人気スピーカーブランドがヘッドホン参入
【レビュー】KEF初のヘッドホン「M500」/イヤホン「M200」最速インプレッション
■「M200」試聴インプレッション ー 様々なジャンルの音楽をバランス良く再現
M500と同じく、第5世代のiPod touchにALAC形式で保存した音源で試聴を行った。参考用にSHUREのイヤホン「SE535 SE」も用意した。リスニングに使ったタイトルは下記の通り。イヤホンのイヤーチップは「L」サイズを使用した。
・JUJUのライブアルバム「MTV UNPLUGGED JUJU」から『I Like it』
・マイケル・ジャクソン「This is it」から『Wanna Be Startin' Somethin'』
・アン・サリーのアルバム「Brand-New Orleans」から『Sweet Georgia Brown』
・ラフマニノフ「Rachmaninov Plays Rachmaninov」(Decca)から『Liebesfreud』
JUJUは低域の音があっさりとしている。ドラムスのキックやベースのサウンドは、もう少し骨太でも良いかもしれない。アコースティックギターの弦はドライな響き方。細やかなブレスの再現など、生っぽさは上々。バンドの演奏も見晴らしがよい。
マイケル・ジャクソンはドラムスやブラスの高域が気持ちよく抜け、煌びやかなサウンドが楽しめる。中低域とのバランスも良好。演奏全体がタイトに引き締まっている。音楽のナチュラルな再現性が損なわれる心配はない。メインボーカルとコーラスとの間の奥行き感は程よく深い。高域のサウンドを中心に細かな音を拾い上げるので、通常のイヤホンでは聴こえない世界が広がり見えてくる。
アン・サリーの楽曲はボーカルにピアノ、ハモンドオルガン、ウッドベース、ドラム、テナーサックス、トランペットのバンド編成。楽器の数が多く、終始リズミカルな演奏が続くが、クールで落ち着いた、アダルトな雰囲気を再現する。SE535 SEで聴くと、こってりとしてウォームで、プレーヤーとの密着感を感じるサウンド。さながら小さめのライブハウスで演奏を間近に聴いているような感触だが、片やM200では会場のサイズがグッと広がり、例えるならブルーノート東京のような落ち着いた雰囲気のジャズ・クラブで演奏に耳を傾けているような印象。ボーカルに対して楽器の音像が少し奥側に引っ込む感じもあるが、それぞれのエネルギー感が失われることはない。音のイメージから眼前して浮かび上がるステージの空気は、どこまでも澄み切っている。
ラフマニノフは音の粒立ちがきめ細かく、音の立ち上がり・立ち下がりが鋭くスピーディー。数多の音符が連なるパートでもラフマニノフの高速な運指を軽やかに、余裕たっぷりに再現する。音像は若干細めだが、しばらく聴き込むうちに、高音を中心に自然に音が伸びる部分が心地良く感じる。長時間のリスニングが快適に行えるよう、音が練り上げられている。
聴き始めた当初は、低域の量感が少し物足りなく感じる場面があったが、全体のバランス感覚と自然な再現力は安定して高いレベルをキープしていた。試聴した時点でも高い完成度を実感できたが、エージングを重ねていけば、ややドライに感じられるサウンドに色艶が乗ってくるのでは、という期待も高まり、KEFのイヤホンならではの個性が、さらに華開くポテンシャルが感じられた。