「NA7004」とほぼ同等のネットワークオーディオ機能
ネットワーク機能はどこまで使える? − マランツの新AVアンプ「SR7005」を試す
■HDAMなどの独自技術による立ち上がりの速さが特徴
機能性は満点に近い本機。では音質を確認していこう。
肝心のアンプ部分だが、まずパワーアンプは全chがマランツ・クオリティを満たすディスクリート構成。プリアンプには電流帰還型(カレント・フィードバック)増幅回路を採用。そしてここに独自の高速応答増幅素子HDAMを組み合わせる。電流帰還型回路もHDAMも、ともに立ち上がりの速さが強みであり、相乗効果が期待できる。
「ヱヴァンゲリヲン新劇場版・破」の冒頭では、密閉されたエントリープラグ(コックピット)に全周囲から流し込まれる、音声、電子音、機械音などの情報量を余さず描写。音調は滑らかだが、発信直前の緊迫は損なわず臨場感たっぷり。出撃後、鉄壁のトンネルに響く爆発音も良い感触。重さを引きずらずにスパッと抜ける。
場面が変わって、大気圏外から落下してくる巨大使徒に対する作戦行動。この場面では荘厳なスコアが背景となるが、その広がりとキレの良さも文句なしだ。重厚というよりは端正。それでいて十分な力感も備える。
「ダークナイト」からは、バットマンとジョーカーが対峙する取調室の場面をチェック。我らがバットマンが無抵抗のジョーカーを殴打し続けるが、本機はその音を重く、ここではやや硬質に描き、肉と骨で言えば骨の成分が強い。怖さ、凄みを増す。
両者の台詞の対比も良好。バットマンの台詞は押し殺しされて胸で響き、激情。ジョーカーの台詞は芝居がかって軽妙。その感触の違いも明確に描き分ける。
■端正ではあるが大人しくはなく、甘口であるが緩くはない
音楽BDは「CHRIS BOTTI IN BOSTON」を聴いた。
まずはベースがよい。エレクトリックだが木質の甘い音色。ドラムスも、本来はもう少しタイトな響きだが、本機はそれをちょうどよい甘さにして描き出す。しかし甘いと言っても制動に欠けるわけでなく、ベースの音程感は低いポジションまで確か。女性ボーカルの声の抜けっぷりも文句なしだ。
ステレオ音楽ソースはJacintha「Lush Life」などを聴いた。声のフォーカスはビシッと決まる。シンバルのほぐれた音色で、ハードヒットのときには粒子がぶわっと飛び散る。ベースは低いポジションでは音色が薄れるが(スピーカー側の限界だろう)、出ている範囲においては充実した音色。
まとめると、端正ではあるが大人しくはなく、甘口であるが緩くはない。バランス感覚に優れたチューニングが行われている。
■筐体やユーザーインターフェースのデザイン性にも優れる
新デザインの筐体は、一見したところディスプレイが見当たらない。しかし電源を入れると中央の丸い枠が青く灯され、入力ソースと音量が表示される。邪魔にならない表示形式だ。
もちろん、主な情報を一覧できるメインディスプレイも用意されている。フロントパネル下部のカバーを開けるとそこに、ディスプレイと各種ボタンが収められているのだ。普段は閉めて外観をすっきりさせておいて、必要に応じて開ければよい。
デザイン性に優れるのはハードだけではない。メニュー画面がHDMI出力に重ねて透過表示されるのも、視聴時の流れや雰囲気を壊さないための配慮だろう。メニューの色調なども野暮ったさがない。このあたりにも気が回されている。
一体型の最上位にふさわしい音質。そして実用的で使いやすいネットワーク再生を筆頭に機能面も充実。それでいてのこの価格帯だ。挑発的な製品と言える。
(高橋敦)