<山本敦のAV進化論 第109回>
【新旧対決】新しい“ウォークマンA”はどこが変わった?A30シリーズ徹底解析
ホーム画面を見てすぐにわかる通り、A20シリーズまで搭載されていた動画・写真の再生機能が新機種では省略された。本体の内蔵メモリーやSDカードにマルチメディアファイルを保存してメニュー画面からフォルダを開けてみると、音声系のファイルしか表示されない。
オーディオプレーヤーとしてズバッと割り切った仕様だが、ウォークマンの入門機としてはいま「単機能」に絞り込むのが正しい選択だったのかどうかは個人的には疑問だ。仮に動画や写真はスマホで見れば十分だから不要という考え方が妥当だったとして、代わりにWi-Fi対応にしてSpotifyなど音楽ストリーミングにもつながるようになって、よりいい音で楽しめる機能が充実すれば、さらに幅広い音楽ファンの好奇心を刺激できると思った。
とはいえ、新しいA30シリーズがいま最もカジュアルにハイレゾを楽しめる絶好のポータブルオーディオプレーヤーの一つであることには変わりがない。
3.1インチのタッチ液晶、薄さ10.9mm、軽さ約98gというコンパクトサイズは片手持ちでの操作にとても収まりがいい。長らく5〜5.5インチ台のスマホで音楽を聴いていた筆者も、久しぶりに片手操作で気持ち良く音楽再生を楽しむ感覚を思い出した。液晶画面には指紋が着きやすいので、同時期に発売される専用の液晶保護フィルムは即買いすべきアイテムだ。
サイドのボタンレイアウトも理にかなっている。音楽の再生操作はこれで大抵のことがまかなえるし、ポケットの中に入れて手探りでもボタンを操作しやすい。HOLDボタンも搭載されているので、勝手に再生ボタンが押されているなど、誤操作の心配も少ない。カラバリはA20シリーズにも採用されている5色を基本としているが、シルバーがなくなった。
ハイレゾ音源再生時の連続音楽再生は30時間のスタミナ仕様。MP3なら45時間なので、長時間の音楽再生も万全だ。旅のお伴に最適なプレーヤーになってくれそうだ。
内蔵メモリーが64/32/16GBと比較的小さめで、SDカードスロットも1基だけだが、Aシリーズの機動力、価格面でのメリットを考慮すれば妥当な仕様だと言える。
■試聴:様々な音質的こだわりの効果は?
音質面では、アンプ電源においてA20シリーズでは1個だけ搭載していたPOSCAPをA30シリーズから5個に増やして、低域再生のパンチ力の向上させた。クロックも44.1kHz系と48kHz系を個別にしたデュアルクロック仕様にして、音の透明感に磨きをかけた。
このあたりの効果が実際のサウンドにどう表れているのか、A20シリーズと比べながらA30シリーズの実力を検証していこう。今回の比較試聴には本体に付属するハイレゾ対応イヤホンのほか、カスタムIEM「FitEar Air」、オーディオテクニカのヘッドホン「ATH-MSR7」を使っている。