画質に対する真摯な姿勢を実感
【測定】「iPhone X」の有機ELディスプレイを検証。テレビ調整の基準に使える驚異のクオリティ
■目視評価
【色および明暗の再現性】
測定結果で制作基準に高精度に沿っていることが分かったが、目視でも芝や木の葉の緑が適切な彩度と明度で表示され、蛍光色に見えてしまうことはない。iPhone 7を凌ぐナチュラルな表現だ。
一般的に有機ELパネル採用モデルは、広色域で鮮やかに見せようとする製品が多いなか、対する本機は「有機EL?」と疑問を持ってしまうほどおとなしい色調だが、こうした「大人」さこそ、アップル製品が支持される理由だと感じた。
解像感も優秀。前髪に注目すると、シュートのような人工物が見当たらず、柔らかな風合いとして感じることができる。
ほか、HDR映像はNetflix「スタートレック・ディスカバリー」などで確認したが、ピークの力強さは明らかで、メリハリのある映像美が楽しめた。明部や明滅時にバンティングも知覚できず、測定に現れない部分の完成度も非常に高い。
■総合評価/判定
有機ELパネルの採用で輝度性能の低下が心配だったが、iPhone 7の液晶を大きく上回る結果が出て安心した。黒輝度は消灯により「ゼロ」を実現しているが、暗部階調を潰してコントラスト感を高めるような画作りは施されておらず、階調表現も適正で好感が持てる。奇をてらわず、有機ELパネルの良さを引き出す高画質はさすがで、アップルの画質に対する真摯な姿勢を称賛したい。
余談だが、よりHDTV基準に近づけるべく、色温度の低下にも繋がる「Night Shiftモード」を試してみた。「Night Shiftモード」をONにすると、スライドバーが最も左端の「冷たく」で、画面の色温度は約6,400Kだった。
オフ時が基準に対し青味を帯びるのに対し、オン(冷たい)時は、基準に対し赤方向へシフトしてしまうのは残念だが、この状態で再度測定すると、MaxΔが2.3、「Ave deltaE」は0.8に改善した。
マニアがリファレンスモニター的に使用したい際は、「Night Shiftモード」をONで、スライドバーは左端の「冷たく」に設定すると良いだろう。
ポケットに入るスマホの画質がここまで真面目で高画質とは、驚くほか無い。テレビメーカーも見習って欲しいと思うほどだ。本機をリファレンスにして、テレビの映像調整を行っても良いだろう。サブスクリプション動画配信がコンテンツを増やす中、高画質なら「スマホで鑑賞」が定番になるかもしれない(画面サイズさえ問わなければ…だが)。
なお、本日1月17日発売の「AVレビュー」の特集記事として、人気スマートフォンを一堂に集め、測定を交えた評価を行っている。スマホ購入に際して、あわせて参考にしてほしい。