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<山本敦のAV進化論 第43回>ハイレゾに迫る音質は本当か

ソニーの“ハイレゾ相当”コーデック「LDAC」の実力とは? 最新ヘッドホン「MDR-1ABT」で検証

公開日 2015/02/10 10:55 山本 敦
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ビル・エヴァンス・トリオの「Waltz For Debby」から『Milestones』(192kHz/24bit・FLAC)では、ウッドベースの低域に脚力が増して、スピーディーで緊張感溢れる演奏が楽しめる。ピアノのトーンもしなやかさを増して、ドラムスのスネアは音像のエッジがシャキッとした鋭さを増す。情報量が増えて中高域の密度もぐんと高まるので、演奏がよりダイナミックになってヒートアップしてくるようだ。同じ曲を再生しながらSBCにモードを切り替えると、演奏がか細く痩せた印象に変わってしまうのがよくわかる。

MDR-1ABTはヘッドホン自体のパフォーマンスが高いので、LDACによってもたらされるメリットがはっきりと見えてきて面白い。従来のワイヤレスオーディオ再生では味わえなかった“いい音”がベストコンディションで味わえる組み合わせだと思う。


■ワイヤレス再生の進化を実感。LDACの設定まわりはもっとシンプルになって欲しい

音質向上に明らかな違いが感じられるLDACだが、反面、NW-ZX2ではインターフェースが少し使いにくいように感じられた。

まず標準の音楽再生プレーヤーアプリである「W.ミュージック」インターフェースにLDACの設定が組み込まれていない。LDACの音質設定、あるいはSBCとの切り替えるためのメニューは、本体設定の「Bluetooth設定」まで移動しなければ設定ができないので、音質の違いを聴き比べたい時には面倒な操作が必要になる。

LDAC関連の設定項目は「Bluetooth設定」の中にある。W.ミュージックアプリに統合されればより使いやすくなるのではないだろうか

ワイヤレスオーディオ再生中にコーデック設定がLDACなのかSBCなのかを、プレーヤー画面でモニターできる表示も欲しい。現状ではウォークマンに対応機器をペアリングした際、あるいはLDACとSBCを設定メニューから変更した際に、画面の左上に1〜2秒のわずかな一瞬に「LDACで接続しました」と表示されるだけである。特にLDACの方は3つの音質設定も含めて、文字やアイコン等でアプリの画面上にもステータスが表示されれば、万一音切れ等が発生した際に原因が突き止めやすくなると思う。

LDAC対応機器を接続すると、ステータスバーに「LDACで接続しました」という表示が1〜2秒ほど表示される。現状の接続状態がLDACかSBCなのかが常時わかるようアイコンなどで表示されればより快適に使えるようになるのでは

せっかくセンセーショナルなほど効果の差が味わえるLDACなので、もう少し目立つように機能をアピールしてもいいのではないかと感じた。ファームウェア更新等で改善されることを願いたい。


LDACによる高品位なワイヤレス再生のメリットを享受するためには、送信側と受信側の双方がともにLDACに対応している必要がある。LDAC対応のオーディオ機器は当面、開発元であるソニーの製品が中心になりそうだが、ソニーのオーディオ製品の開発担当者に訊ねたところ、将来はLDACのライセンスを他のパートナーに提供していくことも検討しているという。

ハイレゾに迫る高品位なワイヤレスサウンドが味わえるLDACが登場したことで、現在はBluetoothの便利さを基準に音楽やオーディオ機器を楽しんでいるユーザーが、より“いい音”に出会い興味を深めるきっかけが広がるだろう。今後LDACがどんなかたちで広がっていくのか楽しみだ。

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