【特別企画】様々な映像ソースで実力を確認
HDR時代を見据えた東芝の新旗艦テレビ「レグザZ20X」の画質を山之内正が徹底チェック
特に屋外のシーンは、一見すると階調よりもコントラストを強調したように見える場面が多い作品だが、さきほどと同様、アドバンスドHDR復元プロをオンにすることで、雲や空の描写に立体感が生まれ、フラットな調子が一転して遠近感豊かな映像に生まれ変わるのだ。
工場のなかの陰影やチャッピーの質感の表現にも同じことが当てはまる。いわゆるビデオ的な映像という印象が強い作品の場合、あえてアドバンスドHDR復元プロを活用することによって、映画らしい豊かなトーンと3次元の立体感を同時に引き出せる好例だ。
■新エンジンの成果は「映像からはっきり読み取ることができた」
『ゼロ・グラビティ』では、宇宙服やステーションの質感描写のきめ細かさに感心させられるとともに、背景の宇宙空間の吸い込まれるような深い黒の描写に目を奪われる。バックライトの制御技術を高度化することで、明暗差の極端な部分でも違和感のない描写を実現しており、カメラが大きく動いてもその描写が破綻することはない。
さらに、分割数を増やしたことを活用したレターボックス黒レベル制御を「オート」に設定すると、僅かに残っていた上下の黒帯部分の浮きもほとんど解消し、映像との境界部分が見えなくなる。暗室環境で見たとき、従来モデルとはこの作品の印象が変わったように感じるのは、この黒表現の違いが大きく貢献しているに違いない。
『アラビアのロレンス』でも同様な効果が顕著で、砂漠で野営する場面など、背景の奥の深さは従来モデルとは一変している。
今回はBDソフトを中心にZ20Xの画質を検証したが、本機の進化は地上デジタル放送の受信画像でもはっきり確認することができる。特に、輪郭にまとわりつくノイズが一掃され、すっきりとした描写に生まれ変わったことは誰の目にも明らかな改善ポイントの一つだ。
普段は放送番組を見通しの良い高画質で楽しみ、映画をじっくり見るときは、アドバンスドHDR復元プロなどの画質改善機能を駆使して、立体感豊かな映像を堪能する。そして、まもなく登場予定のUHD BDの真価を引き出す用途も見逃すことはできない。
次世代を見据えた新開発の映像エンジンを積んだ成果はその映像からはっきり読み取ることができた。Z20Xが活躍する場面がこれから大きく広がっていくことは間違いない。