ELECOM「EHP-R/CC1000A」を聴く
エレコム往年の大ヒットイヤホン「Colors」がハイレゾ対応で復活! その実力とは?
逆にこれまでのモデルと異なる点としては、先ほど例として名前を出したモデルは全体が金属ハウジングなのに対して、こちらはリアハウジングのみが真鍮。あとドライバー口径は8.8mmと他より小さめだ。
このあたりは音質面では不利になりがちな要素だが、ドライバーの小径化はむしろ高域特性の改善に繋がり、スペック的にも45kHzと伸びている。 またシンプルな構造は軽量&コンパクト化にもつながり、その装着感はエレコムのハイレゾ対応イヤホンの中でトップクラス。コストも抑えられ、ハイレゾのエントリー価格帯製品として、むしろ魅力にもなり得るだろう。
■細かな使い勝手にも配慮した設計
使い勝手の面では他に、プラグケースには根元が細くなるような段差が設けてある。これはスマホケースとの干渉でプラグが差込めなくならないようにだ。周辺機器メーカー大手としてスマホケースも販売しているエレコム、さすがこういうところも見落とさない。
とはいえ、技術的に興味深かろうが、ルックスがかわいかろうが、使い勝手がよかろうが、音がよくなければどうにもならない。しかしそこはもはや「意外でもない」安心のエレコムクオリティだ。相対性理論「たまたまニュータウン (2DK session)」のハイレゾ音源を中心に聴いた印象を述べていく。
■音の速さやキレに優れ、中高域のエッジが際立つ
あえて指摘すべき点から挙げておくと、やはりドライバー口径が小さくなったためか、音の重心は好評の既存モデルよりも少し上に移動。ベースやバスドラムの重みや厚み、響きの空気感といったところは上位モデルに譲る。またシンバルの音色など、高域に若干の強調を感じることもある。
だがいま挙げた部分は、持ち味として考えたい。全体的に音の速さやキレに優れ、中高域のエッジが際立つ。大口径ダイナミック型の余裕やバランスに対して、良質な小中口径ダイナミック型ならではの強みを備えている。
高域に少し強調される箇所があると書いたが、その代わりにギターのピックが弦に当たる瞬間のカチッとした感触、スネアドラムのカツンと硬質な抜けや背面スナッピーのザザッというバズ成分などは、より強く生々しく耳に届いてくるようになる。
低域の楽器も低音の締まりと中高域の速さのおかげで、バスドラムもベースもバシッとくっきりとしたアタック、音像だ。前述のようにシンバルにもアクセントがあるので、リズムは正確だしその届きも明確に伝わる。
少しマニアックなたとえだが、「16ビートを刻むハイハットシンバルのオープンクローズのキレ味が大好き」というような方にとって、このイヤホンはそれをさわやかに実現する実力を備えている。
またこのカッチリした明確なサウンドは、遮音性の良好さとも相まって、屋外利用時の聴き取りやすさの面でも有利に働く。
サウンドにはほどよい個性があり、だから好みを判断しやすいはず。その上で繰り返しになるが、ルックス、装着感、使い勝手は見事なレベルを実現している。
これぞエレコムと言えるキュートな名シリーズに、「オーディオに本気」な現在のエレコムの技術を詰め込んだ、まさにエレコム創立30周年を象徴するモデルの誕生だ。