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電子ピアノ開発で培った技術を投入

【レビュー】オンキヨー「A-9150」 ー レコード再生もハイレゾもカバーする最新プリメイン

公開日 2017/08/28 11:24 山之内 正
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オンキヨーのプリメインアンプ「A-9150」を山之内正氏がレビュー。河合楽器製作所と業務提携の元で行った電子ピアノ開発の技術やノウハウを投入しつつ、ハイレゾからアナログレコードまでを高品位に再生することを目指した先進的な本機を、各ソースでじっくり聴いた。

オンキヨーのプリメインアンプ「A-9150」(¥62,000/税抜)

現代のアンプに求められる性能をクリアした「A-9150」

アンプに求められる性能や機能は時代によって変わる。メディアが変わり、プレーヤーが多様化すれば、アンプが満たすべき内容もそれに合わせて進化するのは当然のことだ。

それでは現代のアンプには何が求められているのか。その答えは2つ、多様な音源への対応と本質的な音質改善という2つの要素に絞ることができそうだ。オンキヨーから登場したプリメインアンプA-9150はその端的な製品なので、この注目モデルを例にもう少し具体的に説明しよう。

A-9150正面

A-9150は現代のアンプに求められる性能と機能をフルサイズの筐体に統合した最新モデルである。外見はシンプルだが中身は充実しており、デジタル信号を受け入れるD/Aコンバーターに加えてMM/MC対応のフォノイコライザーアンプまで内蔵して多様な音源に対応する。「レコードからハイレゾ音源まで」というカタログの一文は、誇張がないどころか、多様なソース機器とつながるこのアンプの特徴を端的に伝えている。ちなみにアナログ入力はフォノ以外に5系統、デジタルも光と同軸併せて4系統の入力をそなえるので、入力端子不足に悩まされる心配はない。

背面端子部

先に「本質的な音質改善」という条件を挙げたのは理由がある。デジタル録音のクオリティが近年著しく向上し、ハイレゾ音源が広く浸透するなか、アンプにはレンジの拡大だけでなくさまざまな音質改善が求められるようになった。特に、音の立ち上がりを正確に再現することと位相の正確な管理はとても大切で、前者は音色の忠実な再現、後者は立体的な空間表現に欠かすことができない。

A-9150の場合は、スルーレートの速いアンプモジュールをディスクリートで構成した「Discrete SpectraModule」を搭載することによって、一音一音の立ち上がりを正確に再現する能力を高め、アナログ信号やハイレゾ音源など帯域の広い音楽信号の音色を忠実に再現する性能を追求した。

新しい試みが多数投入された意欲的なプリメインアンプ

このアンプモジュールを開発するうえで、楽器メーカーである河合楽器製作所との技術提携が重要な役割を演じたことは見逃すことができない。創立90周年を迎えた河合楽器製作所は、KAWAIブランドの長い歴史のなかで音に磨きをかけ、究極の美しい響きを追求してきた。そうした楽器メーカーとしてのノウハウはアコースティック楽器では存分に発揮することができるが、いわゆる電子ピアノなどデジタル技術を援用した楽器については、音響メーカーが有するエレクトロニクス技術が音質改善に寄与する可能性が高い。

KAWAIとの技術提携により生まれた「Discrete SpectraModule」アンプモジュール

KAWAIとオンキヨーの技術提携はそうした観点で一昨年から進められてきたが、楽器としての成果はKAWAIのデジタルピアノ「NOVUS NV10」として実を結び、10月に発売を予定している。一方、オーディオ機器として技術提携の成果を投入した第一号機が今回のA-9150であり、前述のDiscrete SpectraModuleをはじめとする基幹技術にノウハウが活かされている。楽器とオーディオ機器はどちらも音楽に欠かせない存在だが、アナログ時代は近いようで遠い存在という認識が強かったように思う。音源のデジタル化とともにその状況が劇的に変化し、ここにきて従来以上に両者の距離が縮まることになったのは非常に興味深いことだ。

A-9150には他にも重要な音質改善技術が投入されている。デジタル信号処理特有の高周波歪に起因する可聴帯域の音質劣化を防ぐDIDRC(Dynamic Intermodulation Distortion Reduction Circuitry)フィルターはその代表的なもので、特徴的なノイズをDAC後段で適切に抑えることによって純度の高い再生音の実現を狙う。そのほか、MM/MCカートリッジに対応するフォノイコライザーアンプは独立基板構成で諸特性の改善を図っているし、電源回路の低インピーダンス化を徹底することで瞬発力を高めるなど、アンプとしての本質的な音質改善に力を注いでいる。

MM/MC型どちらのカートリッジにも対応。前面パネルのボタン長押しで切り替える

独自のDIDRCフィルターを搭載するDAC部

機能面では中音域への影響を抑えたバスブースト機能、プリアウト/メインイン端子の装備が目を引く。特に後者はAVアンプと組み合わせるなど、システムの拡張に対応する機能として注目したい。

楽器メーカーとの技術提携など新しい試みがどんな成果を生んでいるのか、大いに興味が湧く。そこでソース機器として、同じくオンキヨー製のネットワークプレーヤー「NS-6130」とレコードプレーヤー「CP-1050」を本機につなぎ、ELACのフロア型スピーカーFS249を組み合わせて試聴を行った。ハイレゾとアナログレコードという対照的な2つの音源を聴くことで、本機の実力を見極めることが狙いだ。

試聴風景。スピーカーにはエラックのFS249を組み合わせた

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