Astell&Kern「AK70 MKII」と組み合わせて
ワイヤレスでも音に妥協なし。オーディオテクニカ「ATH-DSR5BT」をaptX HD対応DAPと聴く
さて、ATH-DSR5BTのコーデック選択についても紹介しておこう。ネックバンド左側に配置されている3つのボタンのどれか1つを押しながら、右側の電源スイッチをオンにすると接続コーデックが選べる。「+と電源=aptX HD」「再生/一時停止と電源=aptX」「-と電源=SBC」という具合だ。使っているコーデックを確認するためには、ネックバンド右側に配置されている3つのLEDランプのうち、点灯しているLEDの位置と発光色を見比べる。
最初はaptX HDでAK70 MKIIを接続。左側ボタンの「+」を押しながら電源を投入すると、3つのLEDすべてが白くなった後、右側LEDランプのヘッドバンド側首の1つが紫色に点滅する。川本真琴のアルバム『ふとしたことです』収録の「1/2」を聴くと、口元の表情が微妙にうつろう様が鮮明にイメージできる。
ボーカルの音像がとても立体的、繊細なニュアンスの表現力に富んでいる。ピアノやエレキギターのメロディは芯が強く輪郭線も明瞭。温かな余韻に包まれる。低音は外観から想像も付かないほどインパクトの力強さにあふれている。ウッドベースの弦が柔らかくしなる様子が生々しく目に浮かぶ。
■aptXでも歪みが少なく引き締まった低音
続いてコーデックをaptXに切り替えてみる。再生/一時停止ボタンを押しながら電源をオンにすると、3つのLEDランプのうち最も首もと側が青くなった後、白色に点滅する。プレーヤーのペアリング画面を再度ひらく必要はないので、手軽に聴き比べも楽しめる。
aptX接続時にはボーカルや楽器の歯切れの良さが前面に表れてきた。引き締まった低音の躍動感もダイレクトに届いてくる。奥行き方向の音場は遠くまで見通せる。良好なS/Nと歪みの少なさは有線接続のハイレゾイヤホンで音楽を聴いているのかと錯覚してしまったほど。いままでのBluetoothイヤホンの限界を越えるパフォーマンスだ。
最後にSBC接続の音も聴いてみると、やはりボーカルは声が少しざらっとした粗っぽい印象に変わり、バンドの楽器との距離感がややあいまいになった。弦楽器の音色もやはりaptX以上の接続環境の方が潤いに違いが表れるようだ。
ATH-DSR5BTはAAC接続にも対応しているので、iPhone Xを使ってAAC/SBC接続による音の違いも比べてみた。「+」ボタンを押しながら電源を起動するとAACコーデックが選択され、LEDは真ん中のランプが白色に点灯する。音の密度感と余韻の粘っこさはAACで再生する音に軍配が上がる。軽快でふっくらとした打楽器のリズム、張りのある低音などiPhoneで聴くならAAC接続によるメリットを味わいたい。
今年のCESに出展したオーディオテクニカのブースで初めて出会った「ATH-DSR5BT」の音を、今回はパワフルなAK70 MKIIでゆっくりと聴ける機会が得られてとても満足だった。時間をかけて鳴らし込むほどにより真価を発揮してくれそうなイヤホンだ。また、今回はAK70 MKIIと組み合わせて検証を行ったが、ATH-DSR5BTは音にこだわるハイレゾ対応DAPユーザーも満足させるであろうワイヤレスの音質を備えている。
すでにワイヤードのヘッドホンやイヤホンをたくさんコレクションしているという方もぜひ、革新的な“フルデジタルサウンド”によるワイヤレスリスニングを体験してみてほしい。