LDACにも対応のUSB-DAC/プリメイン
コンパクトで高品位、なおかつ「全部入り」 − ティアック「AI-503」を小原由夫が聴いた
AI-503のUSB-DAC部の性能は、最新フォーマットにも準備万端だ。最大11.2MHzの1ビットDSD、384kHz/32ビットのリニアPCMに対応している。ひとえにこのスペックを実現したのは、旭化成エレクトロニクスのDAC IC「VERITA AK4490」の採用にある。
しかも本機ではこのチップをL/R各チャンネルに1基ずつモノラルで搭載するという贅沢な仕様。このD/Aコンバーター部からプリアンプ部に至るまで、デュアルモノーラル構成で貫かれている点がセールスポイントだ。44.1kHz/48kHz の2系統のデジタル信号にきっちり準拠すべく、高性能の内部クロックを周波数別に配備している点も嬉しい。
プリアンプ部は独自の「TEAC-QVCS」ボリュームコントロールによる全段バランス処理/フルバランス伝送回路になっている。外部のパワーアンプやアクティブサブウーファーとの接続にも配慮したプリアウト端子付きである。
パワーアンプ部はローレベルの再現力に優れ、電力利用効率の高いICEpower社製のクラスD方式アンプだ。既に10年以上の実績を持つ同アンプは、小型ブックシェルフはもちろん、大型のフロア型スピーカーさえ十全にドライブする能力を秘めている。
電源部は大型トロイダルトランスを擁した強力なもの。筐体は全面に金属製パネルを採用し、高い剛性を備え、電磁ノイズ対策にも万全の構えとなっている。
■ハイレゾ、CDを聴く。ドライブ力の高さを実感
早速USB入力からのハイレゾ再生を試した。送り出しはMacBook Air、プレーヤーソフト は「TEAC HR Audio Player」、スピーカーはB&Wの小型ブックシェルフ「CM1 S2」を準備した。
2連の針式レベルメーターがレトロチックな雰囲気を醸し出す。ボリュームノブにも数値が刻まれている(-dB表記)。
ドライブ力は思いのほか高い。シーネ・エイの女性ジャズヴォーカルにはそこはかとない色艶が感じられ、音像定位も克明。ベースはたっぷりとした胴鳴りで、逞しく響く。演奏全体がサルサのリズムで軽快に弾んでいる。ローエンドが厚く再現されるのは、スピーカーとの良好な関係が保たれている場合のICEpowerの特徴である。
11.2MHzの女性ヴォーカル、Ryu Mihoを聴いた。耳がこそばゆくなるようなウィスパーヴォイスがくっきりリアルに響く。実にしっとりとした瑞々しい質感のネイティブDSD再生だ。旭化成AK4490 DACチップの面目躍如たるところだろう。
CDプレーヤーからのライン入力のサウンドは、AI-503内蔵のプリアンプ部、TEAC-QVCS回路のクオリティが物をいう。これまたすっきりシャープで、切れがよい。井筒香奈江のヴォーカルは、リヴァーブがナチュラルで、ストレートな描写力という感じだ。ふくよかなベースの響きも申し分ない。