのようなフォルダツリー画面が表示される。カーソルで目的のデータのあるフォルダを選択して目的のデータを確定すると、そのフォルダにあるメディアが次々に再生されていく。
●ワイヤレスでリビングのAV機器を操作できる「リンクザバディ」
リンクザバディ(LINK ZABADY:VW-J707S)は、送信機ユニットとワイヤレス7インチ液晶モニターの2つのユニットからなる。送信機を目的のAVデバイスとS端子やコンポジット接続して、その映像や音声をワイヤレスモニター側で楽しむことができる。
接続した機器からの映像データは送信機内でMPEG2に変換され、無線LAN(802.11a/b/g)でワイヤレスモニターに転送されて表示される。インターネット経由の視聴はできないが、仕組みとしてはソニーのロケーションフリーのようなものだと思えばいいだろう。ちなみに価格はオープン価格だが、Amazonでは3万8,800円程度で販売されている。
ワイヤレスモニター側はクレードルとセットになっている。このクレードルにACアダプターをセットし、モニターをセットしておくことで充電が行われる。クレードルは防水ではないので、当然、風呂のなかでは充電池で駆動することになる。8時間充電で2.5時間の駆動が行える。
リンクザバディの送信機には、3系統のAV入力端子があり、DVDプレーヤー、ハードディスクレコーダーなど、自分の好きなAV機器を接続することができる。
入力端子に接続した機器は、赤外線のAVコントローラーをセットすることで、付属のリモコンから遠隔操作することができる。
このリモコンは学習型で、操作する機器のリモコン信号を学習させることができる。あらかじめ各社のリモコン信号がプリセットされているのではなく、ユーザーが1つ1つリモコンのボタンを学習させなければならないのがちょっと面倒だが、送信機の3つの入力端子に接続したそれぞれのAV機器ごとのリモコン信号を学習できるという長所もある。
ちなみに、入力3系統はワイヤレスモニター側から、付属のリモコンで切り替えることができる。また送信機には入力1からの信号をスルー出力するための出力端子も備えている。
●撮影にはデジカメも防水が必要
さて、次は実際の風呂場での使用にトライするわけだが、AV機器に限らず、カメラのような精密機器も風呂場でまともに使うには、普通の製品では不可能だ。僕は普段であればデジカメ一眼で撮影をしているのだが、今回は風呂でのザバディを撮影するために、防水デジカメを調達した。機種はオリンパスの「μ790SW」。ザバディよりも1レベル高いJIS 保護等級8 相当の防水機能を持ったコンパクトデジカメだ。防塵設計でもあり、耐温度も-10度までOKというタフなデジカメだが、型落ちなので意外に安く入手できた。
●意外に使えるリモコンだが
DVDザバディに関して、はじめはDVDの再生程度の作業にリモコンが必要かと訝しんだが、実際に湯船につかっていると、少しでも動くのがおっくうになってしまうため、リモコン操作が可能なことはかなりのアドバンテージだ。リンクザバディはより複雑な操作が可能であるため、リモコン使用の頻度はさらに高い。ボタンも多く、DVDザバディよりも大型のリモコンになっている。
さて、はじめてザバディを使った人は、風呂場でのリモコンの置き場にやや戸惑うだろう。手の届くところにないと意味がないし、されとて風呂のふちなどに置いておくと、滑って湯船、あるいは風呂場の床に墜落する可能性が高い。手で持つという方法もあるが、水中に長時間没していると浸水してしまうので、水面より上に持っていなければならない。これでは手が疲れてしまう。ザバディを使うにはなんらかのリモコン置き場を考えておく必要がある。
僕はこの問題を解決するため、写真にあるようなバスブックスタンドを利用した。これは本来は本を立てるためのスタンドだが、ザバディのリモコンも余裕で置くことができる。この種のバスブックスタンドは最近ではバス用品を扱っている店でよく売っており、価格もリーズナブルなものが多いので、ザバディのリモコン置き場に困りそうな人にお薦めだ。ペットボトルなど飲み物も置けるため、水分補給にもバッチリだ。
ところで、DVDザバディの場合、濡れた状態でメディア交換ができないため、風呂に持ち込む前に慎重にメディア選びをすることが必要だ。DVDとSDの2つのメディアが使えるため、DVDには映像、SDにはお気に入りの音楽を入れておけば、DVDがハズレだった場合も、音楽を聴くことで対処できる。楽しむメディアの自由度という面では、機器さえ接続すればハードディスクレコーダーの録画からTV、DVDビデオ、音楽までを楽しめるリンクザバディのほうがやはり上だ。
●ザバディの防水に関して
ザバディの防水機能に関して限界を試したわけではないが、普通に浴槽の縁に置く場合、しばしば水はねがあたる程度なので、シャワーなどが強い勢いでかからないように気をつければ大丈夫だろう。リモコンに関しては、濡れた手で操作したのは当然だが、何度かうっかり湯船に落としてしまったことがあり、その場合、すぐに拾い上げて周りの水分をぬぐうように気を遣ったためか、特に支障はない。
僕はスキューバダイビングを少しかじっているので、水圧に関しては普通の人よりは考えが細かい。ザバディのような7等級の防水デバイスは、水深1メートルの静かな水中に30分放置してもOKという水準なのだが、水深1メートルの水圧というのはそう強くはない。そのため、これは濡れても大丈夫だが、シャワーのような勢いの強い水であれば、浸水してしまうレベルなのだ。防水という言葉を過信しないほうがいいだろう。
また、使用後はそのまま風呂場に置いておかずに、水分をよくぬぐって、2〜3時間はカバーを開けたりしないで乾燥させた。これはよく拭いたつもりでも、カバー周囲に水分が残っている可能性があるため、それを乾燥させるよう配慮したためだ。
●ザバディはお風呂AV界の王者だ
実際に風呂場でザバディを使ってみると、その実用性の高さと想像以上の快適さに驚かされた。液晶の画質と音質の絶対値に関しては、DVDザバディとリンクザバディは液晶サイズも同じであり、ほぼ同等という感じだ。どちらも風呂場で視聴するレベルであれば十分以上のクオリティを持っていると感じた。当然、リンクザバディに関しては送信機から風呂場まで電波が届かないと映像が表示できないわけだが、これは個々の住宅事情によるだろう。802.11a/b/gなので、普通のマンション程度であればまず問題ないと思う。
このようにDVDザバディ、リンクザバディは実用的な防水機能を持ち、バスタイムに楽しむには十分なAV機能を持つデバイスであることが確認できた。製品の作りもしっかりしていてクオリティが高く、価格のリーズナブルさを考えれば、そのコストパフォーマンスは恐ろしく高いと言える。
ユーザーのニーズに合わせて、DVDプレーヤー、ワイヤレスモニター、ワンセグTVまでが選択可能なのもザバディの魅力だ。ザバディは現在のお風呂AV界では見逃すことのできない存在であり、現時点でのキングと言っていいのではないだろうか。今まで、こんなナイスなAVデバイスをノーマークだったとは迂闊としかいいようがない。
ウィークデイに忙しく働いている人が限られた時間を効率的に使うためには、ザバディは悪くない投資なのではないかと思う。また、女性がゆったりと過ごすバスタイムのなかで、何か違う楽しみが欲しいという場合にもお薦めだろう。ザバディはあなたのバスタイムを変化させ、日常をよりリッチに変えるデバイスだ。
(一条真人)
執筆者プロフィール
デジタルAV関連、コンピュータ関連などをおもに執筆するライター。PC開発を経て、パソコン雑誌「ハッカー」編集長、「PCプラスワン」編集長を経てフリーランスに。All Aboutの「DVD ・HDDレコーダー」ガイドも務める。趣味はジョギング、水泳、自転車、映画鑑賞など。