[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第117回】DSDとは何か? 原理や音の特徴、おすすめソフトまでまるごと紹介
■DSDのUSB伝送〜DoP〜
さて音楽を作る側でのDSDの問題は主には「編集性」なわけだが、我々再生する側での問題は「再生環境」だ。ここ数年でかなりの改善、再生環境の普及が進んできたことは事実。しかしまだ「何も気にしなくてよい」というほど万全ではない。再生環境についても一通りおさらいしておこう。
まずPCとUSB-DACを組み合わせての再生システムでは、DSDデータをどうやってPCからUSB-DACに送り出すかという問題がある。USBの音声データ伝送規格はPCMを想定して設計されており、DSDには本来は対応していない。
そこで考え出されたのが「DoP(DSD Audio over PCM Frames)」という手法であり規格だ。PCからはDSDデータをPCMデータと偽装して送り出し、その際に「これPCMのふりして実はDSDデータですよ」というマークを付けておく。するとDoP対応USB-DACはそのマークを見つけると「お!これはPCMに見せかけてあるけどDSDだな!」と検知してDSDとして受け取り、再生するのだ。
ちょっと強引なやり方なので、当初は、例えばDSDの曲とPCMの曲の変わり目で無視できない大きさのノイズが出たりといた不手際も目立っていた。しかし最近の製品では各社の対策が進んで安定性も高まってきている。
なおこの方式でのDSD再生には、送り出し側のPCの再生アプリと受け手側のUSB-DACの両方がDoP対応であることがもちろん必須。現在においてUSBでのDSD伝送のほぼ標準と言える規格なので、対応製品は多い。
他には、DAW「Cubase」で知られるSteinberg社が提供するオーディオAPI「ASIO 2.1」を用いる方法もある。ただこちらはMacには非対応なので、広く標準的な規格にはなりにくいかと思う。
またDoPの安定性等への懸念からか、独自の伝送方法を採用しているメーカーもいくつかある。それらもおおよそはDoP的な手法のようではあるが、対応を自社製品に限定して最適化することなどで安定性の向上などを図っているのだろう。