フォノイコも刷新
マランツ「PM8006」レビュー。10万円台前半の定番プリメインが電子ボリューム搭載で音質を強化
『ジャズ・アット・ザ・ポーンショップの即興的フレージングのダイナミクスの大きさ、ヴィブラフォンのマレットの素早い動きなど、実演に接していないと伝わりにくい表現を臨場感豊かに再現し、ステージとの近さが実感できる。聴きなじんだ音源だからこそ、アンプの基本性能の差が生む再生音の微妙だが本質的な違いが鮮明に聴き取れるのだ。
■アナログ再生はレコード特有の感触をストレートに引き出す
オーディオテクニカのカートリッジ「VM750SH」を、テクニクスのアナログプレーヤー「SL-1200G」に取り付けてレコードを再生する。ボリューム回路の違いが生むクオリティ感の違いはフォノ入力でも確実に聴き取ることができるが、それに加えてPM8006のサウンドはいくつか明確なアドバンテージがある。
まずは各楽器の実在感の高さ、そして一音一音の鮮度の高さに注目したい。オーケストラの木管や金管楽器の肉厚で密度の良い音色、ピアノやベースのアコースティック感豊かな音調など、ジャンルや編成を問わず旧作に比べてダイレクト感が強く、勢いの強さに説得力がある。
ケンペ指揮シュターツカペレ・ドレスデンの演奏による《火の鳥》は音圧が上がり音数が増えるトゥッティでも響きが飽和しないうえに、マッシブな押し出しの強さもそなわる。
A.ドムネラスのサックスはハイレゾ音源とはひと味違うボディ感豊かな音が心地よく、ピアノの左手とベースの動きは軽快感が向上、レコードでなければ味わえないストレートな感触を存分に引き出している。
これから本格的なHi-Fi再生に取り組もうとする音楽ファンにとって、マランツの8000シリーズの存在意義はとても大きい。プレーヤーやアンプを変えると音が大きく変わり、音楽的な表現力が左右されることに気付かせてくれる。従来モデルもそんな役割を担っていたが、ND8006とPM8006はオーディオ機器がもたらす表現力の違いがさらに際立っている。演奏との距離感、ダイレクト感を求める音楽ファンに特にお薦めしたい。
(山之内 正)